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良 書 と 悪 書

法学部 教授
高 田 卓 爾

 この夏休みに、久しぶりで岩波文庫新装版を何冊か買ったが、その表紙に巻かれている帯の内側に、何やら金言らしき文章が印刷されている。曰く「良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである。――ショウペンハウエル」と。ショウペンハウエル氏のどの著作に出ている文章なのか、浅学な私にはしかと確認できないが(同氏には《Dber Lesen und BQcher》と題するエッセイがあるようであり、そこに述べられているのかもしれない)、それはともかくとして、さすが大哲学者、まことに有益な「金言」だと一応感心させられる。「一応」といういささか奥歯に物のはさまったような言い方をしたのは、考えてみると、――「考えてみるまでもなく」と言うべきか――この「金言」はあまりにも当たり前のことを言っただけで、何も大哲学者を煩わすほどのこともないではないか、との感がなきにしもあらずだからである。もっとも、世に金言と言われるものは、往々にして至極当然のことを述べたにすぎない場合が多いから、あえて異とするに足りないかもしれない。
 それよりも、とあまり素直でない私はさらに考える。あの「金言」は、無条件に感心してよいものだろうか? 第一に、悪書を読まぬことは良書を読むためのひとつの条件であるとしても、果たして十分な条件といえるだろうか? 否、良書を読むためには、まず書物を読むということが必要である。「あたり前のことだ」と言うなかれ。これこそが、最も基本的な前提条件だというべきである。ヒットを飛ばすためには、とにかくバットを振らなければならないのだ。要するに、悪書を読むまいとする前に積極的に読書しようという意志または心掛けをもつことが大切なのである。
 第二の疑問は、<良書を読め、悪書を読むな>というが、一体誰がどんな基準で良書か悪書かを判断し決定するのか、である。これは、事と次第によっては、かの「金言」の意義を問いただすことになりかねない重大かつ手ごわい問題である。しかし、残念ながらここで与えられた紙数が尽きた。その議論はまたの機会に譲ることとする。
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「フッ素のはなし」

