チャウシェスク処刑の日に想う
図書館長 布目 潮ふう
(国際言語文化学部 教授)
1989年は世界史の激動期であった。前半には、中国で第二天安門事件が起こった。5月4日の五・四運動70周年記念日のころから、北京の学生を中心とする中国共産党政権に対する批判の動きははげしくなり、ついに戒厳令の布告、6月4日の天安門広場への人民解放軍の出動によって、その動きは完全に弾圧された。後半には、ポーランドの共産党独裁の廃止、東ドイツの東西の壁の撤去、年末、ルーマニアのチャウシェスク大統領とその夫人エレナ副首相の処刑があった。これらの原因として共通しているのは共産党独裁政権に対する人民の抵抗がある。そしてその背後には、共産主義政権による計画経済の破綻、とくに消費財の生産が国民の要求に対応できなかった不満がある。
中国の春秋戦国時代(前770−前221年)は、近代のヨーロッパのように、多くの国が乱立し、その結果、各国の競争は激しく、各国の政治は厳しい環境にあった。その中で孔子(前551−前479)は、政治についていくつかの峻烈な言葉を『論語』のなかに残している、わが国では縄文時代のことである。孔子は弟子の子貢(しこう)の「政治とは何か」の問いに答えて、「食糧と兵(軍備)の充足と、人民が信(信頼)の心をもつこと」といい、さらに子貢は「食・兵・信のうち、やむを得ず、どれかを捨てねばならないとき、どれを一番先に捨てるか」とたずねると、孔子は「兵を捨てよ。次には食を捨てよ。どうしても捨て去れないのは、人民の信頼で、これがなければ、国家は成立しない」と言っている。また孔子はその祖国である魯(ろ)の哀公(あいこう)が人民を服従させる方法をたずねたのに答えて、「正しい人物を抜擢して正しくない人物の上にのせれば人民はすなおに服従しましょう。その逆であれば、人民は服従しません」と答えている。
最近において、米・ソが軍備縮小の方向に向かいつつあるのは、まことに喜ばしい。しかし共産圏の衣食をはじめとする消費財の生産が十分でないのは。その経済政策を改めねばならない。また共産圏諸国の中に、一党独裁の弊害が露出してきて、初期のような人民の信頼を失いつつあるところに一番問題があると思う。共産主義がよいか、資本主義がよいかと議論するのもよいが、その前に、政治とは何かという原点にたちかえり、古典をいろいろ読んでみてはいかがなものか。
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レジスタンスの女性達
法学部 教授
堺 慎 介
20世紀初頭、イタリアにも女性解放の波は押し寄せた。とりわけ、第一次世界大戦後には、当時のイタリア王国政府の受け入れるところとはならなかったとはいえ、多くの政党が女性解放・婦人参政権の実現をスローガンにかかげていた。ファシスト党もその一つであった。しかし、ムッソリーニは、政権獲得後、逆に男性優位の指導者原理をかかげてこの女性解放の波を押しとどめようとした。ムッソリーニ政権の反女性的性格は、原理的乃至イデオロギー的次元においてはもちろんのこと、制度的次元でも、たとえば1927年1月20日の勅令による教員採用に関する女性差別制度の導入に始まって、女性を社会的活動から閉め出すための立法をあいついで行った。ファシズムのこうした女性蔑視・女性差別的体質は、当然にも、多くの女性たちを反ファシズム陣営へと接近せしめずにはおかなかった。1943年に、イタリアにおける本格的な反ファシズム・レジスタンスが開始されたときには、すでに多くの女性たちがこの闘争に参加していた、反ファシズム諸勢力が全体として女性解放・男女の実質的平等の実現に高度の理解を示していたわけではないが、ファシストに比べれば、将来の展望を託すには十分であった。そうでなくとも、女性達には、ファシズムに反対せねばならぬ十分に強力な理由があった。ファシズムがもたらした戦争とその結果である食糧難・生活苦、そして、戦場に消えた愛する者たちの生命、女性たちに強いられたこれらの苦難から逃れる方法は、唯一、ファシズムを倒して平和を取り戻すことであった。
