著書紹介
日本薬学会編 健康とくすりシリーズ
水は健康を育む

我国には水にまつわることわざが多くあります。「水の流れと人のゆくえ」「水心あれば 魚心あり」「水清ければ魚棲まず」「山紫水明」「水に流す」・・・・・・ 水は 無限にあるかのごとく錯覚しています。水は有限であり、飲料水、生活用水、工業 用水、農業用水、水産用水、レクレーション水などあらゆるところで利用されています。
地球のあらゆる生物は水の恩恵を受けています。何気なく生活している中で水は2つの 大きな役割を担っています。一つは、地球上の水循環があるからこそ、農作物、穀類をは ぐくむ恵みの雨を与えることになる。二つめは、ヒトを含めた全ての生物は、体重の大部 分が水から構成されており、体の中の結合水などは組織や器官など生命にとってなくては ならない水の役割を発揮していると言われています。
21世紀は水の世紀といわれています。水に対しては様々な角度から再評価されていま す。そのなかでも、21世紀には、水は水素燃料、海水の潮の満ち引きの利用や温度差を 利用する発電など新たなエネルギー資源として脚光を浴びています。この様に水の有用性 は今後益々増大するものと考えられます。
ところで、水に関する本は沢山出版されていますが、その多くは水の不思議な理化学的 性質や水質汚濁などを扱った本が多く目につきます。
この著書「水は健康を育む」においては、従来の水の本では読むことのできない水と健 康との関わり合いを中心とする内容から構成しました。
第一章の自然界の水では、水は世界をめぐる、海は生命の母、海水に溶けている成分、 極地まで汚染は広がるなど海と生命の関わり合いについてふれています。
第二章の生活のなかの水では、生活に用いる水やレクリエーションのための水で生活のなかで関わる水に ついてふれています。また、食品のなかの水では、水が食糧生産を支えるためにいかに食 品のなかに水が含まれているかを知るとともに、食糧生産に膨大な量の水が必要であるか をのべています。
第三章のからだを育む水では、体の中の水、水はからだの中をかけめぐる、体の中の水 がなくなるとどうなるか、体の中に水がたまるとどうなるかなど体のなかの水の不思議を 述べております。第四章では、安全な水、おいしい水や機能水について健康を育む水とい う観点からまとめました。
この本は、一貫して水が「いのち」に関わっていることにふれるとともに、水はヒトの 健康維持・増進にいかに大きく関わっているかを再認識して頂くためにも、多くの事象を取 り上げました。
「水は健康を育む」という視点から本書を読んで頂ければ幸いです。
摂南大学薬学部 中室克彦・上野 仁
日本薬学会 編
丸善 平成15年8月30日発行
ISBN4-621-07280-3 C0077
定価=本体1,200円+税