摂南大学 機械工学科 沖本研究室

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更新日 2010-07-08 | 作成日 2008-05-17

沖本邦郎 教授

okimoto@mec.setsunan.ac.jp

機械工学科1年生の「機械製作a」,「機械製作b」,3年生の「塑性工学」,「切削工学」,「生産工学」,大学院の「加工プロセス特論」などの材料加工関連の講義を担当しています.
 専門分野は粉末成形(粉末冶金)や塑性加工などです.加工プロセスの適正化による材料特性の向上を目的として,材料と加工の融合化を図ることを目指しています.対象とする材料は金属系だけでなく,磁性材料などの非金属系(セラミック)材料も取り扱っています.

 研究テーマは次の通りです.

〔1〕磁性体の最適成形プロセスの研究
〔2〕組み合わせ焼結接合による機能性複合材の創製
〔3〕鉄系焼結体の切削加工性と成形加工性に及ぼす樹脂含浸の効果.

〔1〕磁性体の最適成形プロセスの研究

1.はじめに
永久磁石の製造方法には溶解鋳造法と粉末成形法がありますが,現在は後者のプロセスが主流となっています.粉末成形法による永久磁石は,成形後に焼結した“焼結磁石”と,樹脂やゴムなどと混練成形した焼結工程の入らない“ボンド磁石”に分類できます.どちらのタイプにおいても,高性能磁石を製造するためには,磁気異方性を有する磁性粉末の特性を向上させることが必要です.
 その一方で,同一の磁性粉末でも成形時における磁性粉末の並び方,すなわち配向状態により磁気特性が変化します.ここで,配向させるための手法としては,強力な磁界を作用させた状態の下で行う“磁界配向成形”と,塑性加工における圧延や押出しなどのプロセスを用いる“機械的配向成形”があります.配向度は,通常,“機械的配向”よりも“磁界配向”がすぐれているので,高性能配向磁性体を作製するためには,“磁界配向成形”が対象となります.
 そこで私の研究室では,「磁界配向の最適成形プロセス」に関する以下のいくつかの研究を行っています.

2.研究内容
(1)新しい配向成形プロセスの提案
現在の磁界配向成形プロセスは,磁界配向プレス機を用いて成形と配向を同時に行う方式であります.この方式は,一見,生産性がよさそうですが,プレス加工時間が予想外にかかります.また磁界発生装置をプレス・フレームに組み込むために,金型構成との関連上,プレス機構と磁界発生装置が複雑で,その割には高磁界が得られません.更に,プレス機械と磁界発生装置が高価であるという欠点があります.そこで,これらの問題点を解消するための新しい高性能配向成形プロセスが要請されています.
 本研究は,上記の問題点を解消することを目的として,成形と磁界配向を別工程で行う新プロセスを提案し,その可能性を検証することであります.磁性粉末の成形後に磁界配向を行うためには,成形体の外層部は別として,少なくとも成形体内部が流動性を有することが必要です.この場合,成形体の形状凍結性(保持性)と配向性は矛盾する関係にあり,これを両立させることが必要となります.そのためには,あたかも“生卵”の状態をつくり出すことが必要です.すなわち,“生卵”の状態であれば殻が固く形状を保持してますが,その内部を構成する白身と黄身がゾル状で流動性があるので,配向が可能であると思われます.その具体例として,UV(紫外線)硬化樹脂や寒天バインダ, MIMバインダなどを用いる方法について検討中です.
(2)ボンド磁石の磁気特性に及ぼす成形条件の影響
 ボンド磁石は圧縮,押出し,射出成形法などで成形され,形状の自由度,低コストおよび高信頼性から大量生産され,様々な分野で使用されています.しかし,焼結磁石に比べて磁気特性が低く,特に保磁力は成形前の磁性粉末に比べてかなり低くなっています.そこで,保持力が低下する成形加工的原因を究明するための研究を行っています.
 各種の成形法でボンド磁石を作製し,得られた磁石の保磁力と成形圧力の関係を調べたところ,成形圧力が増大するにつれて保磁力が低下する傾向にありました.最も低下が大きかったのは冷間金型成形法によるもので,次いで熱間金型成形法,冷間静水圧成形法(CIP)の順でありました.この原因は,保磁力に及ぼす静水圧応力の影響が少なく,成形時の応力状態が静水圧に近いプロセスほど保磁力の低減作用が緩和されたためではないかと推察しています.この結果をうまく利用して成形すれば,高性能ボンド磁石がつくれるものと期待されます.
(3)磁界配向による磁性体の焼結寸法異方性と組み合わせ焼結接合への応用
 複雑な配向と入り組んだ形状を持ったフェライト磁性体を作製するための手段として,予備成形した配向成形体を組み合わせて焼結する方法を検討しています.この場合,配向磁性体を焼結すると,配向磁界方向の寸法収縮率が大きくなり,他の2軸方向の収縮率が小さくなる性質がありますので,この現象を活用すれば“焼結ばめ”による接合強度の向上が図れるものと考えています.

