法学部 教授 森本 益之
最近、テレビなどで法律問題を扱うクイズ的番組がかなりの視聴率を得ているようである。こうした法律問題への関心が増大している背景を考えてみると、市民の権利意識の高まりと相俟って身近な生活レベルで種々のもめごとが多発している一方、家族・親類・近隣等の共同体社会が変容して、それらの紛争をうまく解決してくれる世話役のような人物がいなくなってしまった結果、法によって解決せざるを得なくなったことも－因であるように思われる。いわば世話役の「顔」による決が主流になってきたということであろう。社会のこのような変貌は、好むと好まざるとにかかわらず、さらに拡大していくことが予想される。すなわち、われわれがこれから生きていく21世紀の社会は法への依存度が一層増大した社会（仮に「法志向社会」と呼ぶ）であり、市民一人ひとりが法と接する場面はますます多くなり、たとえ専門家でなくても、相応の法的問諒解訣能力を涵養することが要求されよう。
ところで、上る弁護士達の解答は決してひとつではなく、複数の見解が対立することも少なくない。これは法による解決といっても常にひとつの結論に達するわけではないことを示している。そこで、こうした複数の解答の中から、もっとも妥当な解決に導いてくれる見解が一応「正解」ということになるが、そのような「正解」を生み出すためには、該博な知識と広い視野に立脚した分析力・洞察力、さらには人間関係の磯徹に対する感応力が不可欠となる。しかも、それは法の世界のみならず、どのような分野の問題解決にも要求される能力であろう。そして、この能力を最もよく養成してくれる手段としては多様な分野にわたる読書を挙げなければなるまい。ただし、分析や洞察の根幹をなす思考力や他者との共感力は、幅広い読書の中で知らず知らずのうちに鍛えられ、高められるものだからである。それゆえ妥当な法的解答を得ようとする場合でも、法律条文の形式的な解釈では不十分であって、文学・歴史・政治・経済といった諸分野のさまざまな書物を通じて人間や社会に関する理解を深め、感性を豊かにしておくことが必須条件とならざるを得ない。
学生諸君が、その専攻を問わず、図書舘等を活用して多くの本と出会い、読書と思索に耽る中から、21世紀の社会を生き抜く確かな能力を培われることを希望する所以である。
「光と色の環境デザイン」
社団法人日本建築学会編 オーム社
工学部建築学科 助教授 岩田 三千子
「環境」、「デザイン」といった言葉が私たちの身のまわりに氾濫しています。新聞にもそれらの言葉が見当たらない日はありません。大学の学部や学科の名称にも多く使用されるようになっています。でも、ほんとうは中身がよくわからない・・というか、中身をわかりにくくするためにわざと使われているような気さえします。
今日は中身がよくわからない、この「環境」、「デザイン」という言葉をまとめて使った「光と色の環境デザイン」という本を紹介します。タイトルはこのようなものだから、まずは中身は何だろうといった疑問を持って開いていただくのがよろしいかも。全体を見渡して、全ページがカラー印刷で、建物の工クステリアやインテリア、照明器具などの写真がたくさん載っていて楽しそうなことに気づいてください。でも実はこの本、日本建築学会編集の専門書なのです。建築学では古くから環境工学という、光、音、熱、空気などの人に最も近い空間デザインの基礎を扱う分野があります。いわば「環境」や「デザイン」の草分け的存在で、私が大学で教鞭をとっているのもこの建築環境工学です。
この本は専門書ですが、文章も読みやすく書かれているので楽しく読むことができます。建築学科に関係のない人でも、自分の住まいなどの身の回りの「光と色」空間に興味のある方、快適に生活したい方にはお勧めの－冊です。
「記憶する心臓」
Claire Sylvia著 飛田野裕子訳 角川書店
薬学部 教授 吉岡 正則
