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図書館の情報ネットワーク
経営情報学部長
栗山 仙之助
社会の国際化・情報化が急速に進展している今日、摂南大学では10年来、他大学に先駆けて図書館業務のコンピュータ化に取り組み、現在では全国でも数少ないコンピュータネットワークを基幹とした総合的図書館情報システムが構築されています。
さらに、1986年東京にある学術情報センターの超大型コンピュータシステムとDDX回線によって接続され、目録情報、書誌情報などの入手、国立大学を中心とした接続図書館所蔵情報が双方向データ通信により可能となりました。このように図書館利用者のサービスに対するニーズにますます応えられるようなサポート体制が整ってきたわけです。
これもひとえに当大学図書館長はじめ職員の方々の努力の賜物です。
しかし、情報化時代にふさわしい内容とサービスの提供には、問題解決のための情報のほかに、直接利用の心にとめる情報があるわけです。たとえば、私たちが愛読した図書については、その情報内容だけでなく、表紙の装丁から本文の紙、活字、さらには手にした感触までが本のすべてです。そうした機能的図書の果たす役割は、人類が長い間に育て上げた図書という形で、今後も永遠に収集、整理、保存されていくことでしょう。これらの図書は単なる情報源ではなく、バランスのとれた人格、ひいては豊かな心を生み出す、人間にとってかけがえのないものと考えます。
そして、広く世界の図書館にまで目を向けなければならない今日、図書というメディアの持つ機能のうち、他のメディアでより便利に代替できる機能は、どんどんコンピュータ化されていくことでしょう。その中で情報ネットワークは、より健全な新しい技術を解明しながら、図書館界の情報を充実させることでしょう。
また、これらの情報が当大学にあります国際大学間学術情報ネットワーク(BITNET)や大学間ネットワーク(N-1NET)と結びつくことが教育・研究をより活発にするものだと思われます。
最後に、国際的な教育に寄与する総合的図書館情報のネットワークの構築と発展が大いに期待されるところであります。
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なぜ、エミリ・ディキンスン?
――アメリカが生んだ最大の女性詩人――
国際言語文化学部 教授
岩田 典子
大学院生のころ、ある日読んでいた詩選集から突然1匹の蝶が飛び出した。思わず体をのけぞって辺りを見回したが、蝶はいない。再びページに目をやると、そこに蝶の詩が書いてあった。
アメリカの詩人、エミリ・ディキンスン(1830-1886)という名前は聞いたことがなかった。当時、日本で出版されている人名事典で調べてみると、ボストンの西にあるアマストで生まれ育ち、旅先で会った牧師と恋に落ち、失恋してからは白いドレスを着るようになり、家にこもって1775編の詩を書いたとあった。
詩集から蝶が飛び出すほど、イメージも鮮やかな力強い詩を書く人が、本当にすねた世捨て人のような生活を送っただろうか。納得いかなかった。
修士論文にディキンスンを書くと話すと、教官はもっと大きな作家がいるでしょうと言われた。海の向こうでは「古今を通じて英語で詩を書いた最大の女流詩人」と評価を受けていたディキンスンも、日本では一部の詩の愛読者にしか知られていなかったのである。
19世紀中ごろのアメリカは近代の産業復興の時であり、信仰心の退廃を心配したディキンスンの祖父は正統的なキリスト教信仰を守るために私財をなげうってアマスト大学を創った人である。その意志を引き継いで大学の理事長に就任した弁護士の父親は下院議員も務めた。弁護士の兄も理事長を引き継ぎ、町の発展に尽くした。
父親の薦めもあり、アメリカで最も古い女学院(現マウントホリューク女子大学)に入ったが、学院長から洗礼を受けるよう強要されたとき、それを拒否して中退を余儀なくされた。それからは祖父が建てた大きな家で、体の弱い母を助けて家事を妹ともに引き受けて生涯を過ごした。両親や兄妹は次々に洗礼を受けたが、彼女はとうとうクリスチャンにならなかった。
悩みに悩んだが、自分の意に反することをするのは、「自らを辱める無分別なこと」と判断したからである。彼女は当時の腐敗していた教会に反旗をひるがえしたのであり、神を拒否したわけではない。
そのことは当時の詩壇の優雅でお上品な詩に迎合することなく、自分の詩を書くことにつながった。彼女は「私の詩は息をしているのだろうか」と自らに問い、定型詩のリズムを無視して、何より魂からほとばしり出るリズムを大切にした。しかし、評論家からは「まひしている」「抑えがない」といわれ、出版したいなら書きかえるよう求められた。それに対してディキンスンは「出版/それは人の/こころの競売」と反論した。
