摂南大学理工学部都市環境工学科
都市・地域計画研究室

阪神・淡路大震災建物被災状況のGIS情報化


兵庫県南部地震は多くの人々の命を奪ったのみならず、道路、鉄道、水道、ガス等都市の基盤となる重要な施設に甚大な被害を及ぼした。また、市民ひとりひとりの生活の場である住宅もその多くが全半壊し、学校や行政施設の避難所に一時30万人を越える人々が避難を余儀なくされた。地震による被害は広範囲に及び、被災した自治体は地域の被災の実態とその後の復旧の状況、課題を的確に把握し、迅速に復旧・復興計画を立案し推進していくことが求められた。そのためには、地域の情報を効率的に処理でき、高度な分析、多様な表現を可能にする地理情報システム(GIS)を活用することが非常に有効であると考え、兵庫県南部地震のその後の復興と被災の状況を記録し、これら資料をコンピュータに入力し情報を処理加工することにより、被災状況の正確な把握と復興を円滑に進めていくための支援情報の生成に取り組んできた。

具体的には次のような関連情報のGIS情報化を行った。

建物被災状況調査データ

日本都市計画学会関西支部と日本建築学会近畿支部の合同で行われた建物被災状況調査がある。建物の被災の程度を外観目視により「全壊または大破」、「中程度の損傷」、「軽微な損傷」、「外観上の被害なし」の4段階及び「全焼・半焼」の判定がなされている。この調査は、被災直後の2月を中心に被災地のほぼ全域にわたって行われたもので、建物被災状況の記録として、また復興計画を立案していく上での資料として非常に重要なデータとなっている(実際には一部臨海部や山麓部の被災地の調査漏れもあり、これらの地域については兵庫県都市住宅部計画課が補完調査を行っている。ここでは、これらも含めて建物被災状況調査データと呼ぶ)。

われわれは建設省建築研究所と協力してこの50万棟を超える建物の被災度データのGIS化を行った。基図としては各市の国土基本図(1/2500)のディジタルマップ(DM)データを利用した。

また、建物属性として必要となる建築年次や戸数、床面積、工法等情報は既存の地図等はなく、神戸市については住宅局の業務を支援する形で固定資産税台帳との突き合わせ処理を行い建物属性付き建物被災状況情報を神戸市域については作成した。

さらに、建物被災の関連情報ともいえる死亡者のデータを新聞記事等から整理し住宅地図をもとに被災建物を推定しGIS情報化を行った。

学術研究用であれば、下記のデータを利用いただけます。
メールにてお問い合わせください。


  1. 建物被災状況図(ラスター化)
    sample:三宮地域被災状況図(460KB・解像度を落としてあります)

    収録地域図面数容量
    16dot/mm神戸市域50600MB
    阪神間地域1(北)41492MB
    阪神間地域2(南)35420MB
    8dot/mm神戸市域・阪神間地域126378MB

  2. 神戸市町丁別被災度、建物属性集計データ

参考資料(発表論文等)

【題目、発表誌名、発行、発表年月】
  • 建物被災情報のGIS化とその分析、建設工学研究所報告第38-B号、(財)建設工学研究所、1996年11月
  • 神戸市域における建物被災状況とその分析、阪神・淡路大震災土木計画学調査研究論文集、土木学会土木計画学研究委員会、1997年9月
  • 神戸市域における建物被災状況、大震災に学ぶ-阪神・淡路大震災調査研究委員会報告書、土木学会関西支部、1998年6月
  • 建築物等の被害状況、阪神淡路大震災神戸復興誌、神戸市、2000年1月
  • 被災度別建物分布状況図、阪神淡路大震災復興誌、総理府、2000年2月