薬学部衛生薬学科 教授
熊 懐 稜 丸

 "フッ素"に関係ある身の回りのものを拾うとテフロンで加工したフライパン、透湿繊維ゴアテックス、スコッチガードのような撥水剤、いろいろなスプレー類の噴射剤、冷蔵庫やクーラーの冷媒等々、枚挙に暇がない。また、医療としてもステロイド系抗炎症剤、制ガン剤、精神安定剤、抗菌剤などにフッ素化合物が用いられている。現在の"文化生活"はフッ素なしには考えられないようである。
 しかし、有機フッ素化学の歴史は極めて浅い。これはフッ素がほとんどの有機化合物と爆発的に反応するので取り扱いが難しいためでもある。またフッ化水素がガラスを侵すこともフッ素化学が遅れた原因であろう。
 そのフッ素が最初に注目を集めたのは、フロン類の冷媒としての発見である。これはフッ素化合物の揮発性が大きいという特長のためである。この性質を利用してフロン類が冷媒やスプレーの噴射剤として用いられている。一方、原爆の開発時において、放射性のウランを濃縮するためにそのフッ化物が用いられた。これもフッ化物の揮発性の大きさを利用したものである。しかし多量のフッ化物を扱うにはフッ素に対して安定な化合物が必要であった。原爆を作るためのマンハッタン計画の中身はフッ素化合物を如何にうまく扱うかの研究といってもよかった。そして薬品や熱に対して安定なテフロンをはじめとする多くの樹脂などが開発された(テフロンそのものは偶然デュポンで発見された)。
 とにかくマンハッタン計画によりその緒についたフッ素化学は欧米諸国を中心に大いに発展し、戦後の化学の一分野を形成し、国際会議も1950年代後半から開かれるようになった。しかし、日本ではフッ素はあまり省みられず、1967年に開かれたハロゲン化学討論会にフッ素に関する研究がわずかに数題あったのみである。この年、筆者はフッ素化学の研究を始めたが、当時はフッ素化学は幼年期であったように記憶する。フッ素化合物を合成するための方法は極めて限られ、フッ素化合物の性質はあまり知られていなかった。国内ではフッ素は恐いものという印象のみで、研究費も得られず苦労した。
 筆者の興味はフッ素化合物は他の化合物とどう違うかということと、フッ素化合物の新しい合成法の開発にある。前者について言えば、最近フッ素を含む医薬品が多数用いられているが何故有効であるかについては不明の点が多い。それらの解決には有機化合物としてのフッ素化合物がどのような反応性を示すかを明らかにする必要がある。またフッ素化学は最近急速に進歩しているとは言え、合成には困難な点が多い。これらを解決して、フッ素化合物を容易に合成できる方法を確立することが重要である。
 さて、フッ素の特徴の一つに、フッ素は水素についで小さく、有機化合物中の水素をフッ素で置換しても立体的にはあまり変わらないことが、フッ素化合物の生理活性を考える上での重要なポイントとされている。そしてこれに基づいて多くの医薬品が現実に開発されている。筆者もこのようなドラッグデザインに利用できる新しい合成反応をいくつか発表している。そして、最近合成反応の開発の途中で、CF3基はCH3基に比べて立体的にかなり大きいと考えねばならぬ証拠をつかんだ。これは従来の考え方を根本から変える重要な発見と考えている。そして、この方面のより精密な研究はコンピュータを用いてはじめて達成できるものである。現在分子量の小さい化合物についてはマイコンを用いてもかなりよい結果を得ているが、医薬品として用いられているぐらいの分子を扱える汎用の大型コンピュータとグラフィックターミナルは今後薬学部の発展のために必須の設備であろう。
 次のマイコンによる計算を用いて、テフロンとポリエチレンの違いを比較しよう。図は簡単のために、炭素数5個の化合物で計算し、マイコンに描かせたものである。実際はこれが左右に多数つながっている。ポリエチレンの水素(上下に丸く見える)の間はまだ少し余裕があり、規則正しく並んでいるのが分かる。水素同士がぶつかることもなく曲げられているので、ポリエチレンは柔らかい。一方、テフロンでは丸く見えているフッ素が大きく互いの衝突を防ぐために少しずつ捻れているのが分かる。こちらはさらに変形しようとするとフッ素同士がぶつかる。テフロンはポリエチレンに比べて固い理由である。これは計算結果であるが、実際のX線解析の結果とも一致する。図は画面をハードコピーしたために分かり難いが、実際はきれいなカラーグラフィックスである。
 次の写真は、人工血液として利用が考えられたフッ素化合物乳液と血液を入れ替える前と後の白ネズミの写真である。黒く写っている赤い目がフッ素乳液にすると白くなっていることに注目していただきたい。このようにフッ素化合物の利用は次々と考えられている。

〔後記〕
不燃、無臭、無害とされたフロンがオゾン層を破壊するとして禁止されようとしている(オゾン層を破壊するのはフッ素ではなく、フロン中の塩素である)。フロンの現在の需要の第一は電子部品の洗浄である。その代替技術は聞いてみると多くのエネルギーを必要とするようである。だとするとフロンの害はなくとも炭酸ガスによる地球の温暖化や原子力利用による放射性廃棄物の問題は残る。どうも現在の使い捨て的文化生活を続けるのは無理なようである。今日は8月15日、世界平和が説かれ、人類愛が叫ばれる。もし世界中の人が現在の日本と同じ割合で車を乗り回せば、炭酸ガスによる地球の温暖化などを言う前に、石油不足の大パニックになることは目に見えている。物質的面のみにとらわれない真の豊かさを求める哲学の確立が今こそ求められているのではあるまいか?
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秋の推薦図書特集

街路樹もすっかり色づき、街は秋色に染まっています。こんな秋の夜長は、暖かいコーヒーでも片手に読書三昧というのも楽しいものです。このコーナーでは、各学部の先生方に秋のお薦め図書を紹介していただきました。皆さんの興味に合わせて読んでみてください。

