Spatial Analysis of Vegetation

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T 研究の目的
U 衛星データの適用
V 空間分析の実施
W 空間分析方法の開発
X 植生分布の空間的な連続箇所の抽出方法の開発


〜 研究の目的 〜

一般的にダム・道路の建設など規模の大きな建設事業において、大気や水質、
騒音や振動といった項目ごとに環境影響評価が実施され、さまざまな面からの
結果を基に環境の保全が図られるよう配慮されています

環境影響評価は事業
単位で実施される傾向にあり、対象を絞り込んだ詳細な調査は
行いやすい
ものの、広域での調査・分析には、かかる労力費用の問題が生じます

さらに、
環境影響評価では、開発への規模の大きさによらず、環境へのインパクトの
大きさに注視する面もあるように、広い範囲での調査対象の位置づけを明確に
することが大切ですが・・・・・
現実的には適した分析方法が少ないのが現状です


広域的な調査・分析が必要な対象として植生分布があります
植生は、生態系を
維持する自然環境の一部をなす役割に加えて、
環境保全、防災、景観などの面
で重要な機能を有しており、
建設事業を実施する上で様々な視点からの現状
分析が必要となってきています

そこで、我々の研究室では、広域データとして地球観測衛星データ(以降、衛星データ)
を採用するとともに、植生分布の連続性を空間的に分析する方法を提案しています





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〜 衛星データの適用 〜

衛星データの特徴
同じ地表面をある一定の周期で繰り返し観測できる「周期性」
一度に広い範囲が観測可能である「広域性」「同時性」などが挙げられます
このようなことから、衛星データは植生分布の広域分析に適したものとなります



NDVIの作成
広域的に植生分布を把握する手法として、衛星データから算出できる
NDVIを採用しています
NDVIとは植生の緑葉が青・赤領域の光を吸収し、
近赤外線の光を強く反射するという特性を利用して算出されるものであり、
広域データでは、値が高いほど植生が多く、低いほど植生は少ないと解釈されます




研究で使用した対象エリアとNDVIの抽出結果の例

ここでは、左側に対象領域である大阪府全域を示し、
右側に算出したNDVIの結果を示します
大阪府全域(Landsat ETM+) NDVIの算出結果


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〜 空間分析の実施 〜

ここからは、算出したNDVIを用いて、空間的自己相関分析を行いました

空間的自己相関分析とは、距離パラメータ
dを変動させながら周囲との自己相関を測定するものです
例えば、NDVIの高い値が集積していれば
「正の相関あり」
低い値が集積していれば
「負の相関あり」と判定されます
つまり、「正の相関あり」と判定された領域は、植生被覆量の多い箇所が集積していると解釈でき、
「負の相関あり」と判定された領域は植生被覆量の少ない箇所が集積していると解釈できます

以下、分析の適用結果です
距離パラメータdの範囲が増加すると、正・負の相関ありと判定される領域が
拡がっていく傾向がみられます


空間的自己相関分析の結果


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〜 空間分析方法の開発 〜

先ほどの距離パラメータ
dの特徴に着目し、本研究ではSSC(Spatial Scale of Clumping)というものを提案しました

以下は、「正の相関あり」と「負の相関あり」の領域を対象としたSSCの作成と解釈および作成概念図です



正のSSC
距離パラメータdが最大値で「正の相関あり」と判定された領域を
最下層とし、最小値での「正の相関あり」の領域を最上層として、
抽出結果を重ね合わせます

結果として、右図のようなコンター図のような正のSSCが出力されます

解釈についてですが、
右図の最上層であるA領域は、そこを中心として近傍から遠方にかけて
植生被覆量の多い箇所が集積していると解釈できます

一方、最下層のD領域は、近傍では植生被覆量のばらつきがあるものの、
距離パラメータd広い範囲である遠方までを見たときに、
植生被覆量の多い箇所が
集積していると判定される領域として解釈されます



SSCの作成概念

負のSSC
「負の相関あり」と判定された領域についても同様のSSCが作成できます

ただし、この場合のA領域は、どの空間スケールで見ても植生被覆量の
少ない箇所が集積していると解釈できます

D領域については、近傍で植生被覆量の多く存在する箇所が
混在しているが、遠方までをみると植生被覆量の少ない箇所が
集積している領域となります





こちらが大阪府全域における正のSSSCおよび負のSSCの抽出結果です

正のSSCでは、郊外部のような現存する植生の連続性の高い領域が抽出されたことになります

一方で、

負のSSCでは、市街地部のような植生分布の連続性が少ない領域が抽出されました



正のSSC 負ののSSC



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〜 植生分布の空間的な連続箇所の抽出方法の開発 〜

ここからは、抽出した正・負のSSCにおいて、
植生連続箇所の抽出方法を開発してきました

開発方法としては、SSCを地形データと仮定した上で、
地形解析の一つである水文解析というものを用いて、
植生の空間的な連続箇所を抽出しました

以下、抽出した正および負の植生連続箇所の結果です


正の植生連続箇所では、山岳部の植生の多い箇所から郊外部にかけて、
植生の多い箇所が連続するような領域を抽出できました

負の植生連続箇所においては、周辺に植生の多い箇所が存在する領域を
抽出しながら、植生の少ない領域に向かうような箇所を抽出できました

正の植生連続箇所 負の植生連続箇所










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