あなたは何型タイプの性格ですか? 学問に咲く毒の花 しばがきてつお 国際言語文化学部 教授 芝垣哲夫 人の性格は何らかのタイプに類別できる、と多 くの学者は言う。私についてそれを言えば、小学 校の頃『霧隠才蔵』を読んだ後、忍者に夢中にな り、釘で作った十字手裏剣をポケットに忍び込ま せ、忍者を真似、斜めを向いて走っていた。私の ように、人の影響を簡単に受ける性格を、社会学 者のマックス・ウェーバーは南欧型タイプだと言 う。 南欧型の人間は社交的で、明るく、情熱的で、 カラオケに行くと熱唱するタイプである。法律や 道徳は苦手で発想中心である。宗教は幅が広く、 カトリックのようにどんな人でも入信でき、罪を 侵しても「ごめんなさい」と儀悔すれば許される。 クリントンは南欧型だろう。南欧型人間は目を外 に向け海外への雄飛を狙っている。マルコポーロ やコロンブスは南欧型の代表格だ。南欧型を逆に とらえると、いい加減で、でたらめで、緻密さが なく、人生をとことん楽しむぐうたら人間である。 血液型はB型が多いと思われる。 それに反して北欧型の人間は、物静かで、思索 的で、計画的で緻密である。森に住む人間で、色 ならダークブラウンである。カラオケで熱唱し旋 律に酔いしれるより、デュエットやコーラスでハ ーモニーを楽しみ、統一と調和に基づいた美の完 成を目指す。それだけではまだ足りないのか、さ らに、指揮者まで引っ張ってくるという徹底ぶり である。スイス時計や、オーケストラは北欧型人 間の産物である。宗教は戒律の厳しいプロテスタ ントを好み、潔癖で自己主張が強い。北欧型を逆 に言えば、陰気で、慎重で、我が強い。ウェーバ ー自身は典型的な北欧型だったようで、人生を深 刻に考えすぎて病気になってしまった。A型の人 にこのタイプが多い。 旧約聖書の話だが「サムソンとデリラ」のサム ソンは、いまで言うシュワルツネッガーのような 怪力マッチョマンであった。彼は海の町のほんぽ うな女が好きで、何度も海の町へ出かけて行く。 海の町には敵が居て、その度に捕まるのだが持ち 前の怪力で逃げ帰ってくる。だが、とうとう最後 に、敵のスパイで、悩ましいほどに美しい海の女、 デリラにひっかかり「どうしたらあなたの怪力は なくなるの、ウッフン〜」と聞かれ、「ぽくの髪 の毛を切ると力がなくなるんだ」と、ポロリ秘密 を洩らしてしまった。そして、眠っている間に髪 を切られ捕まってしまったのだ。サムソンに言わ せれば、たとえ騙されても南欧型の女はたまらな いそうだ。それとは反対に北欧型の女は、どちら かと言えば、ピカピカのシステムキッチンでソー セージを温めただけの夕食を出し、その後は家計 簿の記帳やセーター編みに精を出すというタイプ である。 もちろん、人間とは複雑で、人の性格をどちら か一方に決めつけてしまうことなどできない。そ れでも、人間を類型化したいと望む学者は後を断 たない。ニーチェは体育会系のディオニソスと文 化系のアポロニウスに、ユングは外向型と内向型 に分類した。フンボルトは「国民には性格がある」 と言い、ヘルダーは、言語には影響力があると 「言語精神」を主張した。人間の類型化には、例 外が多く学問としての論証が難しい。だが、それ でも、それは学問に咲く「毒の花」のように魅力 的で捨て去ることが出来ないのだ。 類型化の例外を一つあげてみよう。生粋の北欧 型であるはずの英国王室の子供達だが、なぜか、 皆、南欧型に育ってしまった。人間って面白い! 芝垣哲夫教授の著書 「芝垣教授のどきどきうきうき文化論」旺史社(304S) 「対立する文化」シャローム書房(361.5S) 「言語と文化の構造」創元社(804S) 「日本文化のエトス」創元社(361.5S) 「英語とその社会的背景」(共著)旺史社(830.20) 「文化の表層と深層」(共著)創元社(361.5B) 訳書サルマン・ルシュデイ「続・悪魔の詩」泉屋書店(933R)その他多数 |