摂南大学薬学部 公衆衛生学研究室

教員別紹介

教員名
奥野 智史 准教授
所属
薬学部 公衆衛生学研究室
専門分野
公衆衛生学、栄養生理学

研究テーマ

セレンは、現在、最も健康との関係が注目されている元素の一つです。実際、セレン摂取量の低下に伴って、動脈硬化、がん発生率の上昇、免疫機能の低下などが報告されています。このようなセレンの機能(生理作用)には、セレノシステインというアミノ酸を活性中心にもつセレノプロテインの触媒作用に起因すると考えられています。これまでに、哺乳動物において少なくとも25種類のセレノプロテインの存在が明らかにされていますが、機能や役割が明らかになっているものは細胞内酸化ストレス防御系として機能するグルタチオンペルオキシダーゼやチオレドキシンレダクターゼなど数種類だけであり、多くのセレノプロテインがどのような役割を果たしているかは未だ明らかにされていません。

マウスやラットを用いた動物実験やがん細胞を用いた実験で、セレン化合物ががんの成長抑制や抗腫瘍形成活性を示すことが報告されています。そこで、私たちは セレン化合物をがんの予防や治療などに適用するための基礎的知見とするため、がん細胞によるセレノプロテインの発現の差異ならびにがん細胞の増殖抑制に寄与するセレノプロテインを明らかにすることを目的として研究を行っています。これまでに行った乳癌細胞T47D細胞を用いた実験では、女性ホルモンである17β-エストラジオールによって促進される乳癌細胞の増殖促進作用が、亜セレン酸ナトリウム、セレノメチオニン、メチルセレニン酸という3種類の化合物で特異的に抑制されることを見いだしました。さらに、メチルセレニン酸による抑制メカニズムを詳細に検討し、セレン化合物を曝露した乳癌細胞でチオレドキシンレダクターゼが関与した酸化的ストレス防御系が活性化し、17β-エストラジオールによって引き起こされる細胞内での活性酸素産生が抑制して、最終的に細胞周期を遅延させることが示唆されました。現在、乳癌細胞において、チオレドキシンレダクターゼ以外に細胞増殖抑制に関与するセレノプロテインがあるかどうかを検討するとともに、新たに大腸癌細胞や肺癌細胞についても現在研究を進めています。

研究室全体の研究テーマ概要

研究キーワード

ミネラルや微量元素の栄養と代謝, がんなどの疾病予防・治療に向けたセレン化合物の利用, セレノプロテインの機能解明

主な所属学会・研究会、役職等

日本薬学会、日本微量元素学会、日本トキシコロジー学会、日本水環境学会,日本フリーラジカル学会、バイオアッセイ研究会

連携の実績やシーズ

過去5年間の業績

研究論文

教育業績

過去5年間に教科書等の執筆はありません。

社会貢献