人の心はどこに宿るのであろうか。洋の東西を問わず難問である。ヒポクラテスは脳にあるとし、大脳の上にある松果体を最高の司令室とみて魂の座と考えた。時を経て1958年になり、工－ル大学のラーナーが松果体からメラトニンを発見して、後にノーベル賞を受賞した。メラトニンが日内リズムや生殖を支配するホルモンとして働いていることも判明した。しかし、松果体を摘出しても生きられるし、日内リズムも光りにより制御される
ので絶対的な心の場ではないとされ、現代医学は混迷を極めている。その後、工－ル大学医学部付属病院で、女性ダンサーのシルヴィアが最先端の医療である心肺同時移植の手術を受け社会復帰した。ところが手術後の性格が変わった。知らない名前の自分に気付き、ビールを欲しがったり、女性に曳かれたりした。これは男性の若いドナーの性格を受け継いでいる所為であると判明した。心臓に心が宿っているから、移植されたのであろう。
心臓と名付けた古人は知っていたのだ。32年前に同じ医学部に留学した小生の菌縛深い怪談話です。
ブッシュ（父）、クリントン、ブッシュ（息子）と大統領を輩出しているヤンキー魂の里工－ル大学の新学期によせて。
「ネクスト」を読んで
マイケル・ルイス著 熊谷千寿訳 アスペクト出版
経営情報学部経営環境情報学科 教授 中桐 大壽
インターネットの普及により、ネット通販、ネット家電、ネット図書等のネット情報に学生たちの関心は日々高まっている。こうした学生たちの好奇心を満たしてくれる一冊として「ネクスト」をお薦めしたい。本書は、「ネット新人類」たちの活躍ぶりを報告したものである。
ネット上では年齢も身分も隠せる。その結果、「年齢制限」によって参加の機会が奪われていた世界に、いとも簡単に少年たちは足を踏み入れる。
しかし、この挑戦は逆風にさらされ、若過ぎる理由で主人公（レーダー）はSEC（全米証券委員会）に告訴される。容疑は、自らが株を所有する会社を褒めちぎる書き込みを電子掲示板に行い、株価を釣り上げて売り逃げしたというものである。
考えてみれば今日でも、都合の良い情報を流して「株価操作」する作業は行われている。少数のプロによってひそかに着手されているうちは良かったのだが、誰もが、それに手を染めるようになると、市場は大混乱する。そのため、訴訟で「出るくい」を早めに打っておこうとしたのは、あまりにも泥縄的対応であった。他にも、自分の利権を脅かされると知った時に手のひらを返すような場面や、元IT礼賛論者の見苦しい転向ぶりも、リアルに面白く本書は描いている。
このように、「恐るべきネット新人類」たちの登場は、かねてよりうたわれて来たバラ色の未来像からlT革命の進捗状況が隔たり始めていることの象徴である。
そして、lT革命の本質が効率化でも、伝達速度の向上でもなく「機会の平等化」だった事情が改めて理解できると思う。
是非、秋の夜長にこの本を読んでいただきたい。
「骨董ハンター南方見聞録」
島津法樹著 講談社出版
法学部 教授 牛丸 興志夫
著者の島津氏は、「ヤマハ」株式会社勤務から、脱サラして骨董商になった人である。
人類が生まれて、つい最近の農耕社会に突入するまで狩猟採取の社会であった。数十万年の間、男は、すペて、ハンターであった。命がけで、マンモスを殺し、飢えた妻や子に肉を持ち帰ることが仕事であり、喜びであった。
本書は、31の著者の体験談からなる。その1つ「地下に眠る黄金仏」を紹介する。
寺院の盗掘集回の親分であるダムロンは、著者に最近の盗掘の話をした。ダムロンはカンボジアの森で、クメール後期の崩れかけた巨大寺院の地下室を5人の仲間と掘った。宝物庫にたどり着いた。そこには、高さ1メートルほどの黄金仏があった。時価は、評価できないほどの、まさに国宝級のものだ。しかし、「ウーッ。ズズッー」という音がして、一瞬に仲間の3人が恐ろしい落とし穴に落ちた。鼓を立てたような形をした穴で、落ちたら最後、2度と地上には戻れない仕組みになっていた。ダムロンは、仲間やポリスに、横取りされることを用心して、黄金仏を持ち出さなかったらしい。
