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河口慧海『チベット旅行記』
――最近の読書から――
図書館長 布 目 潮 ふう
(国際言語文化学部 教授)
チベットは現在では中国の少数民族自治区となっていて、高度4000〜5000メートルの高原地帯、南はヒマラヤ山脈をはさんで、ネパール、ブータン、インド、ビルマに対する。人口は1982年のセンサスで189万余ある。首都はラサに置かれている。一昨年9月ころから、チベット独立をさけぶデモがラサでしばしば行われ、僧衣を着た人がそのデモ隊の中に見える。またごく最近、パンチェン・ラマが死去し、その後継者の選定が注目されている。チベットは仏教(ラマ教)の盛んな国で、中華人民共和国の自治区となるまでは、チベット仏教の最高権者のダライ・ラマが政教二権を統括していた。中国の清朝には服属していたと言われるが、清朝とチベット側の理解にくいちがいがある。1959年、ダライ・ラマは独立をとなえ、インドに逃れ、現在に至り、ダライ・ラマに次ぐパンチェン・ラマが仏教の最高権者となっていた。
チベットはながく謎の地方となっていて、日本人でこの地方を訪れた人はかつてなかった時、河口慧海(かわぐちえかい、1886−1945)は、1897年、32歳のとき、ひとりでインドからヒマラヤ山脈を越えてチベットに入り、1903年に日本へ帰った。そのチベット行きの目的は、インド・中国にもない仏教の原典を求めるためである。この6年にわたるチベット旅行の苦難の記録が『チベット旅行記』5冊(講談社学術文庫)で、大阪工大の高山龍三教授が、これまでの版本をふまえ、英訳本も参照して、読み易く整理されたものである。
河口慧海は堺市の人、15歳のときから仏教に帰依(きえ)し、仏教の戒律を守り、苦学しながら東洋大学の前身の哲学館で3年学び、一時は僧籍にも入ったが、寺の生活には満足しなかった。そしてひとりで、たいした旅費ももたず、中国僧に化けてチベットに入った。ちょうど日清戦争後で、日本人に対する警戒心がとくに強くなっていたからである。インドでは、英語でなんとか用を足し、まずインドでチベット語を習った。
昼間は学校で2〜3時間チベット語を習い、帰ってからはその口語を習った。やはり上達はその言葉のできる人と同居するに限ると言っている。そして口語の良い教師は男子より女子、女子より子供で、女子と子供は発音が少し間違っても決して聞き棄てにせず、向こうから発音して聞かせてくれるが、口の開き方、舌の使い方、歯の合わせ方ができず、できてもすぐ忘れると笑われるので、発音の進みが早い、と言っている。実践的語学習得法である。また今なら完全装備で酸素をもって登るヒマラヤ山脈をどうして越えたか、また当時のチベットの内情など興味津々である。
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景気予測の教祖
――高成長論者、金森久雄さん――
経営情報学部 教授
鈴 木 謙 一
1.日本経済は絶好調
日本経済はいま絶好調である。まず第一に、5%成長(実質経済成長率)の軌道を突っ走っている。かつての高度成長期には、好況といえば10%成長だったが、いまは5%成長といえば好景気である。
第二に内需型成長が持続し、対外不均衡が是正されている。成長の中味を内需(公共投資、設備投資、住宅投資、個人消費など)と外需(輸出マイナス輸入)に分けると、1984年度(昭和59年度)は実質成長率5.2%のうち、内需が3.9%、外需1.3%と輸出依存型の成長だったが、1987年度(62年度)をみると、成長率は同じく5.2%だが、その中味は外需が−1%で、それを内需の6.2%が補って5.2%を達成しており、内需中心の成長になっている。国際収支の黒字が多すぎて貿易摩擦を起こしている日本にとって極めて好ましい成長の仕方である。
第三に財政不均衡が是正された。政府はかねて歳入不足で国債残高が累積している状況に対処して財政再建に取り組み、その目標(赤字国債の発行ゼロ)を1990年度に置いた。とても無理な目標と思われたが、好景気で税収が増えたので、確実に達成される見通しがついた。
