【農学部】マウスは進化の過程で遺伝子治療薬として働く RNAを獲得していたことを解明
DATE:2023.12.14広報室
mRNAの情報はゲノムDNAに分断されて書き込まれており、それらがつなぎ合わされることで正常なmRNAが完成する。4.5SH RNAは、mRNAに取り込まれると不具合を起こす異常な配列(紫色)を認識し、mRNAへの取り込みを防ぐことで無毒化する。この仕組みを応用すると、遺伝病の原因となる変異(橙色)のmRNAへの取り込みを防ぐ遺伝子治療薬の作製が可能となる。
NEWS RELEASE【No.32】
マウスは進化の過程で遺伝子治療薬として働くRNAを獲得していたことを解明
~ヒトの遺伝病を治療できる人工RNAの開発に期待~
◆ポイント
・マウスは自身のRNAを遺伝子治療薬のように使い多数の遺伝子変異を無毒化していること
を発見。
・このRNAは遺伝子変異となる部分をmRNAに取り込まれないようにすることで無毒化を実
現。
・この仕組みを利用してヒトの遺伝病の異常エクソンを長期に渡って無毒化することが可
能。
北海道大学大学院薬学研究院の中川真一教授と摂南大学の芳本 玲講師らの研究グループは、発見以来40年以上、機能が不明だったマウスのRNA(4.5SH RNA)の、新たな役割を発見しました。
マウスのゲノムDNAには正常なmRNA*1を作る上で不具合となり得る配列が多数存在しています。それらがmRNAに取り込まれると致死性の遺伝病の原因となりますが、4.5SH RNAにはそれらを一括して無毒化する、解毒剤のような働きがありました。つまり、マウスは進化の過程で、いわば天然の遺伝子治療薬を獲得していたことになります。更に、4.5SH RNAは二つのモジュールから構成されていることも分かりました。一つは異常な配列を見つけるためのセンサーの役割を、もう一つは異常な配列がmRNAに取り込まれないようにするためのツールを連れてくる役割を果たしています。この発見は、このセンサー部分を変更することにより、特定の遺伝子変異のみを認識する新しい遺伝子治療薬を開発できる可能性を示唆しています。これが実現すれば、遺伝病を引き起こす変異を長期的に無毒化する新しい遺伝子治療の道が開かれるかもしれません。
なお、本研究成果は、日本時間2023年12月14日(木)午前1時公開のMolecular Cell誌に掲載されました。
◆論文情報
論文名
4.5SH RNA counteracts deleterious exonization of SINE B1 in mice(4.5SH RNA はマウスにおいてSINE B1 の有害なエクソン化と拮抗している)
著者名
芳本 玲1、中山雄太2、野村郁子2、山本育子2、中川夢花1、田中茂幸1、栗原美寿々2、鈴木 雄3、小林武彦3、小塚-秦 裕子4、尾山大明4、水戸麻理5、岩崎信太郎5,6、山崎智弘7、廣瀬哲郎7,8、荒木喜美9, 10、中川真一2(1摂南大学農学部応用生物科学科、2北海道大学大学院薬学研究院、3東京大学定量生命科学研究所、4東京大学医科学研究所、5理化学研究所開拓研究本部、6東京大学大学院新領域創成科学研究科、7大阪大学生命機能研究科、8大阪大学先導的学際研究機構、9熊本大学生命科学研究部附属健康長寿代謝制御研究センター、10熊本大学生命資源研究・支援センター)
雑誌名
Molecular Cell(分子生物学の専門誌)
DOI
10.1016/j.molcel.2023.11.019
公表日
日本時間2023年12月14日(木)午前1時(米国東部時間2023年12月13日(水)午前11時)(オンライン公開)
【配信元】
北海道大学社会共創部広報課(〒060-0808 札幌市北区北8条西5丁目)
TEL 011-706-2610 FAX 011-706-2092
メール jp-press@general.hokudai.ac.jp
摂南大学 学校法人常翔学園広報室(〒535-8585 大阪市旭区大宮5-16-1)
TEL 06-6954-4026 メール Koho@josho.ac.jp
熊本大学総務部総務課広報戦略室(〒860-8555 熊本市中央区黒髪2丁目39番1号)
TEL 096-342-3269 FAX 096-342-3110
メール sos-koho@jimu.kumamoto-u.ac.jp
東京大学医科学研究所プロジェクトコーディネーター室(広報)
(〒108-8639 港区白金台4-6-1)
TEL 090-9832-9760 FAX 03-5449-5496
メール koho@ims.u-tokyo.ac.jp
理化学研究所広報室報道担当(〒351-0198 埼玉県和光市広沢2-1)
TEL 050-3495-0247 メール ex-press@ml.riken.jp