活動概略と予定
全体概略で言いましたが、私達「S-Racing」は機械工学研究部のメンバーを中心に発足した”全学フォーミュラプロジェクト”で、大会総合優勝を目指し活動しています。
その活動ですが、ただ単にフォーミュラマシンを制作して走らせるというわけではありません。
まず、フォーミュラマシンのコンセプトを決め、そのコンセプトに基づいた設計を行います。
設計も大詰めになると、その設計に基づいて部材を加工し、マシンを制作していきます。
制作したら終わりではなく、デザインレポートやコストレポートといった書類を大会へ提出しなければなりません。
そういった様々な過程を経て、ようやく大会に出場することができるのです。
大会に出場できても、すぐに走らせられるというわけではありません。5日間の大会の間に、マシンは安全に作られているか、決められたレギュレーション(ルール)に照らし合わせながらチェックしたり、ブレーキや騒音、チルトテーブル(傾け)試験などを行う車検を合格することでようやく走行することのできる動的審査が可能になるのです。その他にも静的審査という、プレゼンテーションなどのマシンを走らさない審査などもあります。
下の図は、年間スケジュールになります。

概略を説明した所で、今度は我々の活動を4つに分類して詳しく説明していきます。
設計
フォーミュラマシンを作るには、まず設計をしなければなりませんが、、自由に設計して好きなマシンを作れるというわけではありません。車両製作から審査まで大会側で決められたルールにそってマシンを制作します。
全日本学生フォーミュラ大会のレギュレーション(ルール)は、
Formula-SAE(米国自動車技術協会が主催するエンジニアを育成するための教育プログラム)に基づいているため、すべてが英語です。
なので、まずはじめにする作業は、150ページ以上という膨大な英語で書かれたレギュレーションを翻訳するなどして理解することです。そのレギュレーションには、ヘルメットやドライバースーツなどの装備品から車体の構造まで安全に配慮し細かく決められており、その他にも日本国内のみのローカルルールなども存在します。
こちらが実際の2013年度のレギュレーションです。
レギュレーションを理解したら、ようやく設計です。大会側の定めたレギュレーションに基づきながら、”コンセプト”にあった設計をしなければなりません。
設計といってもただ製図をするだけではありません。”コンセプト”に合ったマシンスペックになるよう、アッカーマン関数やヨー慣性モーメントなどを用いて計算を行います。
設計時にはソリッドワークス・ジャパン株式会社様からご提供いただいている3DCADソフト「SolidWorks」を用いて、CAD上で3次元的に部品を作成していきます。3次元なので感覚的にわかりやすく、部品同士をアセンブリ(組み合わせ)することでそれらの干渉を調べることもでき、効率よく設計することができます。
また、「SolidWorks」に搭載されている解析ソフト「Cosmos」で強度解析などを行い、目的の強度なのか数値や視覚的に確認するなどして設計を行なっています。
加工
加工の際は、摂南大学 8号館1階 にある「テクノセンター」を利用させていただいています。
3DCADで作成した部品は、図面化して、加工に移ります。
S-Racingでは、ほぼすべての部品を自分たちで作成しているため、加工は旋盤からフライス、NC旋盤、マシニングセンター、ワイヤー放電加工機など多種多様な加工機械を使用します。
また一つの加工機械でも、様々な加工を行います。例えば旋盤なら、円筒外形削りはもちろんのこと、テーパー加工や中ぐり、ローレット加工など、部品ごとに適応した加工方法で加工を行います。
加工といっても切断したり削るだけではありません。数値制御工作機械(マシニングセンターやNC旋盤・ワイヤー放電加工機など)の場合は作った図面を元に座標を求め、プログラムを作成します。
マシンのフレームは鉄パイプで出来ており、多くの箇所が溶接で接合されています。フレームなどは鉄なので炭酸ガスアーク溶接で比較的簡単に溶接できますが、アルミは「TIG溶接」と呼ばれる技術の必要な溶接法なので、普通の授業では身に付けることが出来ない技術なども身につけることができます。
レポート・プレゼンテーション
学生フォーミュラでは、フォーミュラマシンをただ製作するだけではなく、製作した部品の素材、使用した加工機械や加工手順を細かくコストレポートに記載し、決められた期日に提出しなければなりません。
大会の審査では、提出したコストレポートと製作したフォーミュラマシンを見比べて、コストレポートの整合性を問われます。
プレゼンテーションでは、製作したフォーミュラマシンを決められた台数を販売するとして、製作したマシンのコストをから定価を決め、どういった客層をターゲットにするのか、
製作したフォーミュラマシンをどのようにして販売するのか、発表します。
大会
学生フォーミュラ大会では、4つの審査があり、合計で1000点満点で順位を決めます。
1つ目は、車検審査です。車検審査ではレギュレーションにもとずいてフォーミュラマシンを設計出来ているかを審査します。ここで審査に受からなければ、この後におこなう動的審査に進む事ができません。
2つ目は、静的審査です。静的審査はコスト、プレゼンテーション、デザインの三項目があり、それぞれ前から100点、75点、150点の計325点となっています。これらは、それぞれ決まった人数があり、その中で審査員からの質問に答えなければなりません。
3つ目は、動的審査です。動的審査はアクセラレーション、スキッドパット、オートクロス、エンデュランスの四項目があり、それぞれ前から75点、50点、150点、200点の計475点となっています。アクセラレーションは0-75mの加速性能を見ます。スキッドパットは8の字に走らせることでコーナリング性能を見ます。
オートクロスは直線やターン等を含んだ約800mのコースを2周走行し、そのタイムで車体性能を見ます。エンデュランスはオートクロスで走ったコースを20周走行し、走行タイムで車体全体の性能を見ます。
4つ目は、燃費です。エンデュランス走行前に車体に入れた燃料の量と、走行後の燃料の量を比べ燃費の良さを100点満点でみます。