第四に雇用情勢が好転し、完全失業率は2.3%と完全雇用水準に達し、有効求人倍率(求職者に対する求人の比率)も1.15(昨年12月)と昨年6月以来、1を上回り、労働需給が逼迫気味になっている。
第五に鉱工業生産指数も1988年度は前年度を8%上回り、経常利益も前年度比25.3%の大幅増益である。このようにどの角度からみても申し分のない状況にある。
2.金森さん一人、大型景気を予測
この好景気は1986年(61年)11月からすでに2年越しになるが、一体いつまで続くのだろうか。過去の経験では、岩戸景気(昭和33年6月―36年12月)が42カ月、いざなぎ景気(昭和40年10月―45年7月)が57カ月続いた記録がある。もし今回の景気が岩戸景気並みならば1990年5月まで、いざなぎ景気並みなら1991年8月まで続くことになる。恐らくはこれらに匹敵するくらいの大型景気であることは間違いない。新しいタイプの大型景気ということで、縄文景気あるいは弥生景気と名付ける人もある。
しかし、この大型景気を予測した人は少なかった。私の知るかぎり、はっきりと大型景気の到来を予言したのは、日本経済研究センター会長の金森久雄さんただ一人である。それほど1986年ごろは弱気論が支配していた。1985年9月、G5(先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議)のプラザ合意で、それまでの「円安・ドル高」局面から一転して「円高・ドル安」局面となり、1986年は強烈な円高不況に見舞われた。しかも円高が長期化するということで、この不況からの脱却は容易ではなく、たとえ景気が上向いても、そのテンポは極めて緩やかなものと予想されていた。毎年、年末には約40くらいの金融機関や専門研究機関が翌年度の経済見通しを一斉に発表するが、1987年度の予測は民間の平均が2.5%、政府は最も強気の部類だが、それでも3.5%に過ぎなかった。4%以上の予測をしたのは、金森さんの4.2%だけだった。ところが、1987年度の実績は金森さんの予測すら上回り5.2%になった。
金森さんは、昭和21年、憲法担当の国務大臣になった金森徳次郎氏のご子息で、経済企画庁出身。昭和39年から41年まで経済調査課長として経済白書も手掛けた。その姿勢は一貫して「日本経済高度成長論」である。昭和40年代にも「40年不況」として歴史に残る大不況が到来した。30年代、神武景気、岩戸景気と大型景気が続き、高度成長を謳歌した日本経済も、いよいよ40年不況をフシ目に低成長に転換するとの転換期論が唱えられた。金森さんはこの多数説に反対し、41年の経済白書で「持続的成長への道」とのキャッチフレーズで再び日本は高成長を遂げるとの論旨を展開した。果たせるかな、この予言通り、いざなぎ景気が到来したのである。
3.イノベーションに対する鋭い洞察
金森さんがまるで教祖のように、日本の高成長を予言し、的中させる秘密はどこにあるのだろうか。金森さんは「景気予測は芸術だ」という。景気の上昇から下降へ、下降から上昇への転換点をつかむのは、単なる計量経済学的手法ではなく、経済の大きな流れをキャッチする能力が問われるのだろう。
金森さんの着眼は特に日本のイノベーション(技術革新)に対する評価にあると思う。過去の高度成長期は「量産技術革新」の時代だった。石油危機の頃は「省エネ技術革新」の時代だった。今回は「情報技術革新」の時代と規定されている。このイノベーションを洞察する能力が金森さんを景気予測の教祖にしている所以だろう。
1989年度の一般の予測は総じて強気である。民間40機関の平均は4.3%、政府も4%である。しかし、金森さんはそれを上回り、5.5%とやはり最高の予測率を出し、他の追随を許さない。その背後には日本経済に対する限りなき信頼があるからだろう。
<金森久雄氏の著書紹介>
・「経済を見る眼」 東洋経済新報社
・「ダイナミクス・日本経済」 中央経済社
・「入門日本経済」 中央経済社
・「日本の景気予測」 中央経済社
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ワープロ貸します!!