死後、遺品を整理していた妹がタンスの中から手書きの詩の原稿を小冊子にしたもの数十冊を見つけた。自分の書く詩が本当の詩で、必ず認められると信じていたディキンスンの、それは手製の詩集といえよう。それに編集者の手が加えられて、第一詩集が出たのは死後4年経っていた。
彼女の生原稿がそのままファクシミリ版で紹介されている詩集をみると、学生時代成績優秀でペン習字のお手本のような整った字を書いていた人の物とは思われない。自由気ままに字は踊り、また地を這う、と思うと鳥の足跡のように切れている。年齢によって変わる字体は彼女の心の遍歴そのものである。
忙しい家事の合間に書いた詩は女が自由に発言できなかった時代のものとは思えないほど、何物にもとらわれない柔軟で健康な心が脈打っている。保守的な田舎の因習などに惑わされることなく、社会の矛盾を鋭く突いており、生と死に深い洞察を示している。
そぎ取れるだけ言葉を簡潔にした硬質な文体には、ユーモア、皮肉、風刺、駄じゃれ、言葉遊びなどが巧みにできる言葉の魔術が仕掛けてある。そのために自然をうたっている詩が当時タブー視されていたセックスを大胆に描いた詩とも読め、臨終を書きながら激しい教会批判の詩であったりと、謎謎のような多面的な顔を覗かせて読者を驚かせ、楽しませてくれる。
人名事典の詩人像とは余りにも違うその落差を埋めるために、私は彼女の評伝を書こうと彼女の墓前で誓った。
何かを失った といつも思ってきた
初めて 考えられるようになったとき
奪われた と思った 何を かは分らなかったが――
余りにも幼くて 子供のなかに
悲しんでいる者がいるなど 誰も気がつかなかった
それでもわたしは 生きるのに精一杯だった
追放されて 失った領土を嘆く
王子のように
今では年をとり 少しだけ賢くなり
それだけ小心にもなったが
それでもわたしは そっと探し続けている
どこかにいったわたしの宮殿を
でも時々 わたしの額を
疑いが指のように触れる
天国の場所を わたしは
反対側に探しているのではないかと
P.959(岩田典子訳)
<引用文献>
The Poems of Emily Dickinson
(Thomas. H. Johnson ed, 1955, Belknap Press of Harvard Univ. Press)
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『ワイルド・スワン』上・下(講談社)
ユン・チアン(張戎)著<請求記号936C>
本書は日本の傀儡国家満州国から国民党統治、国共内戦、中華人民共和国の成立、文化大革命と激動の中国近代史を背景に著者の親子3代の苦難の人生が描かれている。
とりわけ、近年明らかにされた毛沢東指導下の中国で行われた数々の狂気に満ちた政策、中国の発展を20年遅らせたといわれる文化大革命、徹底した個人崇拝、大飢饉を招いた大躍進政策などが一民衆の視点を通して描かれており大変興味深い。
著者は毛沢東思想の中心を「はてしない闘争を必要とする(あるいは希求する)論理」と総括する。この論理によって狂気が演じられ、何千万人もの人々が犠牲となった。しかし、この悲劇も中国の4000年の歴史の中ではほんの一瞬の悪夢なのであろうか?(M.N)
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図書館利用統計(1992年度)
図書館では利用者の動向を把握し、図書館運営の参考にするため、前年度分の利用状況を集計し、各種統計を作成しています。
今回は、主として学生利用者に関するデータを中心に紹介します。
1. 利用状況総括データ
()の数字は前年度比 | ||||
項目 \ 館 | 本館 | 分館 | 計 | |
開館日数 | 269日 (+5) |
271日 (+2) |
―― | |
入館者数 <延べ> |
256,427人 (+14,104) |
148,093人 (-21,967) |
404,250人 (-7,863) |
|
貸出者数 <延べ> |
学生 | 20,817人 (+1,067) |
4,028人 (+845) |
24,845人 (+1,912) |
教職員 | 2,817人 (-2) |
712人 (-3) |
3,854人 (-5) |
|
貸出冊数 <延べ> |
学生 | 40,763冊 (+2,420) |
7,138冊 (+1,833) |
47,901冊 |
教職員 | 11,647冊 (+660) |
4,423冊 (+2,781) |
16,070冊 (+3,441) |
入館者数は本館で約6%の増加にもかかわらず分館が13%の減少のため、トータルで3年連続40万人台をキープしたものの、2%減とほぼ横ばいの数字となりました。
