★ CONTENTS ★
読書の楽しみ
工学部機械工学科 教授
田中 吉之助
随筆や小説を読むことの素晴らしさは述べるまでもないし、先哲による導きや専門分野の参考書や教科書による教えを読み取ることもまた素晴らしいものであることは、日頃よく経験することである。
あれも読んでみたい、これも読んでみたいの欲が止まらない。ここ1、2年は、イスラエル、パレスティナ、アラブ等の中東もの、さらにまたトルコについてのものなどに興味をひかれることが多い。
読むことそのものの楽しさのほかにもいろいろの楽しさが与えられる。
終戦後、間もなくであったが、京都の関西日仏学館で宮本正清先生から、注目すべきフランスの作家としてジャン=ポール・サルトルの名前を教えていただいた。しばらくして「嘔吐」や「壁」の初めての訳文を見つけて手に入れることができた。どうだといわんばかりに友達に回覧したことを記憶している。新聞や週刊誌に掲載される新刊書の紹介文を読むのも楽しいものであり、見つける楽しみ、選ぶ楽しみが与えられる。
作者や作風を素人の目で眺めることも大変面白い。俵万智さんは数年前に歌集「サラダ記念日」を出され、昨年に歌集「かぜのてのひら」を出された。作品を読みながら、この間のいろいろな移り変わりを推察したりするのも大変楽しい。また、2、3年前、曽野綾子さんが「天上の青」を書かれた。曽野さんの思想とこの異色作をあわせ考えることも大変に興味ぶかいものがある。
私が若いころ、機械の分野の教官数人が、国井修二郎先生からA.G.Websterの偏微分方程式の本読みを指導していただいたことがある。先生の読み方は正に眼光紙背に徹するという読み方で、英文中の一字一句をおろそかにされず、そしてまた、何故にこのような文章が必要なのか、ここにはかくかくの文章を加える必要があるのではないかと厳密そのものであった。多くの文章を速く読むことが必要であるとともに、正確に完全に理解する精読もまた重要であって、これもひとつの楽しみを与えるものである。
私の専門とする分野は材料力学であって、この分野に関する本は数多いが、その歴史について記したS.P.Timoshenkoの"History of Strength of Materials"という本がある。これの訳本「材料力学史」は図書館にもある。興味をもつ学生の方が、その一部分でもゆっくりと楽しく読むことお勧めしたい。
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近年わが国に滞在する留学生や外国人労働者の数は、各種マスコミ報道のとおり急増しています。情報通信、輸送機関が発達し、経済のボーダレス化が進む今日、経済大国ニッポンも好むと好まざるとにかかわらず、国際化の波を避けて通ることはできません。このような国際化の進展の中で、日本語を学ぼうとする外国人が増加していることも事実です。今回は8月に英国で日本語教師を対象に教授法を指導された赤松助教授に「日本語の国際化」について寄稿いただきました。 | ![]() |
日本語の国際化
――英国バース教育大学の日本語教師夏期研修講座――
国際言語文化学部 助教授
赤松 みのり
<日本語学習者の急増と国際化>
日本国内で日本語を学習している外国人の数は、その目的の多様化に相伴い増加の一途を辿っている。このような国内現象から目を海外に向けても、日本語学習者の数は増しているといえよう。日本語学習者の能力試験も、日本語教育者のための教育能力検定試験も、長い言語教育史上これまであまり注目されていなかった日本語が、多くの国において「学習したい」、あるいは、「学習すべき」外国語となってきていることを証明している。その理由はなんであろう。
歴史をふり返ってみると、いつの時代にも世界に向けて出て行った国々の言語のタネは、新しい土壌に播かれ芽を出して成長していった。一言語が、自然にではなく人為的に播かれるとき、それは、今も昔も、一国の政治力や経済力と無縁ではない。20世紀も終わろうという今、日本語が、何世紀も前のイスパニア語やオランダ語や英語のような意味で播種され芽生えるということはありえないのが当然であろうが、それでは、どうして日本語の学習者の数が増えているのだろうか。このような現象がすなわちその言語の国際化なのだろうか。「国際的」とはどういう意味なのか。英語の"international"という語は「国々の間」、つまり、複数の国と国との関係という意識の上に成り立つ語であるが、そのあとに何か語を補ってみるとはっきりするかもしれない。国々の間で/に――「通じる」「行われる」「理解される」「存在する」etc.
