主なテーマ:陰陽道、陰陽師
現在の私たちの生活は科学技術によって支えられていますが、近代以前の日本では(むろん世界でも)、現在のような科学技術が発展していたわけではありません。とはいえ、人々は様々な知識や技術を考え、実践してきました。その一つが陰陽道という思想で、それを生業としていた人々が陰陽師です。
陰陽師といえば、まず安倍晴明を思い浮かべることが多いでしょう。アニメや小説、あるいはゲームの世界で描かれる晴明は、占いや呪術を駆使する超人的な美青年ですが、彼の扱う占術や呪術は、陰陽説、五行説といった原理に基づいています(むろん、その描写にはかなり誇張されていたり、荒唐無稽なものもありますが)。
陰陽説、五行説とは古代中国で発生した道教の考えに基づいたもので、森羅万象を陰と陽、そして木火土金水の5つのエレメントによって説明する思想です。また、太陽や月、星の運行を観測し、複雑な数理処理が必要な暦を作成したり、器具を用いて天体観測をしたりもしていました。あるいは様々な自然現象や怪異現象にも注目して、天が社会や個人に与えたメッセージを読み解くこともしました。
つまり、前近代の社会にとって陰陽道とは一面では思想・宗教であるとともに、もう一面では当時の科学技術でもあったのです。
とするならば、陰陽道や陰陽師を研究することは、前近代の人々が宇宙や自然をどのようにとらえていたのか、また付き合ってきたのかを読み解くことにつながるでしょう。私の研究では特に安倍晴明が死去してからおよそ100年後の平安時代末期(院政期)から始まる中世という時代を対象に、陰陽道や陰陽師が国家や社会、個人にどのように受容され、変容していったのかを考えています。
代表的な著書
(単著)『鎌倉期官人陰陽師の研究』吉川弘文館、2011年
(編著書)『新陰陽道叢書 第二巻中世』名著出版、2021年
この他、詳しい研究成果は下記をご覧ください。
赤澤 春彦 (Haruhiko Akazawa) – マイポータル – researchmap
また、『中外日報』2021年5月13日に寄稿しましたので、こちらもどうぞ。