一方、貸出者数、貸出冊数については本・分館とも順調に増加し、トータルでもそれぞれ8%、10%の伸びを示しています。
背景には学生数の増加がありますが、利用者の皆さんによく図書館を利用していただいた証とも考えられます。
(注)本館入館者数に閲覧室(3F)利用者は含まれていません。
2.所属別貸出状況
所属別貸出差数では工学部の微減を除き全体に増加していますが、学生数の増加もあり、一人当たりの平均貸出冊数では法・薬・大学院が増加したものの、全体では前年同様(7.1冊)となりました。
これは、全国の私大平均5.14冊はクリアしたものの、国立大平均8.8冊、関西の大手私大平均7.39冊には今一歩というところです。
(注)他大学等の数値は「日本の図書館92」より算出
3.月別貸出冊数
本館では例年どおり9月、1月の試験期を中心に、分館では年間を通じコンスタントに利用されている様子がわかります。今年の特徴として、7月の貸出冊数が大きく増加している点が挙げられます。これは、休暇前の特別貸出が有効に活用されていることによるものと考えられます。
4.曜日別貸出冊数
本・分館とも1週間を通じコンスタントに利用されていることが分りますとりわけ、分館では土曜日の貸出冊数が平日以上である点が目を引きます。
5.分類別貸出冊数
本館・分館とも利用者の所属学部構成を反映して、例年どおりの分類別貸出比率となっています。前年同様では情報科学(007)の貸出が増加しており、総記の比率が上昇していることが挙げられます。
おわりに
以上、昨年度の利用状況を簡単に紹介しました。貸出冊数、貸出者数とも増加していますが、学生数が600名程度増加しているため、実質的には横ばいといえるかもしれません。今年度は新学科の増設もあり、一層学生数も増えます。狭い図書館が一層狭く感じるかもしれませんが、利用者の皆さんに迷惑をかけないよう、図書館としても最善を尽くしていきたいと考えます。
そして、今年度こそ実質的な統計数値は上昇することを期待しています。昨年以上の利用者の皆さんの来館をお待ちしています!
(図書館)
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92年度図書館コレクションの紹介(収書方法B)
『インドネシア学地域研究コレクション』
申請代表者
国際言語文化学部 助教授
深見 純生
本コレクションの第2年度の収集における特徴とのひとつは、19世紀半ばから20世紀はじめにかけての時期の旅行記、地誌の充実である。ここにその4点を紹介したい。
16世紀から18世紀のオランダ人の「大航海時代」の航海記、旅行記などの作品はリンスホーtネLinschoten叢書というまとまったものがあり、本学図書館はこの叢書を全巻所蔵する。しかし19世紀以後のものは収集に手間がかかり、全国的にもまだ比較的手薄なだけに、本年度の収集は、少数であるが、貴重なものである。
19世紀から20世紀はじめというのは、オランダ植民地支配が広がり、深まっていく時期にあたり、したがって、これらの資料はインドネシアの諸地域が植民地支配下に入る以前の、あるいは実質的な植民地支配が社会の内部にまで及ぶ以前の状況を写すものとして重要である。立場を変えて言い換えると、現在に直結するような深甚な社会変容がひきおこされる前の諸社会が、近代ヨーロッパによってどのように観察され、記述されたかを示す資料としても重要である。なお次の4点はいずれも当該分野における古典的な作品といってよいものである
(1)Roorda van Eysinga, Handboek der land-en volkenkunde, geschied-, taal-, aardrijks- en staatkunde van Nederlandsch-Indie(オランダ領東インドの地理、民族、歴史、政治の概観), 4 vols., Amsterdam, 1941-1850
(2)W.R.B. van Hoevell, Reis over Java, Madura en Bali in het midden van 1847(1847年半ばのジャワ島、マドゥラ島およびバリ島旅行), Amsterdam, 1849
(3)Reize rondom het eiland Celebes en naar eenige der Mouluksche eilanden(セレベス島およびモルッカ諸島旅行記), `s-Gravenhage, 1853
(4)Paul Sarasin & Fritz Sarasin, Reisen in Celebes Ausgefuhrt in den Jahren 1893-1896 und 1902-1903(1893−1896年と1902−1903年のセレベス旅行記), 2vols., Wiesbaden, 1905.