図書館では、文明の利器、ワードプロセッサー(ワープロ)を館内に常設(本館5台、分館1台)し、学生諸君に開放しています。
ワープロは悪筆に悩むあなたの強い味方になってくれるはずです。レポート、卒論の清書などに有効に役立ててください。
なお、両館とも館外への貸し出しも実施していますので、併せて利用してください。貸し出しの条件は次のとおりです。
貸出期間:1週間
貸出手続:カウンターで所定用紙に記入のうえ、学生証を添えて申し込む
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図書館利用のすすめ
――新入生諸君へ――
新入生の皆さん、入学おめでとう。今から始まる4年間の大学生活は、皆さんの人生において大きな意味を持っています。この時期に学んだこと、知りあった友人、出会った良書は皆さんの生涯を通じて貴重な財産となるでしょう。人生の指針となる書物を求めて、また自学自習の場として図書館を有効に活用し、有意義な学生生活を送ってください。
今回は、新入生の皆さんに図書館利用の手引きをお届けします。
1.図書館の概要
本学の図書館は、本館(寝屋川キャンパス、7号館)と分館(枚方キャンパス、2号館)から構成されています。そして、その所蔵資料は、@図書 約25万冊、A学術雑誌 約2100種、B各種新聞、軽雑誌、C語学テープ、ビデオテープ、CDなどの視聴覚資料からなっています。これらの所蔵資料は、閲覧・貸出等(参考図書、雑誌など一部の資料を除く)で有効に活用されています。そして、皆さんが館内で自習やグループ学習を行えるよう閲覧室を併設するほか、近年急速に普及しているワードプロセッサーを館内に常設し、開放(館外貸出も実施)もしています。皆さんに快適な学習環境を提供するとともに、サービスを一層充実し、利用しやすい図書館となることを目指して日々努力しています。
2.本学図書館の特色
本学および学園内の図書館(大阪工大中央図書館、同高校図書室)は、全国の各大学に先がけ、コンピュータによる図書館総合情報管理システム(Total Library Information System)を導入しています。貸出管理をはじめ図書館の運営に関する全業務をコンピュータで処理し、利用者の要望にすばやく対応できるようになっています。さらに本館・分館間はもちろん、学園内各館はオンラインによって結ばれており、情報の共有をはじめ運営面における各種協力を通じて、他大学図書館にないサービスを利用者の皆さんに提供しています。
以下、本学の図書館の特色について若干の紹介をします。
@ 所蔵検索システム
本学の図書館で資料をさがす場合には、コンピュータ端末機により検索することになります。このシステムは「所蔵検索システム」と呼ばれ、従来の図書館の図書目録カードに代わるもので、利用者の検索に要する時間と労力を大幅に軽減してくれます。このシステムは、端末機の画面を通じ、(a)書名、(b)著者名、(c)分類番号の3つの方法から求める資料にアプローチすることができ、資料の所蔵の有無、所在館、配架場所、請求記号等の所在情報はもちろん、その資料の貸出者や予約者の有無などの情報が瞬時にわかる便利なシステムです。
本学の図書館を有効に活用するためには、このシステムを使いこなす必要があります。検索用端末機は、各館に専用機を設置しており、誰でも自由に利用できます。
最初はとまどいがあるかもしれませんが、「習うより慣れろ」の精神でトライしてみてください。コンピュータの専門知識は全く不要であり、5分程度練習すれば誰でも利用できるようになります。
なお、このシステムの詳細については、端末機に備え付けの「マニュアル」を参照するか、最寄りの係員に尋ねてください。
A 学園内図書館の利用
前述のように、学園内の各館は同一システムで運営しており、また利用者サービスに関しても相互に協力できる態勢にあります。皆さんのほしい資料が本学図書館にない場合でも、大阪工大中央図書館や同高校図書室が所蔵していることもあります。
