炭疽病菌感染 ステロールの分配が関与 ウリ科植物で解明 防除薬剤の開発にも期待
DATE:2022.10.21広報室
NEWS RELEASE【No.18】
摂南大学(学長:荻田喜代一)農業生産学科の久保康之教授と小玉紗代助教らの研究グループは、ウリ科植物に感染し壊死病斑を引き起こす炭疽病菌について、菌細胞内にあるステロールを輸送・分配する機構が、植物に感染するために重要な役割を持つことを明らかにしました。ステロール輸送機構は他の病原菌にも広く保存されていると考えられ、ステロール輸送機構をターゲットとした新たな防除薬剤開発への貢献が期待されます。
【本件のポイント】
●植物病原菌が細胞内のステロールを輸送・分配するしくみを発見した
●菌体内のステロールを適切に分配することで植物へ侵入するための
菌糸を形成することを解明
●ステロール輸送機構を標的とした新規防除薬剤の開発につながることが期待される
植物病原性のカビの仲間である炭疽病菌は宿主植物に侵入する際、付着器と呼ばれる特殊な細胞を植物表面に形成し(図1)、細胞壁に針のような菌糸(貫穿糸)を突き刺すことで植物の内部へ侵入しようとします。今回、貫穿(かんせん)糸(し)の形成には、菌の細胞内でNiemann-Pick type C(NPC)タンパク質を介した適切なステロールの輸送・分配が行われる必要があることを明らかにしました(図2)。蛍光顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いた詳細な付着器の観察により、菌の細胞膜にステロールが適切に分配されることで、貫穿糸の突出に必要なタンパク質の集積が行われることを見出しました。NPCタンパク質を介したステロール輸送の仕組みは他の菌類や哺乳類にも広く存在することが以前から報告されていましたが、植物病原菌の感染時にどのような役割があるのかはこれまで明らかにされていませんでした。今回の成果を基盤として、ステロール輸送機構をターゲットとした新たな防除薬剤の開発につながる可能性が期待されます。
本成果は2022年9月26日にオープンアクセス国際学術誌mBioに掲載されました。
URL:https://journals.asm.org/doi/10.1128/mbio.02236-22
*本研究は日本学術振興会科学研究費(15H05780, 20H02989・久保、20K15529・小玉)の支援を受けて行われました。
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