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「学而」創刊にあたって

図書館長 布目 潮ふう
(国際言語文化学部教授)

 今回、摂南大学図書館報「学而」創刊にあたり、その命名の由来を説明しましょう。
 これは孔子の『論語』開巻最初に「子曰く」とある次に、「学びて時に之れを習う、亦た説ばしからず乎」(学而時習之、不亦説乎。)に基づいています。この一句の意味は、「学」とは学問のこと、具体的には必要な教科書を読むこと、「時」は、時々ではなく、適当な時に。「習」は復習すること、何度も復習することによって理解が深まり、自分のものとして体得できるということ、「不亦説乎」は、これこそ人生の喜びではないかという意味です。短い言葉の中に学問は人生の苦しみではなく、人間の喜びであることを、断定的に教祖的に述べるのではなく、同意をうながすように言うところに、孔子の人格がにじみ出ています。
 次にどうして私が今から2500年も前の中国の孔子の言葉をもちだしたかを説明しましょう。中国では、孔子の没後400年経過してから、漢の武帝の時に、孔子学派の儒家が王朝の官定の思想となり、1911年の清朝の滅亡の時まで約2000年もつづき、一つの思想というより、中国人のものの考え方の一つの基礎となりました。その後、反乱教運動も広まりましたが、完全には否定されるに至らず、また今から15年ほど前にも批林批孔運動と言って、当時、毛沢東主席の後継者と明記されていた林彪への批判と共に、林彪の尊敬していた孔子批判の大運動が起りましたが、この運動も消滅しました。これは何故でしょうか。それは科学文明の発達した現代でも、2500年の昔に、人間とは何か、人間として何をしなければならないかという根本命題が述べられそれは古今東西あまり変化がないからです。もちろん孔子も時代の子で、孔子の言葉の中にも、現代では受けいれられない部分もあります。そのような個所を除くと、科学文明ばかり過信している現代文明の中において、ややもすると忘れられている、人間とは本来何をなすべきかということが、『論語』を読むとあざやかによみがえります。江戸時代の学問は『論語』ぱかり読んで、人間とは何をなすべきかという根本命題だけ考えていましたが、現代の学問や教育には、その部分における欠陥が現われています。
 摂南大学の学生諸君、学問には、教室で講義を受けたり、実験や演習に参加するだけでは足りない部分があります。教室などで学んだことを、図書館で読書をして復習することにより、知識を確実なものにして、それが何と愉快なことであるかということを体得して下さい。図書館を利用する方法を習得すれば、これからの人生において、知的な落伍者となることはありません。書名か著者名がわかれば、コンピューターの学生用端末機で検索し書物の所在を確かめ、借り出して読んで下さい。13万冊の書物が諸君を待っています。
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私と図書館
薬学部・薬学科教授 川崎 敏男

 摂大図書館報「学而」の創刊を心からお慶び申し上げます。薬学部は、摂大4学部の末弟として昨年4月発足、私はさらにおくれること1年、本年4月着任したばかりですが、早々に寄稿の機会を与えられ光栄に存じます。今後何卒よろしく御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。
 旧制中学、高校の8年と、戦時の学年短縮による大学2年半、さらに大学教員の生活が41年ですから、私は50年余図書館のお世話になってきたことになります。中学、高校の時、受験勉強のために、中之島の府立図書館に足繁く通ったこと、大学生、助手の時代は、狭く、暗く、しかしアカデミックで荘重な雰囲気の図書室で文献しらべをしたこと、戦争末期になって重要図書類を遠く郊外の農家に疎開したことなど、いまだにその時々の情景が、独得の書籍の匂いとともに懐しく想い出されます。九大時代、医学部薬学科教授としての4年間は医学部図書委員、薬学部教授20年のうち14年は九大図書館商議委員であったことを考えますと、改めて図書館との深い縁を感じます。だからといって、管理運営側、利用者側、いずれの立場からも、これといった一家言があるわけではありませんが、図書館の変貌、館長先生はじめ館員諸氏の御苦労は、長い間眼のあたり拝見してきました。
 図書館の形態、機能(役割り)は近年急激に変りました。情報量の驚異的増加、管理、検索のコンピューター化、文献複写の発達、普及などによるものでしょうが、工大、摂大の図書館では、この趨勢にいち早く、しかも適確に対応し、昭和57年4月から完全なコンピューター化をスタートさせ、他学の範となっていると聞いています。本年4月から、薬学部も二年次生を枚方に迎え、当分館も本格的活動に入りましたが、何分先輩3学部とはキャンパスが離れているため、本館、分館それぞれの職員の皆様には、将来にわたって御苦労をお掛けすることと思います。
 薬学という学問は広汎な領域にまたがり、したがって、必要とする図書、雑誌の種類が非常に多いのが泣き所ですが、幸い摂大が総合大学であり、さらに工大ともオンラインで結ばれているのは心強い限りです。分館としては、出来るだけ薬学に特異な専門図書に絞って、鋭意充実がはかられていますが、これらも亦、摂大3学部、工大にもお役に立ち得るものと信じます。「摂大キャンパス」7月11日号に、館長布日潮ふう先生は、"多くの知識獲得の手段の中で、読書によるそれがもっとも教養人にふさわしい確実なもの"といっておられますが、まさに至言であり、学生諸君はもっともっと活字に親しんでほしいと思います。その1つの方法として、多くの人々が熱心に読書している図書館(室)に出掛け、その場の雰囲気に溶けこむことは非常に有効です。摂大図書館は最新の図書検索システムをもち、閲覧室も完備して快適です。関連施設としてリスニングコーナーまであるのですから、是非とも宝の持ち腐れにならないよう、恵まれた施設の十二分の活用を願って止みません。
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次号(1月)の予告
 現在、寝屋川本館で、「所蔵検索用」端末機に関するアンケート調査を実施中ですが、その結果発表を行います。端末機以外でも貴重な意見が寄せられています。君の意見も