このような場合、皆さんは学生証を持参のうえ、直接所蔵館に出向いて自由に資料を閲覧できるほか、貸出、複写などについても本学図書館同様のサービスを受けることもできます。このように、皆さんは図書館利用に関しては学園内全館を対象とすることができ、非常に恵まれた環境にあるわけです。この恵まれた環境を有効に活用しない手はありません。どうぞ積極的に利用してください。
3.図書館の各種サービス
@ レファレンスサービス
「調べたいことがあるが、どんな資料をみたらよいのかわからない」「この雑誌に参考文献として載っている論文のコピーがほしい」など、皆さんが情報、資料をさがそうとするとき、その方法や手順について図書館員が援助するサービスのことです。一人で悩んでいても時間の無駄です。わからないこと、困ったことがあれば何でも係員に相談してください。
A 相互利用
本学の図書館に求める資料がない場合、閲覧、複写、貸出等に利用を依頼することができます。
学園内の図書館利用については、先に述べたように学生証さえ利用すれば原則として自由に利用できます(ただし、各館のルールを守ること)。
また、他大学図書館等(公共図書館を除く)については図書館間の取り決めに基づいて利用しなければなりませんので、皆さんがいきなり先方へ出向いて利用したり、直接資料の複写を申し込んだりすることはできません。必ず、本学の図書館を通じて、利用の申し込みを行ってください。なお、他大学図書館等の利用に伴う経費(通信費等)は申込者の負担になります。
B 希望図書購入制度
図書館の資料収集に皆さんの意見を反映させるための制度です。自分がほしい資料で図書館にないものについては、「希望図書購入申込書」に記入して、カウンターに申し込んでください。購入の可否は、掲示板で連絡します。通常申し込み後、1ヵ月程度で入手できます。なお、本館では申し込みから3〜4時間後に入手できる便利な「速図(はやと)君」の制度もあります。
4.おわりに
以上、図書館利用について簡単に紹介しましたが、参考になりましたでしょうか? 紙面の都合もあり、十分な説明とはいえませんので、必ず配布している『Library Guide』や『学生便覧』を十分に参照してください。
最後に、今回紹介しました図書館の所蔵資料や各種サービスも、皆さんの利用がなければ単に宝の持ち腐れとなってしまいます。どうか在学中の4年間、図書館が身近な存在に感じられるほど、積極的に図書館を活用してください。
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図書館利用者の声
――卒業生から――
私の図書館利用法
国際言語文化学部 '89卒
向 井 親 司
大学生活をふり返ってみて、長いようで本当に短く感じるというのが実感です。そんな名残惜しい大学生活の中で、年に2回律儀にやってくる定期試験や、出し損ねたら天災にでもあったと思ってあきらめるしか仕方ないにわかレポートのときに、コピー機と同じぐらいお世話になったのが図書館でした。特に最近では、「速図君」の登場で専門書などをさがすときも大変便利でした。そしてまた、公務員試験の勉強のときもしばしば利用させていただきました。昨年の春ごろなどは、図書館の窓から淀川を見て途方にくれたり、血迷って受験機会の多い行政職に変えようと経済学や法学の本を読んで四苦八苦していました。そのときわかったのですが、特に経済学関係で、公務員試験のために良いと言われている専門書は、大金をはたいて買わなくても大抵そろっています。だから、図書館でよく見て、部分的にコピーをとったり、必要であると思えば買えばいいと思いました。法学やその他の分野もよくさがせばあると思います。図書館の方々も多忙で大変なのに私自身の勝手を言わせていただきますと、一般教養を含めた公務員試験用の書籍コーナーがあればもっと便利になると思います。何はともあれ、本当に図書館にはお世話になりました。私のようにぐうたらな者でも図書館に行けば奮起できたので、卒業までわずかというところまでたどり着けたのでしょう。卒業にあたって、ご指導していただいた国際の先生方、転部のときお世話になった薬学部の先生方、大学職員の方々、そして、国際の友達に厚く御礼申し上げます。
図書館の思い出
経営情報学部 '89卒
尾 崎 幸 恵