一方、国際化というのは自分の国を失うことではないだろう。自国のアイデンティティーを確立し、自国を相対化でき、相手の互いの存在を確認しあえるようになることであるはずだ。このことは言語の国際化にもあてはまるであろう。日本人の意識の中に、日本語が世界の一言語であるということが確認され、英語、中国語、スワヒリ語、その他諸々の言語の存在が認められたとき、日本語が国際化したといえるのではなかろうか。日本語を一言語として客観したとき、おのずと日本語の国際化があるのだ。現在、日本語は、日本人により、世界の人々により、そのように受けとめられるようになったのであろうか。ちなみに、最近"international"のほかに"global"という表現によくぶつかるが、これは「多国間」というより「地球全体としての」視野の広さに基づく相互関係というものが注目されているからだと思われる。
<日本語教育に対する熱意>
このようなことを考えながら、さる8月、台風の余波で蒸し暑い日本を発って英国に向かった。降り立ったヒースロー空港、車でロンドン市内に向かう道々の景色、イギリスは初めての私にとって、それは「久々のヨーロッパ」という意識を吹き消し、まさに「英国」という世界であった。高層建築も近代的家屋も車窓にはなく、道筋に続くのは、くすんだレンガ色の住宅、同じように並ぶ屋根の上の煙突。どこの国でも玄関口は一様にモダンであるはずなのにこの国にはそれが見られない。この国で日本語が教えられているなど、なにか考え及ばぬような、つまり異文化をどのように受けとめているのか想像するに難い状景であったのだ。19世紀のロンドンもこのようであったといわれても不思議ではない、しかしながら、この国が、2、3世紀前に世界の海を制覇し、地球上のあらゆるところに出向き、アジア・アフリカ研究において名を成した学研者も多々輩出してきた理由があぶり出されてくるような気もした。
バース教育大のある古い町バースは、ロンドンから特急電車で西へ1時間余で、さらに西へ15分行くと歴史上名高いブリストルという港町である。バース(Bath)はローマ時代から有名な温泉地で、英語の「入浴」がbathであるのはよく知られている。歴代の英文学作品にもその名が度々出てくる観光地で今もにぎわっている。周辺はイングランド特有の低い丘陵地が起伏し、一面の牧草地に羊がじっと草を食んでいる。
今回の現職教師の研修には、北はスコットランドや湖水地方、ヨークシャー、西のウェールズや南のデボン、もちろんロンドンからも、約30数名の参加者が集まった。大半の教師は日本語以外の外国語(ヨーロッパ系)も教えていて、日本語が外国語教育の中のひとつになりつつあるという印象を受けた。片田舎の外国語センターやコミュニティーセンターの主として成人学級で日本語が教えられているという事実もあらためて知ったことであるが、それには一種のとまどいさえ感じられた。また、参加者たちの日本語・日本文化に関する識見、日本語教育への熱意にも圧倒される思いがした。
<おわりに>
昨年ロンドンをにぎわしていたジャパンフェアのようなものも一役かっているかもしれないが、目に見えないところで、日本や日本語が「国際化」の波に乗りつつあるのだという気がした。こういう教師たちが数少ない教材や情報の中で、地道に日本語や日本について教え、日本語の国際化の一端に貢献しているのだ。大学や研究機関での応用言語学や比較言語学の理論がなし得ることには限界があるが、現地の教育者の貢献は根づこうとしている。
日本語の国際化は、ひとり日本人だけでできることでもなければ、よその国の人々にまかせておけばすむことでもない。だれがタネを播いても互いに育みあってこそ単一国家的なものから国際的なものとなり、花咲き実を結ぶものなのだと思う。
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――秋の推薦図書特集!!――
各学部の先生方に恒例の秋の推薦図書を選んでいただきました。ご紹介した図書はすべて図書館にそろえてあります。秋の夜長は本を片手に知的空間へのナイトクルージングを楽しんでみてはいかがでしょう?(図書館)
『科学技術史概論』 山崎俊雄ほか編(オーム社) | 工学部土木工学科 助教授 平城 弘一 |