反ファシズム・レジスタンスは、綿密に計画され組織されたゲリラ的パルチザン的闘争であったと同時に、民衆に密着しその日常生活に深く浸透した、それ故に、自然発生的性質を色濃く残した不定形の運動でもあった。したがって、この闘争に参加した人数を確定することは、不可能であるが、確実に言えることは、われわれが想像する以上に多数の女性が参加していたことである。彼女たちの多くは、職場あるいは地域の組織に所属するか、そうでなければ、自発的あるいは潜在的な協力者であった。彼女たちがレジスタンスにかかわるにいたった直接的動機を確定することもまた困難である。しかしながら、まだ少女ともよぶべき若いパルチザン戦士たちは、その母親たちの影響についてしばしば語っており、学校で受けるファシズム教育を母親たちが打ち消していったことを示している。女性パルチザン組織が機関誌「我が女性達」「女性達の声」を出していたほか、諸政党が、女性読者を対象としたパンフレットを発行していた。行動党の「新しい現実」、共産党の「戦う女達」、社会党の「女性同志」「女性労働者達の防衛」、キリスト教民主党の「進撃」などがそうである。これらはすべて地下出版であり、定期的発行を建て前とするものの、実際には、随時随所で小部数を印刷して回覧されたようである。各地に保存されたこれらの資料の、粗悪な紙と不揃いな活字、それに、題字の下に書かれた「裏切り者ファシストに死を! 侵略者ドイツ人に死を!」という文字、そして、紙面のどこかに必ずある「秘密保持」と「部数少なし、回覧を乞う」の一見矛盾した呼びかけは、今なお当時の状況をなまなましく伝えている。
イタリア人民のナチス・ドイツに対する最初の反撃、1943年10月のいわゆる「ナポリの4日間」の主役は、進入したドイツ軍の横暴に怒り狂ったナポリのおかみさんと彼女たちに協力した子供たちであった。パルチザン部隊には多数の女性が含まれていたし、43年の9月から女性のみによって編成され始めたパルチザン戦闘組織には、最終的に6万9千人が加入した。農村の主婦たちは、乏しい食料をかきあつめてパルチザン戦士たちをもてなし、また、安全な隠れ家を提供した。勇敢な看護婦たちは、ドイツ軍の野戦病院にまで潜入して医薬品を手に入れ、あるいは、その病院の中に負傷したパルチザンの戦士たちをかくまった。各地の「解放委員会」とそれを構成する諸政党には、さまざまな重要任務に従事する多数の女性がいた。レジスタンス所グループの会合は、主婦たちの重大な犠牲と献身的な協力なしには開きえなかった。こうした活動の当然の結果として、数多くの女性がドイツ軍あるいはファシストによって処刑され、あるいは投獄された。
極めて残念なことは、レジスタンス諸勢力が、差別的動機からだけではないにしても、女性の役割をあくまで補助的なものにとどめようとし、女性の集団としての政治的発言の場を提供しなかったことであった。1945年4月25日、イタリア全土がレジスタンスの「総ほう起」によって解放されたのち、確かに女性の社会的・政治的地位は向上した。しかし、お人好しで頑固で陽気で議論好きで遊び好きで勤勉なイタリアの男たちは、市電を女性が運転しポルノ女優が国会議員になろうとも、今なお女性の社会的進出を喜ばないように見える。
<註>
@ レノ戦線におけるガリバルデイ第28旅団の女性兵士たち
A 武装してパトロールする女性パルチザン兵士
B 女性防衛隊(解放委員会補助組織)ボローニャ中央委員会機関誌(1945.1.28号)。見出しは、「女性達の声」の意味。見出し左下「裏切り者ファシストに死を」の意味。
C 負傷後、連合軍兵士に保護された伝令兵
@Aは、Volontarie Della Liberta(Allosio, M)、BCはStoria Della Resistenza(Secchia, P)
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図書館利用者アンケート調査結果
図書館では、一昨年の施設拡張以来その運営とサービスのあり方に対して利用者がどのように感じているのかを知り、今後の図書館運営の参考とするためにアンケート調査を実施しました。今回は、その調査結果の概要を報告します。
調査概要
1.調査日時 1989年11月20日(月)午前9時〜午後6時
2.調査対象 当日本館・分館に入館した学生利用者(当日の入館者数:本館1,438人、分館637人)
3.調査方法 入館者に調査用紙を直接配布
4.調査結果 回答件数461件
まず、調査結果から利用者の図書館に対するイメージを概括すると、本館・分館を通じ、相対的には、かなり好意的な評価を得ているようで大変うれしく思っています。また、調査に協力してくれた利用者の大半が週1〜2回の図書館利用者(図1)である点を考えれば今回の調査結果は今後の図書館運営に大いに参考になるものといえます。
以下、個別の項目についてみていきます。
図書館の利用目的(図2)では、「貸出」、「調査」を中心に「閲覧室利用」が上位を占めています。一方、図書館の印象(図3)を尋ねたところ、本館・分館で回答に若干差異が出ました。本館では、「明るい」「広い」「静かである」等のプラスイメージの回答が多かったのに対し、分館では、「狭い」「騒がしい」などのマイナスイメージの回答も目につきました。