私にとっての図書館は、様々な面をもった不思議なところでした。自分の好きな探偵小説をさがしに行くときの期待感、不安感。見つけ出せたときの喜び、なかったときのなんともいえない脱力感と不満。また、"図書館"という文字をみて思い出すレポートの数々。思い出してよかったとは決して思わず、早く忘れてしまいたい逃避感すら感じます。レポートのために重い足を無理に図書館へ向かわせ、思ったとおりの参考書があったときのペンの速いこと。反対に期待はずれだったときはペンはなかなか進みません。そして期待はずれをとおりこして思う本がなかったときの脱力感、その上にレポートをどうして書こうかというあせり。いま思いついただけでも様々な心の動揺がありました。ただ単に本がたくさんあると思っていた図書館に、こうも振り回されていたとは不思議な気もします。
我が摂南大学の図書館は、私が入学した頃には、まだ11号館も建っておらず、主として7号館で講義を受けていたので、すぐ上にあり、とても身近で、特にコピー機には大変お世話になりました(拡大・縮小はここだけですので)。3、4年次は専ら3階の自習室にお世話になっており、特に試験中は、溜まり場のようでした。本来なら図書室の本より情報入手をするはずですが、ここが情報入手にはもってこいの場所だったのです。また私には4階の資料室のようなところが一番入りにくい場所でした。学会の論文のような大切な資料がたくさんあり、興味のあるものなら古いものから全部読んでみたいようなものがありましたが、興味本位だけで入った私にとって、普通の図書館と違うところで終わってしまいました。4年間も大学にいたのにひとつも読まなかったのは、いま思えば惜しいことをしたと思います。私にとって図書館は必要なときだけの情報入手先でしたが、暇をつくって様々なものに興味を持って利用すれば、もっといろんなことを発見し、知ることができると思います。
<推薦図書紹介>
多読のすすめ
薬学部薬学科 助教授
鐡 見 雅 弘
本と読者とのめぐり合いは真に奇なるものである。きわめつきの○○推薦図書が、学生諸君に何の利益も与えないこともあろうし、少しオーバーかもしれないが、たまたま理髪店で見たマンガの本が諸君の一生を決定してしまうことだってありうるのである。「私の推薦書」とか「私を変えた本」などという記事をみても、その本自身にそのような魔力が宿っていると考えてはならない。本のエフェクトとは諸君に読まれることによって、諸君の心の内に成立するある事態なのである。
この一生を決定するような本に出会うには、かたっぱしから少しでも多くの本を読むこと、すなわち、多読する以外にないと私は思う。本でも何でも、物事は触れ合いから始まる。
しかし、どうしてもそういう時間がない諸君には、日本経済新聞社発行の「私の履歴書」をすすめる。この本は様々な分野のリーダーたちの自伝である。執筆者350名。これだけの自伝をごく身近に見ることができるのは他に例のないことである。
自伝あるいは自叙伝というのは、読んでいくうちに時間を忘れさせるほど諸君をひきつけていく不思議な魅力に満ちている。「事実は小説より奇なり」という。現実に存在する一人の人間の生活とその生涯を知ることは、とにかくそれだけで興奮を誘う。そして、諸君はいつのまにかその人の生涯と自分のこれまでの生活やこれからの人生行路とを重ね合わせて読んでいることに気付くであろう。「私の履歴書」を読むと、上に述べたようなおもしろさは言うまでもなく、いろいろと教えられることが多い。著者のまわりの生活について客観的な事実を豊富に記録してくれているので、なによりも生きた人間の眼からみた現実として、産業・経済界、政界、官界、芸術・学界、芸能・ジャーナリズム・スポーツ界等の仕組みを知ることもできる。しかも、それが明治、大正、昭和という三代にわたる激動の歴史の一断面となっていることがおもしろい。「私の履歴書」には単に各界の成功者個人の生活史であることにとどまらず、異色の日本近代史となっているような気がする。
陰になり陽になり、私の人生観や生活態度に少なからぬ影響を与えてくれていると思う。
(請求記号 289.1W<本館>)
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図書館購入新聞のご紹介
図書館で購入している新聞を集めてみました。あなたも自分の愛読紙をさがしてみませんか?