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本書は、特に専門分野に進む学生諸君に科学史と技術史に関心をもってもらうことを目的に書かれた科学技術史に関する入門書です。自然科学・技術と社会・歴史のかかわりがよく分かり、科学技術に関心のある方は楽しく読めます。 | |||
『ゾウの時間ネズミの時間――サイズの生物学――』(中公新書) 本川達雄著(中央公論社) | 工学部経営工学科 助教授 川野 常夫 |
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体の小さなネズミは数年、体の大きなゾウは100年近く生きる。このごく常識的な事実の裏には不思議な数理関係が成り立つという。進化の意味、生命の設計原理、体のつくりなどを、動物の身体的諸要素から読み取ろうとする試みは、これまでになく非常にユニークで面白い。また、車輪で動く動物が存在しないという観点から、現在の車社会の問題点や、完成されたかのように見える自動車技術の未熟さを説く場面は見事である。 本のタイトルもそうであるように最初から最後まで読者をひきつける不思議な魅力のある本である。 |
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『カオス――新しい科学をつくる』(新潮文庫) ジェイムス・グリック著(新潮社) | 工学部数物教室 助教授 小野 廣明 |
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この本は、二重の意味で面白い。ひとつは、科学において新しい分野がどのようにして発展していくかの物語として。毎日、教科書を通していわば化石的科学と対面しているものには、生きている科学の息遣いが聞こえてくることだろう。もうひとつは、表題のとおりの「新しい科学」のもつ魅力である。その革命性は、新しい自然観を生み出しそうな勢いだ。少し厚めではあるが、一気に読んでしまいたくなる本である。一読をお薦めする。 | |||
『心のデザイン――脳の仕組みを解明する』 朝日新聞科学部著(朝日新聞社) | 国際言語文化学部 講師 吉田 晴世 |
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人間は外からの刺激に反応して、感情を表わしたり行動を起こしたりしているが、その間、頭の中で何がどのように働いているのか? この疑問に答えるため、本書は脳の男女差、2カ国語を話す脳の働き、安らぎ感、学習能力、右脳と左脳の役割、人とコンピュータの違い、言葉とイメージなど、心の探求に欠くことのできないテーマについて平易に解説している。心の健康がますます大切な高度情報化時代を生き抜くための必読書。 | |||
『メッカ――イスラムの都市社会』(中公新書) 後藤明著(中央公論社) | 国際言語文化学部 助教授 冨尾 武弘 |
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今後の世界はどのような展開を見せるのか予測がつかない。長くヨーロッパ側から蔑視の眼で観られてきたイスラム世界は、この世界の新展開の中でどのような要素を占める可能性があるのか。今、古い歴史を知ることが求められている。 | |||
『独断! 中国関係名著案内』 高島俊男著(東方書店) | 国際言語文化学部 助教授 瀬戸 宏 |
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著者の高島俊男氏は、水滸伝を中心に中国古典文学から現代文学まで、幅広い学識をもっている人である。本書では、約50冊の本が紹介されている。とりあげられている本の範囲も、著者の知識の幅を反映して、『東京夢華録』のような千年近くも前の古典から、最近の『中国・グラスルーツ』などに至るまで幅広い。 特記しておきたいのは、本書が単に中国関係の名著紹介にとどまらず、この本自体が極めて面白い本であることである。中国について何を読もうかと迷っている人は、まずこの本を読んで、それから自分が興味をもった本に読み進んでいったらよいだろう。 |
