光合成反応における光損傷と修復のメカニズム解明 ~傷ついたタンパク質を見つけて分解するしくみを明らかに~
DATE:2023.11.22広報室
NEWS RELEASE【No.25】
◆発表のポイント
・光は、光合成に必要なエネルギー源ですが、同時にタンパク質でできた光合成を担う装置(光化学系II[1])を傷つけてしまいます。
・光化学系IIには電気系統のヒューズのように傷つきやすい部品タンパク質があり、傷つくと速やかに交換されます。しかし、その部品タンパク質が傷ついていることをどのように見分けるかは謎のままでした。
・今回、部品タンパク質内の特定のアミノ酸が酸化されることがその目印になることを日本、中国、フランス、ドイツの国際共同研究により解明しました。この成果は、光合成の効率を高めるなどの応用への貢献が期待されます。
岡山大学資源植物科学研究所・光環境適応研究グループの坂本亘教授、摂南大学農学部応用生物科学科の加藤裕介講師、東京大学先端科学技術研究センター/同大学大学院工学系研究科の石北央教授、斉藤圭亮准教授らのグループは、中国科学院、フランス国立科学研究センター、ミュンスター大学などのグループと共同で、光合成の明反応を担う分子サイズの装置「光化学系II」の機能維持に重要である光化学系II修復が、どのように引き起こされるかの分子メカニズムを明らかにしました。
光合成には光が必要ですが、光は同時に活性酸素を生じ、光合成装置を傷つけてしまうことが知られています。光合成装置の光化学系IIはさまざまなタンパク質からなる複合体ですが、その部品であるタンパク質がダメージを受けてしまうのです。植物などの光合成生物は傷ついた部品タンパク質を取り替えるという仕組みを創り上げてきました(光合成装置の修復)[2]。しかし、細胞の中でどのように傷ついた部品タンパク質と無傷の部品タンパク質を見分けているかは謎のままでした。今回の研究では、光合成装置の中でヒューズのような役割をする部品タンパク質に生じるアミノ酸の酸化[3]がきっかけとなり、傷ついたタンパク質が取り除かれ、修復されることが明らかとなりました。
効率的に傷ついた光合成装置を修復する仕組みをより詳しく理解することは、光合成効率の向上につながると考えられます。
この研究成果は11 月21 日8時(グリニッジ標準時)に、国際科学誌「eLife」に掲載されました。
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岡山大学資源植物科学研究所 光環境適応研究グループ
教授 坂本 亘
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