図書館利用で有意義な学生生活を

工学部・機械工学科4年 奥村 敏晴

 いかに図書館をうまく利用して学習の能率を上げるかは、私達学生にとって一番大切な事です。アメリカでは夏休みの間、自分の大学の図書館でアルバイトをする事によって、授業料を免除してもらう大学生が多いそうです。彼らは多量の提出物をこなすために、図書館を最大限に利用する方法を各自工夫するわけですが、彼らにとって図書館で仕事ができるのは一石二鳥なわけです。我々も彼ら同様有意義な学生生活を送るためにうまく図書館を利用しなければなりません。幸い、我々摂大生は立派な図書館に恵まれています。
 やはり、レポート作成や授業の下調べ等に一番よく利用しますが、学術雑誌室に行きますと自分の専門分野はもちろんの事、専門外の事についても、バックナンバーがそろっていますので新旧様々な情報を十分に手に入れる事ができますし、外国雑誌も豊富にありますので海外状勢も知る事ができます。英語の勉強がしたければ、高価なカセット付の教材を利用できますし、将来にはビデオの教材も利用できる様になるかもしれません。又、我々のなじみの教授の趣味が知りたければ紳士録を見ればすぐにわかります。少々変わった利用方法としては、外国の地図と写真集を持ってきて少し想像力を働かせれば海外旅行の気分も味わえます。あらゆる事について図書館を通して知る事ができます。
 それぞれ利用の方法は自由ですが、少し視野を広げてみると大変楽しみながら知識を増やす事ができます。
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不 満 と 期 待

薬学部・衛生薬学科2年 橘 司郎

 私たち薬学部第1期生と共に開館したこの枚方学舎の図書館も半年以上たった今、私は図書館を利用するうえでたくさんの不満がある。たとえば蔵書が少なく、そして雑誌や小説や文庫といったものがほとんどないこと。また、利用したいと思う本はすべて先に貸し出しされてしまったあとで、利用できないことが多い。このような不満は私だけがもっているのか、他の学生はどう感じているのか、ということでアンケート調査を行ってみた。
 その結果、私の感じているとおりの回答が得られた。そのなかで特にみんなが関心を持っているのは蔵書で、その構成をみると専門書にかたよっており、当然のことながら増やしてほしい希望も専門書が圧倒的であり、学部としての特色がよく表われている。一方、小説や文庫といった読み物の希望も多かった。
 私たちは第1期生で、何かにつけてすべて自分たちでやらなくてはならない。たとえば、先生より調査課題が出たなら他の大学生のように先輩に頼るといったことはできない。また薬学を学ぶために重要な実習、そのレポートの作成などすべて自分たちで考え、調べ、実行しなくてはならない。そこで何かと忙しい私たちが身近に学習できるのは、やはり学内の図書館ということになる。したがって図書館の充実は私たちにとって大切な問題である。
 今後、学生が増えていくことになるが、学生と先生方、学園との交流の場として、明るく活気のある、また特色をもった学舎にしていくため、努力しがんばっていきます。そのためにも図書館が、私たちの知識の宝庫となることを期待します。
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この秋読んでみよう――読書の秋・推薦図書