しばらくして、ダムロンが行方不明になった。忘れかけていたころ、著者は、ダムロンが首からぶら下げていた銅製のお守りを、バンコクの骨董屋で、見つけた。そのお守りの中央部には、ライフル弾の通過痕があった。
来年の夏の休暇に、私は、ハンターとして、カンボジアに行くつもりである。
「ガリヴァー旅行記」
『ガリバー旅行記』中野好夫訳 新潮社、中央公論社
『ガリバー旅行記』平井正穂訳 岩波文庫
国際言語文化学部 教授 赤松 みのリ
海と結びついた空想旅行記の人物のなかでは、ロビンソン・クルーソーをのぞいてガリヴァーほど知名度の高いヒ－ローはいないだろう。アイルランドのダプリン生まれの著者ジョナサン・スウイフト（1667－1745）の時代は、英国の海外発展が目覚しかったということもあり、旅行記や旅行文学が隆盛を見た。この時代はまた、近代小説の勃興の直前であったが、スウィフトはむしろ時代に逆行するような「伝統的な諷刺の形式」でガリヴァーの自をとおして人間社会の批判をしたと言われている。『ガリヴァー旅行記』はメニッポス、ルキアノス、トマス・モア系統の諷刺的架空旅行記であると言うのだ。また、日常的規範を転倒させ、価値を転覆させ、あべこべの世界を描く「カーニヴァル文学」に属していると解釈されることもある。
十八世紀という資本主義経済システム形成の初期におけるこのスウィフトの批判・諷刺を時代錯誤と見る向きもある。－方で、近代的なものの見方の背後に潜む矛盾を突いているともされる『ガリヴァー旅行記』は、もともと『世界の僻地にある国々への旅 レミュ工ル・ガリヴァー著 全四部』という匿名出版であった。話は小人国への旅による当時の英国宮廷政治の批判からスタートする。大人国への旅行では祖国とヨーロッパ文明の非人間性が浮かび上がってくる。三番日の旅ではガリヴァーは学芸、歴史、科学の存在の根源的意義を曲解している人間を自にする（海図にはラピュタ、パルニバーピとともに日本の名も見られる）。
第四部、フウイヌム国でガリヴァーは文明国の人間たちを馬より下等な生き物として断罪する。ちなみにガリヴァーというのは愚者の意である。
そのガリヴァーは、物語が後に児童、青少年向きに平明に要約、編纂されて広まったため世界中の子供たちにとって親しい名前となったのである。
ともあれ、現代の目には『ガリヴァー旅行記』は当時の英国あるいはヨーロッパ文化を多元的に相対化している、まさにクロス・カルチャーの視座に立った面白い読みものと映らないだろうか。
(本学教職員寄贈著書コーナー)
“Scholar’s Shelf”には先生方から寄贈された、先生ご自身の著書が集められています。新たに寄贈された本を紹介します。（2002.7.1～2002.8.30受入分）
<国際言語文化学部>
赤松みのり・山口玲子・ 「精 基礎日本語1000」 上海外語教育出版
「生活日語」カセットテープ付 〃
「日語入門」 〃
田中久美子 「心の色をみつめて」 山口書店
<工学部都市環境システム工学>
澤井健二 「楽しく学ぶ川の学校⑥川の学校」 学研
すでに、図書館ホームページのお知らせで紹介しておりますように、図書館では、国立情報学研究所が提供する、機関データベースの利用申請を、2002年9用に行いました。
このことにより、今まで個人の申請により利用可能であった、「NACSIS－IR」「NACSIS－ELS」が、摂南大学教職員であれば、だれでも、研究室からでも利用できるようになりました。
利用料金は図書館が一括支払いしておりますので、個人で支払って頂く必要はありません。よって支払い手続き等、気にすることなく利用していただけます。
尚、「NACSIS－IR」「NACSIS－ELS」とは次のようなものです。
NACSIS－IR ： 学術研究を行う研究者や参考調査業務を行う図書館職員等を対象に、広範囲の分野の文献情報、学術情報などをオンラインで提供しているものです。
例えば
☆ 研究テーマについての現在までの論文は？
☆ 研究の最新動向は？
☆ 自分と同じ研究をしている研究者は？
☆ 参考となる文献をなるペく早く入手したい。
このような場合に、必要とする情報を探し出すことができます。