つぎに、図書館利用の目的の達成度(図4)は、両館とも7割程度が目的を達成できた(できる)としており、資料配置、照明・空調、机・椅子等備品類についてもそれぞれ6割から9割の満足度を得ました。
一方、蔵書の充実度(図5)については、4割程度が「充実している」と答えたに過ぎませんでした。これは、一般利
用者の目には触れない保存書庫収納の図書資料などが当然考慮されていないこと等を割り引いても図書館としては大変気になる数字で、今後の検討課題といえそうです。
サービス面について、貸出・返却等の手続き(図6)では、両館とも8割以上が満足と大きい評価を得ています。さらに、所蔵検索機の利用(図7)では本館6割、分館では4割程度が時々利用すると答えており、検索システム利用の浸透度はかなり高いようです。まだ未経験の人も図書館資料を有効に使うためにはこの検索システムの利用は必須条件ですので、積極的に活用してください。
また、文献複写・資料の貸借など他大学等図書館との相互利用制度に対する認識はまだまだ低く、今後のPRの必要性が感じられます。同様に希望図書購入制度(図8)やワープロ貸出については、まだまだ利用者は一部の人に限られているようですので今後も継続的なPRを行っていきたいと考えます。
最後に図書館に対する希望を記入してもらいましたが、本館については蔵書の充実に対する要望が圧倒的に多く、分館では開館時間の延長、静かな環境にしてほしいといった内容が上位を占めました。これらの意見をについては、図書館でも今後の検討課題として改善に向けて取り組んでいきたいと考えます。
ただ、分館が騒がしいという点については、基本的に利用者のマナーの問題ですので、利用者の一人ひとりが他人の迷惑を考えて自覚してもらいたいことを付け加えておきます。
最後に、今回のアンケート調査に協力してくれた皆さんにこの場を借りて感謝の意を表します。
<図書館>
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利用者の声
図書館を利用して
国際言語文化学部 4年
井 戸 一 喜
私は大学に入学以来、頻繁に図書館を利用してきましたが、卒業を前にして感じたこととその利用法について述べたいと思います。
本学の図書館は他大学と比べると歴史が浅いため、卒業論文作成に必要な専門的な図書はほとんどといっていいほどありませんでした。しかし、大学図書館は相互利用協力を行っていますので、係の人に申し出れば、他大学図書館の資料も利用可能です。また、卒業論文にかかわらず、蔵書してほしいものについてはどしどし希望を出せばよいと思います。ただ書架に並ぶまで時間がかかりすぎだと思いますので、今後もっと早く配架できるよう改善してほしいものです。
そしてもう一点。私に限らず他の人も感じていると思いますが、購入図書の内容が非常にかたよっていると思います。私の希望を言わせていただくと、現代言語学(一般、個別にかかわらず)に関する図書、特に東洋諸語に関する蔵書は貧弱といえます。特に、中国語とインドネシア語は積極的に蔵書するようにお願いします。また、研究用図書として購入された一部の図書についても、学生が利用できるように同種の図書を購入してもらいたいと思います。
最後に、卒業論文完成のために、図書館の係の人に非常にお世話になり、ありがとうございました。
私の図書館利用法
経営情報学部 3年
明 石 華 苗
私が図書館を利用するのは、大体授業でレポートが出されたときに、それに関することを調べたり、資料をさがしたりする場合です。ここの図書館は、各学部に応じての専門書が多いので、調べものをするのには落ち着いて勉強することができ、あるいは、たまに安心しきってうつらうつらとなることのできる本当に良き環境であると思います。
このたび、私が一番お勧めしたいのは、本館4Fにある視聴覚室です。カセット、CDプレーヤー、VTRと何でもござれ。なかでも、一番嬉しいのは、ワープロが図書同様に貸出できることです。最近では、新機種のRUPOJW90Bが入り、ますます使いやすくなってきました。データを読み込んで、円グラフ等を作るのは下手なBASICのプログラムを作るよりも簡単にできます。レポートを書くときはワープロを使ってみてはいかがでしょうか?(ワープロを貸し出しするときの要注意は期限です。1日遅れると1ヵ月の貸出停止です。他の人にも迷惑がかかるし、皆さん期限は守りましょうね!)