なにしろ南北1800km、東西5000km以上の広大な海域に大小14,000もの島々が広がっているのがインドネシアであるから、その全体をバランスよく視野に収めるのは必ずしも容易でない。この点で(1)が有用なのだが、その出版が20世紀でなく1840年代であるゆえに、その意味が大きい。オランダ植民地主義が領土拡大に熱心になるのは1850年代以降であって、それまでの領土は必ずしも多くないと同時に、どの地域が領土なのかは実はかなりあいまいである。そうして19世紀前半の状況が本書により一層明瞭になる。
(2)の著者ファン・ホエフェル(1812-1879)は、現地体験の豊富な東インド(インドネシア)通の知識人であり、自由主義者の政治家であった。本書はその旅行記だが、1847年というのは、まさしくバリ島の諸王国がオランダ人がバリについて知識を持ち始める最初期のものである。
(3)1850年に行われた2隻の軍艦による海からのスラウェシ(旧名セレベス)とマルク(旧名モルッカ)諸島訪問の記録である。これに対して(4)は有名なサラシン兄弟の北部、中部スラウェシ方面の最初の本格的な学術探検の記録である。
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留学生からのひとこと
私が見たもの、見えたこと
国際言語文化学部 3年
金 東淇(韓国)
その大学のレベルがどうかが分るには色々なことがあるが、その中でもその大学の図書館で感じることで、十分である。図書館がその学校の顔であるなら、本学の場合どんな顔か考えてみよう。
何よりも初めての印象は専門書が少ないことであった。日本では絶版の本が多いので、手に入る古い専門書が少ないのだ。私の考えであるが各教員室の専門書は図書館の本棚にあるべきだと思う。もし買えない本なら(先生の許可を得て)複写したらどうかとかんだ得る。また同じ専門書が1冊か2冊しかないのは理解できないのである。図書館には基本的な量の専門書と、借りることができる本と、できない本を複数用意してほしいのである。図書館の役割は必要な本が、探してあったらその価値を利用者も分ると思う。
図書館の利用者が少ないのは、学生たちの通学時間と個人的な忙しさからだと思うが、時々、友達グループで討論したりするのを見かける。もちろん、勉強のためにする人もいるが、いくら勉強のためであっても他の人々に迷惑をかけるのは考える必要があるでしょう。利用者を減らすのは利用者自身の問題から発生するから、考えてみる必要があるだろう。
文句がたくさんあるのは、そのぐらいの関心をもっているからなのだ。あと1年残っている学生時代を図書館と親しくなるように頑張ってみよう。
ありがとう図書館!
※ 専門書の充実については図書館でも努力していますが、「希望図書購入制度」を有効に活用してもらえば、もっと図書館に親しみが湧くのではないでしょうか?(図書館)
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心地好い図書館の椅子
「利用者の声」で図書館のことが褒められる際、必ずといってよいくらい、椅子のことが登場します。
先日、東京ステーションギャラリーにふらっと入ると、なんとこの椅子<バーテブラ・チェア>が展示されているではありませんか。ちょうど『エミリア・アンバース建築+デザイン展』の開催中でした。
1943年、アルゼンチン生まれのアンバースは、優れた建築家としてのみならず、工業デザインやグラフィックデザインの分野でも活躍する多彩なアーティストとして知られているそうです。この椅子も彼のデザインのひとつだったのです。
さて、<バーテブラ・チェア>の意味ですが、「バーテブラ」とは「背骨」のことで、人間の体の機能がそのままデザインに生かされており、座る者の様々な動きに自然に、そしてやさしく対応している、とパンフには書かれてありました。なるほど!(S.K)
利用者の声
夏休みの図書館
工学部電気工学科 3年
馬田 博司
僕はよく図書館を利用しています。その例をあげてみたいと思います。
僕は1年次に長期間、病気のために大学を休んでしまいました。その遅れを取り戻すために、去年の夏休みに、この機会に勉強をしておこうと思い、家ですることにしたのですが、家ではなかなかはかどりません。そこで、図書館を利用しようと思ったのです。
しかし、夏休み中の公立の図書館というのは、大学受験生や小さい子供などで結構混雑しているのです。そこで、少々距離があるのですが、大学の図書館を利用することにしました。大学の図書館は、人が少なく、いつにも増して静かで、クーラーがよく効いていて、外の騒音、熱気が嘘のようでしたし、公立の図書館には少ない専門書も豊富です。勉強の合間には、ビデオ鑑賞などもできて、本当に便利で快適でした。
「夏休みは、大学は休み。だから大学には行かない」と考えがちですが、意外に大学の図書館は穴場なのです。別に勉強に来るということでなくても、ゆっくりと優雅に読書と洒落こもうじゃありませんか? 暑い夏の日々が、違ったものになるでしょう。
※ たしかに夏休みの図書館は勉強にもってこいの環境だと思います(図書館)
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後援会寄贈図書について
――コレクション・学生用図書に500万円の寄贈!――
例年、本学後援会から図書館に対し、学生用図書を中心に寄贈いただいておりますが、昨年度も次のとおり寄贈いただきました。
ここに紹介すると同時に感謝の意を表したいと思います。
1.コレクション関係(収書方法A)
「スペイン黄金世紀希覯本」28冊 300万円
2.学生用図書関係
618冊 約200万円
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