法と社会』(中公新書)
碧 海 純 一 著
法学部 助教授
木 村 秀 一

 法学部の専門教育を受けるための準備段階の書物として「法学入門」とか「法学概論」がある。しかし、入門のための書物でありながら、その多くは、はじめて法学を接する者には、やや専門的にすぎるきらいがある。本書は、そのような点を考えて、従来の専門的すぎる入門書のための入門書となることを意図して書かれた新しいタイプの法学入門書である。たとえば、「法学入門」は、たいてい「法とは何か」という項目から始まるが、従来の書物では、法学の立場のみからこの問題を論じているため無味乾燥な内容になりがちであった。ところが本書では、「法というものは、言語、神話、宗教、道徳、経済などと同じく、文化の一部分である。それゆえに、法の発展の過程やその社会的作用を十分に理解するためには、これらすべてを含めたものとしての文化全体を見渡すことができるような視点に立って法を眺めることが、どうしても必要になる」として、「文化とは何か」という項目から始まる。そして、文化とは人間に特有なものか、それともアリやミツバチなどの社会的昆虫、あるいは哺乳類や鳥類などの動物にも文化現象は見られるのかといった問題から出発し、文化現象全体の中で法現象を位置づけていく。このようにして本書は、初学者を違和感なく法学の世界に導いていくのである。従来の法学入門書になじめなかった人に、特に読んでいただきたい。

C.W.ニコルのわたしの自然日記(In My Nature)』(講談社)
C.W.ニコル 著  竹内 和世 訳
国際言語文化学部 助教授
赤 松 みのり

 著者は南ウェールズ(イギリス)に生まれ、のちカナダに渡り環境省技官として12回北極調査を行い、その間にもエチオピアの高原で猟区管理官の職についたりし、その後、武道の習得のために来日したという経歴の持ち主。現在、長野県黒姫に住み文筆活動をしているナチュラリストである。
 厳しく自然と対峙し自然を守るヨーロッパ人の目を通し、冷静にしかし暖かい心で日本人と自然をながめている。古来自然と親しんで同化してきた日本人であったが、現在貪欲なまでの同化の願望が自然をわがものと勘違いしその中に入り込み破壊していく――その姿に嘆き、このままではいけないと語りかける。金にものをいわせ東南アジアの熱帯雨林や国内の天然林を伐採し、エベレストの見えるところにホテルを建て、伊吹山の頂上近くまでも山をえぐりドライブウェイをつくる。動植物の生態系に狂いが生じ、クマやイノシシがエサを求めて里に下りれば銃殺せざるを得ない。ドキュメンタリー番組のテレビ取材班がアフリカ・ザイールのマウンテンゴリラや北海道のシカを撮影するためにでっち上げるストーリーを告発する。
 わたしたちは自然の厳しい現実を見ずに、人間の勝手さで美化した姿のみ追い求めているにすぎないことを思い知らされる。
 軽いユーモアと皮肉の語り口による摘発と憤りは原文(英語)の一節をみても簡潔で力強い。著者は春夏秋冬、海氷原の北から珊瑚礁の南まで、かくも自然に恵まれた日本は世界でも稀なるすばらしい国土を有していると、この国を愛しながら、日本人に警告している。そして自然とつきあうべき人間の知恵を教えてくれる。

新訳 経営者の役割』(ダイヤモンド社)
チェスター・I・バーナード 著
経営情報学部 助教授
伊 藤 研 一

 日本経済の構造転換の動きを背景にして、経営関係についても興味ぶかい書物が相次いで出版されていますが、秋の夜長をより知的に過すには、古典もいいかと思います。『経営者の役割』は、現代社会の様々な問題を考察する上で、どなたが読まれても興味の持てる論点を数多く提示してくれています。なかでも、「ストレス社会」日本において私達一人ひとりが直面せざるをえない組織とのかかわりの問題について、実にユニークにして鮮やかな考え方を示してくれています。組織と個人の問題に関心をお持ちの方には、特にお薦めしたい書物です。
 ところで、問題意識がなければ本はなかなか読めるものではありません。瑞々しい感性を眠らせることなく。問題意識をはぐくみ、そして勉強の面白みを味わうために、もっと社会の動きに関心をもってください。とりあえず、新聞をしっかり読むことから始めましょう。