 燈火親しむの季節、ここに硬軟おりまぜた興味深い図書をお届けします。夜長のひとときに
 是非。この推薦図書は、11月末までは図書館・カウンターに揃えています。
 以後は、それぞれの請求記号(書名の下に記載)に従って配架されます。

※ HP版作成に当たりOPACとリンクを行っているため、請求記号は省略しています。

世界における日本の地位認識を
日本国勢図会 1984年版 財団法人 矢野恒太記念会編

国際言語文化学部教授 西田 彦一

 日本国勢図会は第一生命保険相互会社の創設者である故矢野恒太翁によって1927年(昭和2年)に創刊された。創刊以来第十一版を刊行した1954年(昭和29年)までは、戦時体制下の時期を除き隔年に、それ以後は毎年刊行され、今では四十二版を数えている。
 この書の編集方針は創刊の時と同じく、わが国を統計数字で紹介するとともに、国際環境理解のための各種資料を提供し、わかりやすく解説している。本書の構成は、第1章〜第57章に分けられ、各章には世界と日本、経済の歩み、世界の国々、気候、国土利用と国土開発、人口の動き、府県と都市、労働、国民所得、わが国の資源、鉱業、エネルギー、農業、畜産業、林業、水産業工業、金属工業、機械工業、化学工業、建設業、わが国の貿易、世界の貿易…など幅広く収録し、最後に索引と主要参考資料目録などが付されていることは本書の価値を一層高めている。 本書は日本の国情や世界経済および世界における日本の地位を正しく認識するために大いに役立つものである。一人でも多くの人々に読まれることを願ってやまない。
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紐衣ってなに?
「衣」の文化人類学 深作光貞 著
続「衣」の文化人類学 深作光貞・相川佳予子 著

教職教室助教授 西垣 隆夫

 ソクラテスは「己自身を知る」ことが何より大切であるといっていますが、自我に目覚める頃から我々は、「己を知りたい」――「人間を知りたい」――という絶えざる欲求に悩まされるようになります。この人間の営為の基盤になっている欲求に応えるものの一つが本書でしょう。
 本書は、著者のことばによれば人間の生活にとって最も基本的なものである衣・食・住のうち、衣を取り上げようというのです。
 衣(の文化)という手近なものを通して、人間の本性に迫ろうとしているといってよいでしょう。衣の生活への密着の度合が強過ぎて、今までは実学的にしか追求されていなかつた衣に、文化人類学の知識を基礎に人文科学的(文化的・生態的・学際的)に見直す初めての試みとして挑戦したものです。
 ものを本質的・基本的に把えるのには、その起源から始め、その多岐・複雑化したものに及ぶといった態度から、衣の始源が「紐(紐衣)」――下半身につけるものから始まったとしています。しかも、衣への欲求の基盤には、「変えにくい人体をも変えたい人間の欲求」「人間の不安と容姿づくり」「エロスを必要集件とする人間文化」の三つがからんでいるとし細衣――ふんどし――腰布――腰巻衣の下半身のものから上半身のものへと及び、また、ものによっては、肩から上半身あるいは全身に着せくだってゆく中で、衣の文化を通して人間の本性を明らかにしようとしているのです。
 なおまた、衣の美学にも触れている所は、我々のファッショナブルな現代の衣裳への関心を十分満足させるものでしょう。
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新時代に生きる日本の英知
逆説の論理 会田雄次 著

