私は摂南大学で教員免許を取得し、卒業後は約6年間公立の中学校と小学校で働いていました。とても楽しい時間を子どもたちと共に過ごしていました。しかし、30歳を目前にして「もっと英語を使って仕事をしてみたい」「海外について知りたい」と思い、思い切って教員を辞め、海外に飛び出してみました。
フィリピン、オーストラリア、ニュージーランドを回り、英語力に少し自信がついたので、なんとなくドイツに行くことを決めました。到着後運よく仕事も見つかり好調な幕開けでした。しかし、数か月もたたないうちにコロナウイルスの影響で、働いていた飲食店が営業停止になってしまい、職を失うことになりました。ロックダウンが始まり、世界中が混とんとする中、再就職先は見つかりませんでした。言葉が通じない異国の地、身寄りもいない、友人も次々と帰国、収入もない、先が見えない不安に押しつぶされそうになりました。そんなとき、自宅で経験や自分の強みを活かしてできることがないか考えた時に、摂南大学で「日本語教師養成」の授業を受けていたことを思い出しました。「これはチャンスかもしれない!」長い間興味はあったけど実際に日本語を教える機会がなかったので、物は試しとすがる思いでオンラインの日本語教師の登録をしました。
経験がないことに不安を感じたので、授業料を安めに設定し、できるだけ多くの生徒を募ることにしました。多種多様な年齢やレベル、要望にできるだけ応えられるように柔軟に一人一人に寄り添った授業を心がけました。またテキストを購入し、外国語としての日本語の文法や学習方法をつかめるように努めました。振り返ると始めたころの授業は、恥ずかしいものばかりです。しかし数か月が経つ頃には、こうした努力が評価され多くの人が継続して授業を受けてくれるようになりました。また、国際的な視点を持ち合わせていることや異文化理解の姿勢なども私を教師として選んだ理由だと言う生徒もいました。
今では通常価格にし、月に約120時間程度授業を行っています。文法や会話の手助けをする楽しさはもちろんですが、“日本語”というツールを使って、遠く離れたところに住んでいるアメリカ、カナダ、ドイツ、イギリス、インドネシア、中国など様々な国の人と文化や習慣について交流できることが一番の魅力です。どうして今まで日本語教師をやらなかったのだろうと疑問に思います。
現在、ドイツでは少しずつ感染者が増えている地域もありますが、ほとんどの国民が国や州で決められた感染対策に従って生活し、安全な日常を送っています。こんな状況だからこそ自分にできることや興味があることに挑戦しながら、前向きに生活していきたいと思います。