【農学部】“⾒た⽬はそっくり、中⾝は違う”(C-グリコシド型)擬複合糖質を開発
DATE:2024.01.12広報室
NEWS RELEASE【No.37】
“見た目はそっくり、中身は違う”(C-グリコシド型)擬複合糖質を開発
–分岐合成法の確立と生物活性が大きく異なる多様なアナログ群の創出–
ポイント
① 天然に存在する糖鎖・複合糖質の構造を模倣するC-グリコシドアナログは、糖加水分解酵素に分解されない有用な生物機能分子として期待されていますが、その生物化学的研究は遅れていました。
② 今回、C-グリコシド炭素上(糖連結部位)に水素またはフッ素原子を持つ3種のアナログ分子を触媒的・立体選択的に分岐合成する手法を確立し、その独特の生物活性を見出しました。
③ 今後、この合成手法に代表される「連結部位編集戦略(Linkage-Editing Strategy)」により、糖鎖・複合糖質を活用したユニークな生物活性分子(免疫機能を制御できる創薬シーズなど)の創出が期待されます。
概要
天然型糖鎖・複合糖質の構造をわずかに改変したアナログ分子(擬糖鎖・擬複合糖質)の開発は、創薬研究において極めて重要ですが、合成の煩雑さなどの理由から、限られた検討にとどまっていました。
九州大学大学院薬学研究院の平井剛教授を中心とする研究グループ(摂南大学農学部 加藤直樹准教授、医薬基盤・健康・栄養研究所 國澤純センター長ら、大阪大学微生物病研究所 山﨑晶教授ら、理化学研究所環境資源科学研究センター 越野広雪ユニットリーダー 高橋俊二ユニットリーダー、九州大学先導物質化学研究所 友岡克彦教授ら)は、糖加水分解酵素により分解されないC-グリコシド型複合糖質の新規多様化戦略を考案し、光エネルギーと触媒反応を駆使して効率的な分岐合成法を開発しました。本手法では3種の連結部位(CH2, (R)-CHF, (S)-CHF型)を持つC-グリコシドアナログの分岐合成が可能になり、実際に擬イソマルトースおよび擬α-ガラクトシルセラミドの合成に成功しました。さらに合成したCH2-イソマルトースは天然型と比較して極めて高いアミラーゼ誘導活性を示し、(R)-CHF-α-ガラクトシルセラミドは天然型とは真逆のインバリアントナチュラルキラーT (iNKT)細胞のアンタゴニスト様活性を示すことを明らかにしました。
本研究成果は、アメリカ化学会が出版する国際誌「Journal of American Chemical Society」のオンライン版にて2024年1月9日(現地時間)に掲載されました。
【論文情報】
掲載誌:Journal of American Chemical Society
タイトル:Linkage-Editing pseudo-Glycans: A Reductive α-Fluorovinyl-C-Glycosylation Strategy to Create Glycan Analogs with Altered Biological Activities
著者名:Takahiro Moriyama, Makoto Yoritate, Naoki Kato, Azusa Saika, Wakana Kusuhara, Shunsuke Ono, Takahiro Nagatake, Hiroyuki Koshino, Noriaki Kiya, Natsuho Moritsuka, Riko Tanabe, Yu Hidaka, Kazuteru Usui, Suzuka Chiba, Noyuri Kudo, Rintaro Nakahashi, Kazunobu Igawa, Hiroaki Matoba, Katsuhiko Tomooka, Eri Ishikawa, Shunji Takahashi, Jun Kunisawa, Sho Yamasaki, and Go Hirai
DOI:10.1021/jacs.3c12581
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