←前号 次号→

CONTENTS

  1. これからの図書館(図書館長・田中吉之助)
  2. としょかんミニレクチャー<第24回> 多数決の法理(野口 寛)
  3. 図書館利用統計(1993年度)著作紹介
  4. 中国の底流に起きた変化(武吉次朗)
  5. 利用者の声
  6. 新入生ライブラリーツアー実施!!
  7. 後援会寄贈図書について
  8. 韓国の新聞「東亜日報」を購入!!

これからの図書館

図書館長
田中 吉之助

 4月から本学図書館長に就任いたしました。布目先生、田村先生、塙先生と何れも優れた碩学館長のあとをうけまして、甚だ浅学な私でありますが、皆様のご協力をいただきまして、図書館の充実に努めさせていただきたいと存じます。
 図書館は良質の多数の図書ないしは情報源をもち、利用者が最も利用しやすい状態にあることが望まれることは申すまでもありません。学術審議会学術情報資料分科会の部会で作成された「大学図書館機能の強化・高度化の推進について(報告)」(平成5年12月)によりますと、図書館資料の形態や利用方法の多様化に対応できる基盤整備と、高度なサービスを実現するための機能強化を緊急課題としております。この報告の中の「学術情報システムにおける大学図書館の役割」において、次の3つの注意点をあげております。第一は「大学図書館の学内及び学外との連携協力」、第二は「ネットワークと電子化情報の活用」、第三は「新しいニーズへの対応」であります。要するに、学内・学園内はもとより、周辺機関との連携を更に密にし、進歩する情報技術への配慮を怠ることなく、新しい大学ないしは社会環境に対応していくことが必要であると考えられます。
 40数年前の終戦後、私が大学院特別研究生でありましたころ、何回かアメリカ文化センター図書室へ通いました。新刊のアメリカの専門誌を読むためであります。最新刊はもちろん持出禁止であり、手書きでノートに書き写したことを思い出します。いろいろな文献のコピーを本学の図書館で手に入れることができます現在とは隔世の感がいたします。また、貸出が許された雑誌につきましては、接写、現像、引き伸ばし、焼付けを自分で行ったものでありました。現在はコピー機が普及しております。マイクロ・フィルムの活用が唱えられてかなりの時が経ちました。今後、CD-ROMなど、電子媒体資料がどのような役割を果たすのかを注目すべきでありましょう。
 図書の存在意義が不変のものであるのはもちろんですが、これからの図書館としては、時代とともに推移する環境の変化、媒体の変化に緊密に対応することが必要であると考えられます。また、田村先生、塙先生が、館長就任時の学而に独立図書館の実現への希望を述べられておられます。これもまた重要なことと考えております。
CONTENTSへ

