研究
難治性喘息の病態解明
喘息患者の約5〜10%は、ステロイド薬が効かない「難治性喘息」に分類されます。2010年に発見された2型自然リンパ球(ILC2)は、この難治化に深く関与することが明らかになりつつあります。我々は、ILC2がステロイド抵抗性を獲得して病態形成に寄与する機序を解明するために、独自の難治性喘息モデルマウスを樹立しました。このモデルでは、肺に顕著な線維化が進行し、大量のステロイドを投与しても病態を抑制できません。現在、このモデルを基盤として新たな治療標的の探索を進めており、さらなる病態解明と治療戦略の確立を目指しています。
喘息病態におけるDDR1の役割解明
Discoidin Domain Receptor 1(DDR1)は、コラーゲンをリガンドとする受容体型チロシンキナーゼです。線維化や組織リモデリングとの関連が注目されている一方で、その喘息病態における役割は未解明です。我々が開発した難治性喘息モデルマウスでは、肺に顕著なコラーゲン沈着が観察されます。この知見をもとに、DDR1が病態進行に果たす役割を精緻に解明し、新たな治療介入の可能性を追求しています。
アレルゲン免疫療法の効果発現メカニズムの解明
アレルゲン免疫療法(アレルゲン特異的免疫療法)は、喘息やアレルギー性鼻炎に対する根本的治療法として注目されています。しかし、その効果発現機序はいまだ十分に理解されていません。我々は、アレルゲン免疫療法モデルマウスを作製し、病態制御メカニズムの研究を進めています。その中で、ILC2が顕著に減少する現象を確認しており、このILC2抑制機構を明らかにすることで、免疫療法の本質的な作用メカニズムの解明に取り組んでいます。
細胞外小胞に着目したアレルギー病態制御
免疫細胞は細胞外小胞(Extracellular Vesicles, EVs)を放出し、細胞間コミュニケーションを行っています。EVはアレルギーを含むさまざまな疾患の病態形成に深く関与していることが知られています。我々は、ある特殊なT細胞サブセットが産生するEVに、ILC2をはじめとするアレルギー病態形成に関わる細胞の機能を強力に抑制する作用があることを見出しました。現在、この抑制作用に関与する分子の特定と、その免疫制御メカニズムの解明を進めており、新たなアレルギー治療の可能性を切り拓こうとしています。