本 館 | 分 館 |
朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞、日経産業新聞、日刊工業新聞、日本工業新聞、スポーツニッポン、デイリースポーツ、週間労働ニュース、英検ステップニュース、The New York Times(英語)、The Japan Times(英語)、Mainichi Daily News(英語)、The Daily Yomiuri(英語)、Asahi Evening News(英語)、The Japan Economic Journal(英語)、The Student Times(日・英語)、人民日報(中国語)、Uno Mas Uno(スペイン語)、Kompas(インドネシア語) | 朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞、科学新聞、薬業時報、薬事日報、Asahi Evening News(英語) |
著作権とコピー
――あなたのコピーは違法コピー?――
コピー機のまわりに学生諸君の長蛇の列……試験期によく見かける光景です。
ところで、あなたが今、手にしている出版物のコピーは違法コピーではありませんか?
ご存知のように、わが国の「著作権法」は、出版物はもちろん、写真、音楽、演劇、絵画、コンピュータプログラムといったものも著作物として保護しています。これらの著作物を利用する場合は、原則として著作者に対して事前に「許諾」を得る必要があります。「許諾」を得ないで利用すれば、著作権侵害となり、民事上の追求はもちろん、刑事犯罪として、処罰の対象となることもあります。
以下、我々が日常よく利用する出版物の「著作権」とコピーの問題などについて簡単に紹介したいと思います。
「著作権法」では、著作物は「著作権」の保護期間(一般的には著作者の死後または公表後50年)を経過したものについては、誰でも自由に利用できることになっており、また、「著作権」の有効期間内のものでも、個人的に、あるいは家庭内等の限られた範囲内での私的利用や、公共・大学図書館等において、利用者の調査研究目的あるいは資料保存目的の場合などは、著作権者の「許諾」なしに自由にコピーをとることができる旨、定められています(ただし、図書館等において「著作権」有効期間のものは、著作物の一部分――半分以下を一人につき1部提供に限る)。
違法なコピーとは、コピーしたものを営利に利用することはいうまでもなく、企業における会議資料への利用など個人の私的利用の範囲を逸脱したコピー利用のことを含んでいただきます。
わが国の文献コピー枚数は、出版業界による推計で、適法および違法を含め年鑑56億枚(世界第1位)と言われています。出版物の値段などから換算すれば年鑑300億円以上となり、その大半が違法なコピーによるものと言われています。このようにわが国で違法コピーが氾濫する背景には。コピー機の普及により、極めて安易にコピーが可能になったこと、および「著作権」に対する利用者の認識不足があげられます。
違法コピーの氾濫は、直接的には出版社や学術団体発行の出版物の売れ行きに影響し、創作活動で生計を立てている著作者の生活を圧迫することとなります。その結果、著作者等の創作活動を制約し、ひいては学問や文化の進歩・発展を阻害する要因になりかねません。
このような理由から、文化庁、各種著作権団体を中心に、国内での著作権思想の啓発に力を入れているわけですが、残念ながら違法コピーが跡を絶たないのが現状です。
これは、違法コピーの防止に関しては、現状では利用者のモラルに委ねられていることに起因しているようです。
大半の人々が、便利さにまかせ、罪悪感もなく違法コピーを乱造しているようでは、根本的な解決は望めません。
この問題は、何もわが国固有の問題ではなく、諸外国においても同様に存在します。西ドイツでは、「著作権」を守るため、「著作権使用料」を著作者に代わって集め、分配する「著作権の集中処理機構」を設置し、著作者の権利を守っています。現在では、アメリカ、イギリスをはじめ15カ国が同様の機構を設置しており、わが国でも同様の組織設立に向け準備が進んでいる模様です。
わが国の社会は、コピー(複製)に対して極めて寛容な社会です。しかし、国際社会の中で、著作権思想が普及している他の欧米諸国からわが国に対して批判がおきていることも事実です。
皆さんが冷静に自分のまわりを見渡したとき、出版物に限らず、ビデオ、CD、コンピュータソフト、各種データベースなど「著作権」と密接に関連したものが多く存在することに気付くはずです。「著作権」の問題は、決して我々と無縁の存在ではありません。
皆さんも、「著作権」の問題について一度考えてみてはいかがでしょうか?
(M.N.)
<参考文献>
・著作権法ハンドブック<1988>(文化庁)
・コピーと著作権(著作権の集中的処理機構設立準備委員会)
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