〔2〕組み合わせ焼結接合による機能性複合材の創製

Fe- Ni系パーマロイは高透磁率,低保磁力,低損失の特徴を有する軟磁性材料で,磁気シールド材,変圧器鉄芯用積層板,時計用ステッピングモーターのステーター材などに用いられています.その一般的な製法としては,高純度の原料を用いて真空溶解した後に精密薄板圧延によりシート材を作製し,これを打ち抜き加工などによって成形する方法が採用されています.またパーマロイの複合化の応用例として,パーマロイ薄板とSUS304ステンレス鋼薄板から成るクラッド材が,テープの記録ヘッド用電磁シールド材として製造されています.この場合,パーマロイは高透磁率の電磁シールドとして,SUS304は機械的強度を保つために用いられています.
 上記のような溶製法によるステンレス鋼/パーマロイ複合材の作製とは別に,粉末成形法による方法が考えられます.しかし,粉末成形法によるこの複合材の製作に関しては報告例が見当たらないようであります.そこで当研究室では,ステンレス鋼とパーマロイの焼結温度が1300℃近傍で似かよっていることを利用して,これらの材料に“粉末成形の組み合わせ焼結接合プロセスを適用”し,耐食性と磁性を兼ね備えた複合材の製作を試みています.

〔3〕鉄系焼結体の切削加工性と成形加工性に及ぼす樹脂含浸の効果

粉末成形によって作製された成形体(圧粉体・焼結体)の内部には気孔が存在します.気孔の存在は,例えば含油軸受などのように有効に活用される場合もありますが,その反面,焼結体の機械的性質や切削加工性を低下させると言う弊害があります.そのため,焼結体の切削加工性を向上させる手段として,例えば成形前の粉末にリン,硫黄,マンガン,ボロン,MnS,MnXなどを添加する方法があります.またMgSiO3を0.5%程度配合することで切屑が破砕しやすい性質に変化し,チップブレーカを用いた場合と同様の効果が得られることも分かっています.最近では“焼結体の気孔部に樹脂を浸入させる含浸法”や,金属融液を浸入させる溶浸法などが注目されています.
 “含浸”によって切削加工性が向上する原因としては,「気孔部に樹脂がしみ込んだため,今まで断続切削であったものが連続切削の状態に変化するためである」,「含浸によって焼結体が脆くなり,切りくず生成が脆性化するためである」,「工具と材料間の摩擦係数が低下するためである」,「樹脂の温度上昇による」などがあげられています.しかし,これらの要因の内でどれが支配的であるのか,未だ十分に解明されていない状況です.
 そこで本研究では,樹脂含浸によって焼結体の切削加工性が向上する原因を究明することを目的として,ドリル加工実験を行うと同時に,端面拘束圧縮試験や,リング圧縮試験などの成形加工性試験を行っています.