工学部・電気工学科助教授 松下 俊介

 私と著者との出合いは昭和37・8年頃に出版された『アーロン収容所』に始まる。本書、アーロン収容所は著者の捕虜体験に基づいて書かれたもので「英軍さらに英国というものに対する燃えるような激しい反感と憎悪を抱いて帰ってきた」著者会田雄次が透徹した西洋史家の目で語る比較文化論であり、ヨーロッパヒューマニズムの真髄を述べたものである。以来、会田雄次とはつかず離れずお付合願っており、『日本人の意識構造』『日本人材論』(講談社)等は多くのサラリーマン等に読まれたが、御多分にもれず私も読ませてもらった。さて今回取り上げた『逆説の論理』は日本人論であり、また生き方の書でもある。
 特に本書を取り上げた理由は私が著者を多分に意識しているということよりは、むしろ、我々がいつも紐怩たる思いで避けて通っている現代日本人の欠陥と、失われようとしている日本人的感覚について鋭い指摘と、示唆に富むからである。それはバサラ(乱暴狼藉)のすすめに始まり、日本的知的生活のすすめに至る全10章に共通する。ここでいうバサラの精神とは不条理に対する抵抗とその打破の精神であり、なにものにもとらわれない自由な精神のことである。もちろん、いわゆる乱暴狼藉とは異質のものである。現代の組織化機械化の進む社会の中で、自分を見失い、その中に埋れてしまわないためにも大きなバサラとは言わなくても小さなバサラ精神を身につけ、精神の衰弱を防ぐことを指摘している。さらに、日本人自身が忘れ去ろうとしている日本人的思考方法や生活様式の中にこそ、無原則の流動、変化の世界を生きていく上での英知が秘められており、この日本的英知の根こそ大きく育てこれを活用し、行動することであると言う。著者は「本当にこの世を動かして行くのは、いや動かして欲しいのは、自分自身で考え、工夫し、行動する人々だ。といって独善者でない。学ぶだけでなく、学んだ事を栄養分として考えて行ける人達だ」そういう人達に本書を読んで欲しいと。一読を薦めます。
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世界の巨匠クロサワの自伝
蝦 蟇 の 油 黒沢 明 著

 「姿三四郎」「わが青春に悔なし」「素晴らしき日曜日」「酔いどれ天使」「羅生門」「七人の侍」「蜘蛛巣城」「赤ひげ」……、どれをとっても名作と呼ぶにふさわしい作品ばかりである。多分この監督の映画を見ていない人はそう多くはあるまい。若い諸君の中には見ていない人もいるかも知れないが、必ず見るべきである。〈クロサワ〉の名は、おそらく日本人としては世界で最も知られ、愛され、尊敬されている名前であろう。そういう監督の映画を見ていない人がいれば、外国に行って恥をかくだろう。国際人となるための、まず一歩として、黒沢明の映画を見なければならない。因に「蜘蛛巣城」はシェークスピアの「マクベス」を原作としており、シェークスピア劇を映画化したものでは、この日本の映画作家の作品が最高である、という評さえある。また現在撮影中の「乱」もまたシェークスピアの「リア王」を下敷きにしている。
 さて、この本は「自伝のようなもの」とサブタイトルにあるように、氏の幼少の頃から「羅生門」でグランプリをもらう頃までが書かれている。しかし、優れた本というのは、幾通りにも読みとることができる。従って読者は好きなように読めばよい。ただ、そこに一貫して流れている、自由な、反骨精神は存分に味わうことができるだろう。   (図書課 S.K.)
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娯楽誌の数々……
図書館にもある
遊びの雑誌

 山の好きな人には「山と渓谷」カメラを愛する君には「アサヒカメラ」いやいや俺はバイクに首ったけという君には「オートバイ」私はファッションにはいつも気をつけているりという貴女(貴男かな?)には「J.J.」
 これみんな図書館にある雑誌です。
 この外には、Lマガジン・FMレコパル・Cosmopolitan・コルフダイジェスト・スクリーン・旅・太陽・時刻表・暮しの手帖・モーターマガジン・音楽の友・朝日ジャーナル・世界・正論・文芸・ユリイカ・すばる・週刊東洋経済・週刊ダイヤモンド等々……。
 今、このような軽読書にあたる雑誌は全部で60種類程あります。本館では、6階の第1閲覧室に置いています。
 息抜きのひと時、多いに利用して下さい。
 (でも、あまりさわがないでネ)

新聞も置いている
 今年から、種類が増えました。
 朝日新聞・毎日新聞・読売新聞・サンケイ新聞・日本経済新聞の外、国内の主要新聞は揃っており、スポーツ新聞もあります。
 外国語の新聞では、The Student Timesなど国内で発行しているものの外、英文の「New York Times」インドネシア語の「Konpas」スペイン語の「Uno Mas uno」中国語の「人民日報」があります。気軽に利用して下さい。

諸君の希望を!
 図書館では、諸君の欲しい本が、本学図書館にない場合、それを買う「希望図書購入制度」があります。これは、勉学に関係した専門書でなくても良い訳で、例えば、先にあげた娯楽雑誌でも希望できます。こんな雑誌があれば、あんな新聞が欲しいという場合、カウンターの係員に申し出て下さい(ただし、競馬の新聞はペケ)。 (N.T.)
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