多数決の法理

法学部 教授
野口  寛

 憲法21条に保障される表現の自由は、人権の中の人権だといわれる。それが他の人権にも増して重要視されるのは、それが民主主義体制にとって最も基本的かつ不可欠なものだからである。このことは、普通、価値相対主義を引き合いに出して説明される。
 価値相対主義によれば、存在・事実と当為・価値とは峻別されるべきであり、したがって、ある当為命題は論理的にはより上位の他の当為命題からしか導出され得ない。この論理的導出の連鎖の最上位の当為命題、すなわち究極の当為命題そのものの定立は、もはや科学的、客観的認識のなし得ることではなく、主観的な価値判断に属するものであり、したがって、質的優劣を決し得べき客観的基準を持たないところの、相対立する諸々の究極的価値が多元的に並存することが必然視される。民主制のもとでの「多党制」と「少数意見の尊重」および「多数決原理」が要請される価値論的根拠はこの点にある。
 これは、いうまでもなく、特定の究極的価値の絶対性、客観性、質的優位性を標榜する価値絶対主義(独裁制に通じ得る)とは相容れないが、反面、競合する諸々の「神々の闘争」(M.ウェーバー)の中で、この闘争に積極的に参入することまで断念してしまう価値懐疑主義とも一線を画する。多様な価値観が、それぞれの信念の貫徹をめざして実践の局面で、活発な相互批判を展開し、ときには妥協の道を模索し、必要に応じて多数決で全体の意志を決定する。しかし多「数」を制するということは、その価値観の「質」的優位を保証するものではないから、多数決で斥けられることになった少数意見を尊重しなくてもよいということにはならないし、数による解決はあくまでも暫定的なものでしかないから、将来の多数と少数の逆転という事態にはオープンでなければならない。少数派からの批判に積極的な意義が認められ、多数派による永久政権化工作が不当視される所以もそこにある。多数決制度や民主主義が不当な「数の暴力」を招きやすいのは、これらのことについての無理解に由来する。
 「数の暴力」を防止し、民主制を正しく運用するために、多数決の手木用についてどのような条件が課せられるべきか。いうまでもなく、多数決は全体としての何らかの意思決定を平和的に創り出すということ、そして、多数者の欲求を満足せしめるような意志をもって全体の意思とすることにおいてそれ自体極めて合理的な方法である。しかしながら、この合理性を犠牲にしてでも、多数決の適用を拒むべきケースがいくつかある。第一に、まず真理問題が挙げられるだろう。多数決は質的優劣を決し難い価値観の対立を、まさにその故にやむを得ず数をもって決しようとするものであるから、認識上の真理値が明白である真偽を争うケースについては多数決はなじまない。ひとりの真理の前には千万の謬見も認識上の何の価値も持たない。「それでも地球は廻る」(ガリレオ)である。第二に、人権に関わるケースに多数決の適用が排除されるべきことは、これまたいうまでもないことである。そもそも人権というのは、多数者に対する少数者の権利の保護ということを含意している。千万人といえどもひとりの人権を侵すことは許されない。人権の制約原理としての「公共の福祉」は、人権のこの特殊機能と矛盾しない原理として理解されなければならない。第三に、一票の実質的価値が多数派と少数派の間で著しい差を持つ場合には、多数決の適用は甚だ不当なものとなる。たとえば、ある黒人問題について白人(多数派)と黒人(少数派)との間で意見の対立がおきたとしよう。この問題は後者にとっては自己の生のあり方の問題であるが、前者にとっては部外者からみた他者の生の問題であるから、それぞれの意見のもつ重みは明らかに異なるにもかかわらず、この決着を単純な数の比較に委ねてしまうことは妥当ではない。これはR.ドウォーキンの所説であるが、個人の尊厳を基本理念とする民主制社会では、何びとも自己の欲する生を自由に営む自己決定の権利を有しており、他者の外的選好によってそれが否認されてしまうことは許されないはずである。その意味では、これは上記第二の条件と同根の原理を共有している(「公共の福祉」の個人主義的理解および功利主義――社会的利益の最大化志向――への批判)。
 ともあれ、多数決が民主制社会で期待されている本来の機能を十分に発揮し得るには、いうまでもなく、開かれた成熟した自由社会の存在が前提となる。多様な価値や利益が顕在化され、諸個人の豊かな選好モデルが提示され、自由な情報が入手できる、そういうフリー・マーケットが形成され、これに参加する機会が何びとにも保障されている社会でこそ、多数決の誤用や乱用の抑制が期待できるであろう。そういう意味では、各個人は相互に対立するものであるということが常態である、という受け取り方がコンセンサスとして確立し、多数決によって得られたひとつの意思決定への拘束に同意するのは、「等しきことを喜ぶ」ためではなく、「違いを楽しむ」ため(「違う(のに合意できる)ということを発見したい」)から(桂木隆夫)、というほどの理解が望ましい。
 自由社会のあり方については、「開かれた社会とその敵」という代表作に示されるカール・ポパーの社会哲学に教えられるところが多々あるが、近時英米を中心に、主としてリバタリアニズム(自由擁護論)の立場から、興味ある刺激的な論説が次々と発表されているので、それらにも注目されるようおすすめしたい。
CONTENTSへ

図書館利用統計(1993年度)

 図書館では、利用者の動向を把握し、図書館運営の参考にするため、毎年利用状況を集計し、各種統計を作成しています。
 今回は、主として学生利用者に関するデータを中心に紹介します。

1.利用状況総括データ

<総括表>
( )の数字は前年度比
項目 \ 館 本館 分館
開館日数 260日
(−9)
267日
(−4)
――
入館者数 235,330人
(−21,097)
158,864人
(+10,771)
394,194人
(−10,326)
貸出者数
(学生)
20,081人
(−736)
3,615人
(−413)
23,696人
(−1,149)
貸出冊数 39,576冊
(−1,187)
6,501冊
(−637)
46,077冊
(−1,824)
(注)本館入館者数には閲覧室(3F)利用者数は含まれていません。

 開館日数は、棚卸休館などの事情により、本・分館ともに減少しました。その影響もあってか、入館者数は分館で約7%の増加にもかかわらず、本館では約8%の減少のため、トータルで3年連続キープしていた40万人台の大台を遂に割り込み、3%減となってしまいました。
 また、貸出者数、貸出冊数も同様に減少し、それぞれ5%、4%減となりました。
 開館日数減少などの事情があるにせよ、学生数増加の背景を考えれば、少し寂しい数字となりました。