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『思想と幻想』 鮎川信夫・吉本隆明著(思潮社) | 経営情報学部 助教授 柿沢 昭宣 |
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わたしは、知は悦びであり、また慰めでもある――たとえば、心に悲しみや怒りを覚えたとき、その起因する事情を了解すれば、心はある落ち着きを獲得する――と考えるものであり、この書物は、知の悦びのなんであるかをどの書物にも比類なく完璧に伝えてくれるものと信じる。それは、ちょうど幼児がレジャーランドに案内されたときのように、めくるめくおもしろさを提供してくれるはずだからである。 | |||
『成功の実現』 『盛大な人生』 中村天風述(日本経営合理化協会出版局) |
経営情報学部 講師 広田 真一 |
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この2冊は、日本人初のヨガの直伝者、中村天風師の講演をそのまま本に再現したものである。日本の政界・実業界・スポーツ界などの数多くの実力者が、中村天風師の教えを受けており、師の成功哲学を自らの人生に活かしている。素晴らしい人生を送りたい人に、ぜひお勧めしたい本である。 | |||
『北方領土問題を考える』 和田春樹著(岩波書店) | 法学部 講師 吉井 淳 |
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北方領土について聞かれると、この本を推薦する人が多い。以前推薦した人は、難しくて途中で放り出したそうである。友人にこの本を貸し1年以上経つがが、未だに読了できないのか返してくれない。たまにはこのような密度の濃い本を読み、正確な知識を得るのもよいのでは。 | |||
『EC統合・欧州連合入門』 藤原豊司・田中俊郎著(東洋経済新報社) 『入門・世界の民族問題』 山内昌之・民族問題研究会編(日本経済新聞社) |
法学部 講師 河原 匡見 |
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ポスト冷戦期の国際社会の大きな特徴のひとつは、国家の『統合』と『分離・解体』が並行しつつ展開していることであろう。そこで『統合』に関しては、市場統合からさらなる政治統合の段階を目指しつつあるECの複雑な動向を、初心者向けにまとめた『EC統合・欧州連合入門』を、また、『分離・解体』に関しては、世界中で発生している民族紛争について各専門家がコンパクトに解説した『入門・世界の民族問題』を推薦したい。どちらも、現在私たちが目の当たりにしている国際社会の激動を理解するうえで参考となるであろう。 | |||
『病院で死ぬということ』 山崎章郎著(主婦の友社) | 薬学部衛生薬学科 講師 河野 武幸 |
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ここ数年、癌研究は目覚しい発展を遂げた。しかし、治療方法に関する研究にはほとんど前進がみられない。姑息に過ぎないが、末期患者の終末期医療の改善のため、多くの試みがなされ、余命をいかに充実したものにするかが問われている。本書は臨床家の立場から、苦悶の経験を綴ったもので、身近な問題としての示唆を与えている。一読を勧めたい。 | |||
『科学と創造――科学者はどう考えるか』 H.F.ジャドソン著(培風館) | 薬学部薬学科 助手 坂根 稔康 |
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一風変わった書物である。科学者が困難な問題の解決法やユニークなアイデアをどのように考えて見いだしたのかを著名な科学者の発言を引用しながら、科学とは無縁であった著者が興味深く述べている。また、現在、未解決で重要な問題が「エピローグ――解決をまつ八つの問題――」として最後に挙げられている。 |
祝・学園創立70周年
われらの図書館――きのう・きょう・あす――
本学の設置母体である学園(学校法人大阪工大摂南大学)は今年70周年を迎えました。本学としては17周年ですが、70年という歴史の中の17年と考えるべきでしょう。その意味で、これを機会に図書館の過去と現在および未来を考えてみることにしましょう。