NACSIS－ELS ： 学術雑誌のページをそのまま読むことができます。また論文のタイトルや著書などのキーウードから必要なものをさがしだすことができるものです。
☆ 日本の学術協会が発行する学術雑誌から論文を探し、そのページを表示したり印刷したりすることができます。
☆ 論文のページの表示や印刷には、専用のプラグインソフトウェアを組み込む必要があります。
☆ はじめて使うかたは、ＷＷＷブラウザの設定を「すペてのcookieを受け付ける」にしてご利用ください。「タイムアウトしました」等と表示される恐れがあります。
☆ 本データベースの一部は、科学研究補助金（研究成果公開促進費）データベース（学会発表プレ ント電子ファイル及び電子図書館原文書データベース）の交付を受けて作成しています。（
（以上国立情報学研究所ホームページより）
詳しくは、国立情報学研究所ホームページをご覧下さい。
http：//ｗebfront．nii．ac．jp/（NACSIS一IR）
http：//els.nii.ac.jp/nacsis－els－j.php3？top（NACSIS－ELS）
今回は本学図書館でも利用の多い「TOEIC」「TOEFL」の資料を紹介します。
「TOEIC」とは“Test of English for International Communication”の略で、アメリカのETSといぅ機関が開発したビジネス英語中心のコミュニケーション能力認定テストのことです。
現在世界50力国で実施されており、日本のランクは下位に位置するそうです。しかし、日本の一流企業では、「TOEIC」600点以上なければ管理職になれないなどといわれているほど、日本の社会でもパソコンと同様に、できて当たり前になってきています。また、「TOEFL」とは“Testing of English as a Foreign Language”の略で、アメリカ国内で勉強する、外国人のための英語の学力テストのことです。ですから、これからアメリカに留学を考えているひとは、まずは「TOEFL」ということになるのでしょうか。
社会に出てからは勉強することはたくさんあり、なかなか語学学習まで手がまわらなくなるでしょう。そこで、時間のたっぷりある学生時代に気合いを入れて「チャレンジ」してみてはどうでしょうか。
本学に所蔵している資料の一部を、リストアップしてみましたので、参考にしてください。
【TOEIC】
| タイトル | 著者名 | 出版社 | ＩＳＢＮ | 資料ＩＤ | 請求記号 |
| TOEICテスト700点攻略セルフトレーニング：英語を武器にキャリアアップ！ | 安達洋 | PHP研究所 | 4569612830 | 92010050 | 830.7 A |
| 5時間でTOEICテスト650点 | 小池直己 | 宝島社 | 4796619240 | 92020990 | 830.7 K |
| リツク英語道場：右脳で速習するTOEICテスト英単語（必修編） | リツク西尾 | PHP研究所 | 4569616674 | 92011408 | 834 R |
| TOEICテスト900点TOEFLテスト250点への王道 | 杉村太郎 | ダイヤモンド社 | 4478980470 |
92011336 | 830.79 S |
| 基礎からはじめるTOEICテスト | ラリー・ニフイング | ジャパンタイムズ | 478901049X | 20110036 | 830.79 K |
【TOEFL】
| TOEFLテスト250点完全攻略リスニング：大学・大学院留学に必要なスコア250突破を日指す！ | 岩村圭南， フレーフン・スマイリー |
アルク | 4757403534 | 92011538 | 830.79 I |
| コンピューター対応TOEFLテスト文法完全制覇 | ルイス・マラメッド、 藤枝美穂 |
三修社 | 4384005431 | 92011355 | 830.79 E |