2.所属別貸出状況
 学部別貸出状況では、経情、国際を除いて軒並み減少しています。
 また、増加している学部についても、新学科の増設など母数となる学生数が増加しているため、ひとりあたりの平均貸出冊数でみた場合、横ばい、ないしは減少という結果になっています。
 したがって、全体では前年の平均7.1冊から6.4冊にダウンしています。これは全国の私大平均5.4冊はクリアしていますが、国立大平均8.5冊、関西の大手私大平均7.1冊には一歩及ばずといったところです。
(注)他大学等の数値は「日本の図書館93」から独自に算出

3.月別貸出冊数
 本館では、93年度から全学部の前期試験が9月に実施されたこともあり、全体的に利用が9月以降にシフトしている模様です。その影響かもしれませんが、7月の貸出冊数は前年比50%程度と半減しています。

4.曜日別貸出
 本・分館とも1週間を通じコンスタントに利用されていることがよくわかります。本館では月曜日の利用が多いこと、分館では土曜日に平日以上の利用がある点などが特に目を引きます。

5.分類別貸出冊数
 分館については前年とまったく同様の結果でした。一方、本館では前年に比べ、工学系、自然科学系の比率が低下していることが若干気がかりです。

おわりに
 以上、昨年度の利用状況を簡単に紹介しました。残念ながら、各種の数値が低下傾向にあることは否めません。はっきりした原因については図書館でもつかみかねており、現在調査中です。施設的な問題も影響しているのかもしれません。一例として、学生数は90年度を100とした場合、93年度は25%増、94年度は30%増と確実に増えています。
 一方、書架の増加などでひとりあたりの利用者用図書館面積は年々低下しています。特に本館では狭隘感が強くなってきていることも事実です。これらの施設構造的な問題は残念ながら簡単には解決できそうもありません。
 しかし、図書館では、今後もひとりでも多くの利用者の皆さんに足を運んで満足して貰えるよう、既存の施設・設備の増強をはじめ、各種サービスの充実に努めていきたいと考えています。皆さんの利用をお待ちしています!
<図書館>

CONTENTSへ

著作紹介

「盲流」――中国の出稼ぎ熱とそのゆくえ――
武吉次朗訳(東方書店)
中国の底流に
起きた変化
国際言語文化学部 教授
武吉 次朗
↑クリックするとOPACにリンクしています。

 中国で春節(旧正月)が過ぎると決まって起こる列車の混雑。もともとは日本の年末年始のように、帰省した勤め人や学生が都会に戻るためだったが、近年は出稼ぎ農民の大群が加わり、「早春の風物詩」と呼ぶにはあまりにもすさまじい状態となった。職を求めて大都市や建設ラッシュに沸く経済特区へ流れ込む農民は三千万人にのぼる、
 中国の国土はアメリカよりやや広いが、人口あたりの耕地は世界の平均の3分の1に過ぎない。しかも、耕地は年々減りつづけ、人口は増える一方。増産に力を入れても、肥料など資材の値上がりに追いつけず、全国2億所帯の農家の約半数が、実質所得減少の憂き目にあっている。
 他方、都会では日本と同様、若者が「3K」の仕事を敬遠しており、建築現場、港湾荷役、炭坑、清掃などでは出稼ぎ農民が主力になってきた。何年か頑張れば、農業ではとうてい得られない金額の現金を持ち帰り、家を建て、電気製品を買い、結婚資金にあてられる。マクロ的には、彼らが中国の市場経済化の根底を支えているとさえいえる。
 ところが、都会の人間は、出稼ぎ農民をうさん臭い目で見る。本書の題名「盲流」も出稼ぎ農民を指す代名詞で、蔑視する語感をもっている。
 本書はふたりのジャーナリストが出稼ぎ農民の実態を克明に追跡調査したルポルタージュである。イデオロギーに束縛されることなく、現実を直視し、因果関係を洞察した労作といえる。
 中国の農民は何千年も、黄色い大地にしがみついて生きてきたが、今ようやく、そこから離れて動き出した。中国の最底辺で、大きな地すべりが起ころうとしている。これにより、中国全土の活性化が始まる…。著者はこのことを熱情込めて訴えており、私も訳しながら感動した。
 テレビでは沿海地域の華やかな発展ぶりが取り上げられるが、中国社会の底流で起きている重要な変化も、ぜひ見据えておきたいと思う。
CONTENTSへ

