研究内容
- バイオ燃料電池
- DNAやキチン、コラーゲンなどの生体高分子は構造内に水架橋(ウォーターブリッジ)を形成することが明らかになっている。これまでの研究から、プロトン(H+)輸送能はWater bridge により実現され、この特性を利用することにより、バイオポリマーを燃料電池の電解質に利用することでできることがわかった。本研究室ではこのプロトン輸送機構を明らかにし、さらに高出力可能な燃料電池を創製している。
- ダイレクトアルコール型燃料電池(DAFC)
- 現在、水素型燃料電池の電解質として広く用いられているNafionは高い電力を得ることができる。一方、アルコールを燃料とするダイレクトアルコール型燃料電池ではNafionの比較的高いアルコール透過性のため、得られる電力が低下することが課題となっている。本研究室では、アルコール透過性が極めて低い生体高分子(キチン、コラーゲンなど)を電解質としたDAFCの創製を行い、その特性について調べている。
- 光合成燃料電池
- 植物の葉緑体のチラコイド膜に存在する膜タンパク質複合体「光化学系Ⅱ(PSⅡ)」は高合成の初期反応として水を酸化してプロトンを生成することが知られている。この光合成システムは、シアノバクテリアや多くの高等植物に広く保持されていることから、安価であるとともに資源としての入手も容易である。本研究室では、PSⅡの抽出法を改良し、バイオ燃料電池の新規プロトンソースへの応用を実施している。さらに、住環境デザイン学科の建築インテリアデザイン史研究室と共同で、本燃料電池を建築・インテリアへの応用についても研究している。
- 酵素燃料電池
- 現在、燃料電池の触媒部分には白金が使用されている。燃料電池において白金はプロトン(H+)を生成するために必要不可欠である。しかし、白金は高価であり、枯渇が危惧されているレアメタルである。それゆえ、白金に代わるプロトンソースを作成する研究が進められている。本研究室では、白金に代わるプロトンソースとしてキチナーゼなどの生体由来高分子である酵素に注目している。キチナーゼなどの酵素は触媒反応を起こすときにプロトンを生成するものがあり、この特性を利用した酵素を触媒部分に用いる新たなバイオ燃料電池の開発を目指している。
- バイオトランジスタ
- トランジスタは私たちが使う多くの電子機器に組み込まれている非常に重要な部品である。トランジスタは半導体である Si が使われている。しかしながら、シリコンは製造時に膨大なエネルギーを使用するため、環境負荷などの問題を抱えている。本研究室では、Si
の代替として、生体由来物質であるキチンとキチナーゼを使ったバイオトランジスタの研究をおこなっている。現在、キチン・キチナーゼを材料として使用した場合、キチン・キチナーゼがp-typeの半導体として機能することを明らかにしている。