〔館名が語る歴史〕
時代の要請により誕生した「関西工学専修学校」(1922年創設)を源とする学園は、1975年に本学を開設しました。これと同時に図書館も開館しましたが、館名は今日まで3度変更しています。この名称の変遷(表1)が本学の成長の跡を物語っています。1979年は工学部の完成した翌年。1981年は国際言語文化学部・経営情報学部の2学部増設の前年。そして名実ともに「摂南大学図書館」として独立した1984年は、薬学部の設置により、C学部となった翌年です(なお、前年の1983年には枚方校地・薬学部専用校舎に枚方分館が開館しました)。
いわば昆虫が成長に合わせて脱皮し、名称を改めるように、図書館も名称を変更してきたわけです。図書館長という頭を持ち独立図書館としての体裁を整えて今年で8年目、まだまだ成長が続きます。次なる脱皮と、その後にくる図書館の名称は…? 期待の持たれるところです。
1975.4 | 学校法人大阪工業大学図書館 寝屋川図書室 |
1979.4 | 学校法人大阪工業大学図書館 寝屋川分館 |
1981.11 | 学校法人大阪工業大学図書館 摂南大学図書館 |
1984.4 | 摂南大学図書館 |
〔伸び、広がり、深まる蔵書〕
次に中味としての蔵書の成長振り(表2)を見てみましょう。開館時は図書2万5千冊、学術雑誌150種であったのが、今では図書32万冊、学術雑誌2500種と、13〜17倍の伸びを示しています。蔵書構成も当初は理工系のものがほとんどでしたが、今では哲学に始まり、歴史・政治・経済・法律・薬学・芸術・語学・文学などなどと、百花繚乱、本の森を歩くのが楽しくなっています。また、国際言語文化学部の設置や留学生の増加により、国際色も豊かになり、総合大学にふさわしい蔵書風景となってきました。
〔コレクションの形成〕
1991年から開始したコレクションの形成事業は、まだ芽生えたばかりです。これは学内外の教育・研究に寄与するとともに、蔵書構成の特色化を図ることを目的としています。初年度は、本紙(No.29)でも紹介しているとおり、「西洋古版日本関係地図コレクション」「インドネシア学地域コレクション」の計画2点が採用されました。今後の成長と活用が期待されます。
なお、コレクションの先駆けとして「藤田文庫」があります。これは藤田進総長・理事長が30年間の国会議員の間に収集・活用してこられたもので、1983年に寄贈を受けました。
〔誇りうる高い利用率〕
図書館の利用状況を、「貸出冊数の量」(表3)で見ますと、実に開設時の70倍近い伸び率になっています。もちろん学生数も509名から6,174名へと増加(12倍強)していますので、学生数1人当たりにすると伸び率は5.5倍になります。91年度の1人当たり7.1冊は本紙前号でも紹介しているように、全国私大平均(4.75冊)の1.5倍の貸出冊数を示しています。これは、学生諸君が図書館をよく利用し勉学に励んでいることのひとつの表われであり、誇りにしてよいことです。また、図書館からすれば、蔵書が質量ともに充実してきたとも考えられます。その理由のひとつとして、蔵書数に対する貸出冊数の比率※が2.5%から14.2%へと5.7倍の伸びを示していることがあげられます。
(※表2、3から算出)
〔館報『学而』のあゆみ〕
本紙は、図書館が法人図書館の分館から本学の図書館として独り立ちした1984年の秋、創刊されました。「学生・教職員・館員の3者で紙面づくりをし、その中からよりよい図書館が築かれていくことを願って」誕生したのです。以来、8年間で、今号を含めて、31号を発行し、61名の学生諸君、127名の教職員の方から寄稿をいただきました。内容は、図書館に対する要望、学生諸君への啓発、外国図書館の紹介、図書の紹介などなどと様々ですが、皆様方のご協力に感謝し、図書館の充実に一層努力していきたいと思います。
〔図書館のコンピュータ化、情報センター化〕
1982年から学園の全図書館(本学、大阪工大、工大高校)を対象とした「図書館総合情報管理システム(TLIS)」が稼動しました。このシステムは学園が独自に開発した図書館システムで、図書館業務のすべてを網羅したものです。また、学園内他館とはオンラインネットワークを形成し、学園内蔵書の共同利用を飛躍的に高めました。すなわち、本学図書館の蔵書は現在32万冊ですが、潜在的には全学園の80万冊を有しているといえるのです。