シュヴァイツアーその生涯と思想』(新教出版社)
笠 井 恵 二 著
薬学部衛生薬学科 講師
夏 木 令 子

 『生命への畏敬』を実践するためにアフリカへ行ったシュヴァイツアー、1954年ノーベル賞受賞、ノーベル賞講演は『現代における平和の問題』であった。私は、小学生の頃、シュヴァイツアーの書『水と原始林のあいだに』を読み、心を熱くしたことを覚えている。そして、彼が、私の最も尊敬する人となった。
 ここに紹介する書は、『実践家』として多くの困難と挫折にもめげずに、若き日からの自己の信念を貫き通してその目標を達成し、90歳の死の日に至るまで赤道アフリカにとどまりつづけ、文明の恩恵に浴することのなかった人々のため奉仕しつづけたシュヴァイツアー、芸術家、思想家、実践家の3つを共存させての彼の生涯を通じて、あの偉大な献身の生涯は、深い思想に裏付けられたものであることを明らかにし、現代に生きる我々に、あまりキリスト教と接することのなかったような人々に、彼の思想に少しでも触れてほしいとの願いでもって書かれた本である。
 現代だからこそ、熟読し、自然の中での人間、生き物としての人間、人間としての倫理などなど考えざるをえないと思います。
 時間を作って、ご一読を!

自然の造形と社会の秩序』(東海大学出版会)
H.Haken 著 高 木 隆 司 訳
工学部経営工学科 助教授
山 本 啓 三

 本書は、Hakenが提唱する"Synergetics"の大変分かりやすい解説書である。Synergetics(シナジェティクス)とは、日本語では秩序形成の科学と訳されている。研究対象を伝統的な物理学の領域に限らず、生物・生命現象から社会・経済現象までを含めた領域において、秩序が如何に形成されていくのかを個々の構成要素の詳細ではなく、むしろ全体の構造を支配する一般原理を問題にしている。
 難しい数式等は使用せず、これまで物理において成功してきた幾つかの例(結晶成長、レーザー発振等)から始め、しだいに生物の形や進化、社会・経済現象、心理や人工知能にまで話が発展していく。物理学や化学で確立された原理がそのまま生物や社会・経済、はては私たちの精神面にまで拡張できたとしたら、それは偉大な業績である。
 工学部の学生は、この本から改めて基礎となる数学・力学(大学1、2年次程度)の大切さを理解することであろう。また、工学部以外の学生もこの本により、学問として洗練された数学・力学の構成法を適用し、各分野へ応用されては如何であろうか。Synergeticsとは、まさにその基盤となろうとする新しい学問であると思われる。

物語数学史』(新潮社)
小 堀 憲 著
工学部数学物理教室 助教授
中 脇 雄 治

 本書はバビロン、エジプト時代から現在にいたる数学の歴史やその時代的な背景そしてエピソードが物語的に書いてあるので、あまり堅苦しくなく、面白く読めるので一読をすすめる。特にこの場を借りて、「ニュートンがリンゴの実が落ちるのを見て万有引力を発見するにいたったか」をこの著者が推測しているのが面白いので、これを紹介する。月も地球も点であるとし、月は地球のまわりを円を描いて運行しているとする。Aにある月は1秒間に円の接線方向にBまで移動しているはずであるが、実際にはCにあるから、月はBCだけ地球に向かって落ちていることになる。計算するとBC=0.135cmに等しいことが分かる。他方、リンゴの実はガリレイの理論によって980÷2=490cmずつ落下する。したがって、(リンゴの実の落下の速さ)÷(月の落下の速さ)=490÷0.135≒3600=(60)が得られる。これはそれぞれの場所における引力の比であるから、地球がリンゴの実を引く力をGa、月を引く力をGm、とすると、Ga÷Gm=(リンゴの実の落下の速さ)÷(月の落下の速さ)≒(60)となるのである。地球の半径をr、地球の中心から月までの距離をRとすると、r≒6.37×10 8cm、R=3.84×10 10cmであるから、R÷r=3.84×10 10 ÷6.37×10 8 ≒60となるので、これと先に得た式とを比較して、Ga÷Gm≒60 2 =(R÷r)2 =1/r 2÷1/R 2 が出てくる。それで、ニュートンは「地球がリンゴの実を引く力と月を引く力とは、距離の自乗に逆比例する」と結論した。