図書館は本を読むだけでなく、VTRをみたり、CDを聴いたりもできる有意義な場所です。皆さんは、どのように図書館を利用しているのでしょうか? ぜひこの紙面を使って教えてください。
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The Name of the Rose
国際言語文化学部 講師
ショーン・マクガバン
Not too long ago I read a book entitled "The Name of the Rose". This novel was written by the famous semiotiocian Umberto Eco. The novel was later made into a film starring Sean Connery
The book is a Medieval mystery story, complete with murders and forbidden secrets. The location is a monastery library, and the in the climax of the story the library burns to the ground, a great tragedy since vast amounts of knowledge are forever lost. Of course in that period of Man's history, both in Europe and in Asia, universities were nothing more than libraries - the teachers were merely those who reminded of this book while watching the TV news a few nights ago. The commentator was talking about how the area around Kyoto University had changes recently. The area was much quieter and the used book stores were closing one by one. Students no longer got together with friends at coffee shops. These days' students are entertained at home by video rentals. Information can be obtained from TV or thumbing through magazines, or if it's academic information, by picking it up in a brief lecture. They can even access bits of information from computer.
Relying only on these bits of information is like eating fast food - it is not really satisfying and not nutritious. If that's all you get, your strength deteriorates. Reading "manga" is great for relaxing - like eating potato chips, but if that's all you eat… The library contains a great amount of knowledge. No matter what a person's interest is the library has books related to that person's interest. Even a very wealthy person could not afford to buy half the books in an average university library. I enjoy reading magazines and watching TV too, but I try to balance this with information and ideas obtained from books.
By the way, the book, "The Name of the Rose", is much, much better than the movie.
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最近入ったレファレンスブック
<本館>
・ 情報システムハンドブック 培風館 (R007.036)
・ コリンズフォンタナ現代思想家辞典 ブルロック他編 秀文インターナショナル (R103)
・ 岩波仏教辞典 中村 元他編 岩波書店(R180.33)
・ 図解 単位の歴史辞典 小泉袈裟勝編 柏書房(R203)
・ 新法律学辞典<第3版> 竹内昭夫他編 有斐閣(R320.33)
・ 統計学辞典 竹内 啓他編 東洋経済新報社(R350.33)
・ 社会保障・社会福祉事典 事典刊行委員会編 労働旬報社(R364.033)
・ 福祉制度要覧<4訂版> 社会資源研究会編 川島書店(R369.036)
・ 先端材料応用事典 産業調査会(R501.403)
・ 土木工学ハンドブック<第4版> 土木学会編 技法社出版(R510.36)
・ IEEE電気・電子用語辞典 岡村総吾監訳 丸善(R540.33)
・ 色材工学ハンドブック (社)色材協会編 朝倉書店(R576.036)
・ 詳解マーケティング辞典 徳永 豊他編 同文館(R675.033)
・ ラルース世界音楽事典<上・下> 遠山一行他編 福武書店(R760.33)
・ 日本人の体力標準値<第4版> 都立大学体育学研究室編 不昧堂出版(R780.18)
・ 事典映画の図書 辻 恭平編 凱風社(R778.03)
・ 講談社日本語大辞典 講談社(R810.33)
・ 朝日現代用語 知恵蔵 上田甚一郎他編 朝日新聞社(R813.7)
・ ジャンル別トレンド日米表現辞典 小学館(R833)
・ 最新文学賞辞典 日外アソシエーツ編 日外アソシエーツ(R910.33)
<分館>
・ 化学大辞典 大木道則編 東京化学同人(R430.33)
・ 英和医学用語大辞典<A−E F−Q P−Z>3冊 日外アソシエーツ(R490.33)
・ 実験動物学事典 藤原公策他編 朝倉書店(R430.33)
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