酵素が鏡像異性体を作り分ける仕組みを解明 -- ディールス・アルダー反応を触媒する酵素の合理的デザインに向けて
DATE:2021.08.19広報室
NEWS RELEASE【No.10】
摂南大学(学長:荻田喜代一)農学部応用生物科学科の加藤直樹准教授と鳥取大学大学院工学研究科の永野真吾教授ら、理化学研究所の高橋俊二ユニットリーダーら、杉田有治チームリーダーら、東京大学大学院薬学研究科の滝田良准教授らの共同研究チームはディールス・アルダー反応を触媒する2つの酵素が、天然物を合成する過程で鏡像異性体を作り分ける仕組みを解明しました。
【本件のポイント】
● ディールス・アルダー反応は、有機合成化学の分野における炭素
-炭素結合形成を担う最も重要かつ実用性の高い反応。
近年、本反応により天然物の環状骨格を作る酵素が次々と
見つかっており、注目を集めている
● 実験と理論計算を効果的に組み合わせたことで、ディールス・アルダー
反応を触媒する酵素の形とその働きの関係性の理解を飛躍的に
深めることができた
● 複雑な化学構造の物質を作る人工酵素の設計や医薬品のシーズの
創出につながると大いに期待される
医薬品の種となる生物活性物質が微生物や植物の体内でどのように合成されるのかという研究がこの20年間で飛躍的に進展していますが、まだ私たちは、複雑な化学構造の物質を自由にデザインして生物や酵素を使って作らせることは出来ていません。その実現には、酵素の形を決めて、その酵素と結合した物質にどんなことが起きるのかということを、一つ一つ解き明かす必要があります。そのためには生化学や構造生物学、有機化学、理論化学、計算科学といった複数の研究分野にまたがった異分野連携研究が必要です。今回、私たちは実験と計算のどちらも出来る強力な共同研究チームを結成し、合成化学分野における最重要反応の1つであるディールス・アルダー反応を触媒する酵素がどのように立体選択的な反応を制御しているのか、という仕組みを解き明かしました。
本研究成果はドイツ化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」に、近年急速に発展し高い関心が持たれている分野での重要な論文として位置づけられる「Hot Paper」として選出され、2021年6月13日に掲載されました。
URL: https://doi.org/10.1002/anie.202106186
*研究の詳細についてはこちらをご覧ください。
https://www.tottori-u.ac.jp/item/18745.htm
■内容に関するお問い合わせ先
摂南大学 農学部応用生物科学科 准教授 加藤 直樹
TEL: 072-896-5463(不在の場合は広報室へ)
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学校法人常翔学園 広報室(担当:坂上、上田)
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