大阪弁ちゃらんぽらん』(中公文庫)
大阪弁おもしろ草子』(講談社現代新書)
田 辺 聖 子 著
国際言語文化学部 講師
中 西 正 樹

 小説のなかに大阪弁をとりいれている作家は少なくありません。最近では藤本義一、阿部牧郎、宮本輝らの各氏がそれぞれの持ち味をいかした作品を発表しています。
 田辺聖子氏もまた然り。そのどの作品をとってみても、登場人物たちがかわす会話が実に自然で、ちょうど私たちが家庭や学校、職場ではなしている言葉(今の大阪弁)をそのまま活字にして、イキのいい、ユーモアたっぷりの小説を生み出しています。
 一口に「大阪弁」と言っても、昔と今では大きく姿を変えています。大阪、神戸、京都のあいだにも言葉づかいにちがいがあります。年齢や、性別、職業によっても微妙な使い分けが必要なのです。
 「ぼろくち」の項目では、「もうかりまっか?」の受け方として「ぼちぼち」「トントン」「泣き泣き」等の使い分けや、「ケチ」と「しぶちん」の違い、さらには上方ニンゲンの金銭感覚にまで話が及びます。「〜さらす」「〜こます」といった語尾のもつ猥雑さ、広く敬語として使われる「〜はる」のやわらかさ、「あかん」「わや」の飄逸さ……上方ニンゲンが繰り出す様々な言葉とそのニュアンスを楽しい実例や豊富な出典を交えて氏は語ってくれます。
 遠い外国の言葉を学ぶ一方で、あなたにとって最も身近な言葉にも目を向けてください。
 大阪弁て、なんやケッタイな言葉でっせ。

今回このコーナーで紹介しました図書については本館・分館に所蔵しています。このコーナーを読んで興味を持った人はどしどし利用してください。お待ちしています!

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図書館への声のたより

Daydream
――ある学術雑誌のつぶやき――

薬学部衛生薬学科 3年
岡 本 直 子

 私は、ある学術雑誌である。もちろんのこと今月号だ、わたしは枚方学舎図書館内学術雑誌室の棚にいるのだが、あまり学生諸君が来てくれないので大変寂しい思いをしている。研究員諸君、教授・助教授殿など、そして卒業研究のために4年生がちらほらと来てくれているが、あまり私のほうまでは目を通してくれていないのだ。過去の論文を調べたり、各自のテーマに関連した分野だけを見てくれるおかげで、私のほうには見向きもしない。だが、私はまだましだろう。英文の雑誌よりはまだ読んでくれる回数が多いのだから。
 この学術雑誌室にいる雑誌たちは昔、それぞれの分野における最新の情報、結果、発表、論文など学生にも興味がもてそうな内容のものばかりだ。我々の中から特に興味をもつ内容を自分自身で見出して、その分野の研究に全力を注ぐこともできるのだ。己のやりたい分野が分からないとき、ある教科が苦手であったり、取り組みにくいとき、我々を利用してくれれば良いのだ。我々は難しい専門書ではなく、雑誌なのだから。
 先月分も先々月分も私は新品同様である。一般雑誌であればこのようなことはありえないことだ。これほど悲しむべきことがあろうか。私はより多くの学生諸君に我々の存在を知ってもらい、かつもっと利用してもらいたいのだ。
 月刊サイエンスを読みながら、ふと学術雑誌室で眠り込んでしまったわたしは、気がつくとペンをもってこの雑誌たちの訴えを文章にしていたのだった。