利用者の声

図書館の賢い利用法

国際言語文化学部 2年
福井 紀裕

 僕はよく図書館を利用しています。なぜならこの学校には、本やCDやビデオがたくさんあるからです。また、所蔵検索システムや希望図書購入制度、「速図(はやと)君」といったものもあり、利用者が利用しやすい場となっているのも魅力です。
 所蔵検索システムは、摂南大学本館・分館、大阪工大、工大高校の4つの図書館のネットワークによって構成されているので、数多い本の中からでも、このシステムによって読みたい本を簡単に探し出すことができます。もし、探している本がこの大学の図書館になくても、他の3つの図書館にあれば借りることができます。また、書架に行かなくても、システムによってその本が貸出中かそうでないかなどがわかるので、非常に利用価値があります。さらに、書名が不明瞭でも前の一部分の単語、または文字を入力することによって、自分が探している本を含め、その本と関連した内容のものも出てくるので、いろいろな本を見てみたいときに便利です。
 検索の結果、自分の探している本がなかった場合には、希望図書購入制度や「速図(はやと)君」といったものを利用すればいいと思います。「こんな本が図書館にあればなあ」と思ったら、すぐにこの制度を利用してみてはどうでしょうか。もし、ブックセンターにその本があれば、「速図(はやと)君」を利用することによって、その日中に読みたい本が手元に届きます。
 最後に所蔵検索システムと希望図書購入制度と「速図(はやと)君」の3つをフルに活用することができれば、あなたも図書館の"通"になれるかも?

心地好い場所

薬学部薬学科 1年
佐野 あかね

 私は今のところまだ図書館をレポート提出の際の資料を調べるためにしか利用していない。すなわち、こんなに大きな図書館のほんの一角しか見ていないのだ。もちろん、まだ本を借りたこともない。それどころか、大学生になってからは、ほとんど読書というものをしていない。おまけに私の家には、今のところ、テレビもないし、新聞もとっていない。あるのはラジオのみ。これではどうしても情報不足になりがちだ。図書館には、新聞も揃っているし、おまけに雑誌までも少しはあるようだ。授業がない暇な時間などに図書館へ足を運び、情報不足を補っていけたらいいと思う。そして、たまには本でも借りて、読書にふけるひと時をつくりたい。これだけ多くの本を宝の持ち腐れにしておいては、本がかわいそう。一冊でも多く読んであげたい。
 また、図書館は、勉強をするにもとても快適な場所である。あまりに気持ちよくて、つい居眠りをしてしまうこともあるぐらいだ。窓からの日差しが心地好い。
 そんなわけで、図書館を私にとって、とても落ち着ける場所にしていきたい。自分なりの図書館活用法を見つけて、有意義な大学生活を送っていきたい。
CONTENTSへ

新入生ライブラリーツアー実施!!

 図書館では利用者教育の一環として、今年度から新入生対象のライブラリーツアーを企画しました。同ツアーは5月9日から11日の3日間(1日2回)にわたり、実施されました。施設紹介、端末機操作法まで、図書館利用のノウハウについて、毎回図書館員が引率して40分程度の説明を行いました。参加者の反応もおおむね好評で、「参加してよかった」との声が多く聞かれました。
 今年からの企画ということもあり、若干参加者は少なかったのが残念ですが、次年度は実施時期を早め、多くの新入生諸君が参加できるようにしたいと考えています。
CONTENTSへ

後援会寄贈図書について
――希覯書・学習用図書620冊の寄贈――

 例年、本学後援会から図書館に対し、学生用図書を中心に寄贈をいただいておりますが、昨年度も次のとおり寄贈いただきました。
 ここに紹介するとともに感謝の意を表したいと思います。

1.稀覯書
「バルトルス著作集」(9巻)250万円
※ 詳細については本紙No.37の紹介記事をご覧ください。

2.学習用図書関係
現代の政治学シリーズ<4>現代の政治思想
白鳥令、佐藤正志著(東海大学出版会)他610冊 約200万円

 なお、学習用図書611冊のうち、553冊が本館に、58冊が分館に配架されています。
CONTENTSへ

韓国の新聞「東亜日報」を購入!!

 図書館(本館)では、主に韓国からの留学生のために、6月1日から韓国の有力紙「東亜日報」の購入を始めました。国内外のほかの新聞と同じく、5階参考図書室に配架しています。
 現在、購入している外国語の新聞には、このほか、The New York Times(英語)、人民日報(中国語)、Uno Mas Uno(スペイン語)、KOMPAS(インドネシア語)などがありますが、今後も留学生の出身国を中心に購入紙を増やしていく予定です。
CONTENTSへ