1987年には、文部省が設置する学術情報センターのネットワークに私立大学としては5番目に参加し、このシステムを利用して業務の一層の迅速化を図るとともに、利用者に提供する図書データの精度を高めました。
1992年からは同センターのILL(図書館間相互貸借)システムが稼動し、これを利用した学外機関への複写・貸借依頼サービスを開始しました。これによって、文献の入手が一段とスピードアップしました。
さらにこのシステムは、学園内ネットワークから全国のネットワークへと広がりを具体化し、潜在的蔵書数を学園内から全大学へと拡大しました。この傾向は今後ますます進展し、やがて世界中の図書資料が諸君の潜在的蔵書となることでしょう。
この他、学部情報データベースとして、JOIS、DIALOG(1983年)、STN−International(1987年)、UTLAS(1989年)などを導入し、情報検索サービスを行っています。
〔図書館施設の変遷〕
前述の館名の変遷と同様に図書館の施設も本学の発展に伴って表4に見るとおり変遷してきました。
寝屋川本館は、当初の低階層から現在の高階層に移り、見晴らしがよくなり、その点では好評を得ているようです。眼下には淀川の流れ、遠くには生駒、六項、比叡の山並みが見渡せます。また、枚方分館は京都・大阪にまたがる丘陵の一角に位置し、緑に恵まれた環境にあります。
しかし、発展を続ける本学には今の図書館も狭くなってしまいました。成長期の子供がいくら衣服を着替えてもすぐに小さくなってしまうようなもので、今また、新しい図書館が求められています。
\ | 年度 | 場所 | 面積(u) |
本館 | 1975 | 2号館 3階 | 729 |
1978 | 3号館 1〜4階 | 1,569 | |
1982 | 7号館 1、5、6階 | 2,016 | |
1988 | 7号館 1、3〜6階 | 3,796 | |
枚方分館 | 1983 | 2号館 2階 | 466 |
1988 | 2号館 1、2階 | 830 |
〔図書館の将来〕
はじめにも書きましたように、我々の大学も図書館も非常に若く、これまで伸びることに精一杯の努力を傾けてきました。現在もまだ成長段階にあるため、学生諸君からすれば、図書館に対する不満も多いことでしょう。しかし、図書館が「高度情報化社会における大学の教育と研究を支援する機関」としての位置づけを確立していきたいと考えています。図書館においても時代が要請するものにすばやく対応しなければなりません。
今後とも皆様の一層のご協力をお願いします。
(図書館)
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利用者の声
図書館についての対談
工学部建築学科 3年
大谷 壮史
「大学の図書館に対しての様々な問題点や改善点を見たり聞いたりする今日この頃ですが、それについてどうですか?」
『ええ、まず僕個人として図書館は不満の多い大学内において、比較的好きな場所のひとつなんです。イスの座り心地もなかなかだし、窓際の席から眺める秋の青空はさわやかですよ(笑)』
「そうですか。(当惑気味)それでは現状に満足しているわけですね」
『いや、そうはいってません。蔵書の少なさやスペースの狭さは、利用者なら誰でも感じていることでしょう。実際、あらゆる問題の改善には独立館の建設しかないことも聞いています。そこでどういう状況にあろうと、自分流にまずあるものを使いこなしていくことが大切だと思うのです』
「それは今の大学内のあらゆる場所についてもいえることですね」
『ええ、大学を自分流に使いこなすことで、自分の欲しているものを考えることこそ、4年間においてすべきことでしょう。そういう意味で図書館は、足がかりとしやすいわけです』
「なるほど」
『もっというなら、これからの時代において必要なことではないでしょうか。あらゆるものが過剰な日々の中で、意外とぼくらは忘れているような気がします』
「わかりました」
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