私からみた図書館

工学部経営工学科 1年
山 崎  直

 私が大学の図書館に行こうと思ったのは、通学の電車の中の時間をウォークマンだけで過ごすのは物足りず、何か本を読もうと思ったのと、入学当初の何かの授業である先生が、「私は1日1ページ本を読む……」と言われたとき、「かっこええな」と思ったのが頭の隅にあったからです。
 最初に図書館を利用したとき驚いたのは、中学、高校と違って1人用の机がいっぱいあることと、コンピュータ端末があり、それに本のデータが入っているということでした。
 初めのうちは読みたい本も特になく、単なるひまつぶしのつもりでぶらぶら行っていた図書館ですが、ある日、机に座っていて文庫本の本棚に目を向けると、赤川次郎と書いた角川文庫の青い本が目に入りました。人気作家だという噂は聞いていたので、どんなもんなんかなぁと手にとってからというもの、毎日といっていいほど赤川次郎の本を探しに図書館に足を運ぶことになりました。ところが、本には限りがあり、何度文庫本の棚を探しても読んでいない彼の作品が見当たらなくなりました。このことで友達に文句を言っていると、友達が「学園内のほかの図書館から借りれるらしいで」と言うので、カウンターに行って聞いてみました。すると、端末機で自分の借りたい本を選び、そのデータをプリントして5階のカウンターに頼めばよいということでした。言われたとおりにすると翌日には頼んだ本が届いていました。
 まだ、入学して数カ月しかたっていないのでこういう図書館の一部分しか見ていませんが、これから何年間か、お世話になるので、もっといい利用法を探したいと思う今日この頃です。
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留学生からひとこと

工学部電気工学科 4年
ソンバツ・ヴィヴッタナサーン

 私が本学に入学してから早いもので3年半が経過し、来年の3月には卒業の予定です。この間、教職員の皆さんにはいろいろご助言をいただき、感謝しております。この紙面を借りてお礼申し上げます。
 さて、今回は日頃お世話になっている図書館について、意見を述べたいと思います。私の母国タイの図書館は一般的にもっと広く、植木など緑も豊富でゆったりとしています。本学の図書館にももう少し広さと緑がほしいものです。また、英語の専門書が少ないように思います。それに、カウンター付近のテーブルはいつもやかましいようですし、普通図書室(6F)の雑誌類は、使用しやすい3Fに移動してほしいと思います。
 最後に私が本学で出会った友達はごくわずかですが、私が卒業後帰国してもタイの留学生がいたことを忘れないでほしいと思います。そのためには、私の母国タイについてもっとたくさんの人に知ってもらう必要があるので、タイを紹介したビデオテープを図書館に寄贈します。参考にしてください。そして、日本とタイの両国がともにますます発展することを希望しています。

ソンバツ君から寄贈してもらったビデオは本館視聴覚室(4F)でみることができます。
ぜひ利用してください。

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NDC8版採用に伴い分類番号の一部が変わりました。
 本学の図書館資料は日本十進分類法(NDC)に基づいて整理されています。この分類の基本となるNDCは、学術・社会の発達・変遷に伴って改訂され、現在では8版を重ねています。
 図書館(本館)は、資料の分類整理にあたり、従来7版を採用していましたが、本年より分館同様8版を採用することとしました。
 8版での改訂点は少なく、採用に伴う影響は軽微です。ただ、注意すべき点として、従来電子工学(549)で包括的に取り扱っていたコンピュータ関係の資料が、今後ソフト関係は新設された情報科学(007)へ、またハード関係は同じく情報工学(548)へ分類されます。資料をさがす場合注意してください。
本館普通図書室の書架配置が変わりました!
 本館普通図書室(6F)では、資料数の増加に対応して書架ならびに雑誌架を追加配置しました。これに伴い、軽雑誌コーナーが拡充されたほか、「日本語・日本事情コーナー」が従来のカウンター前から北側壁面に移動しています。
後援会からワープロ新機種寄贈!!
 このたび、本学後援会から新機種のワードプロセッサー(東芝RUPOJW90B)8台が寄贈されました。新機種は機能面はもちろん携帯性も従来機種より優れたコンパクトタイプです。貸出も開始していますので、一度使ってみてください。

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