- 臨床からのニーズに基づく研究
- 抗がん剤投与時に生じる副作用を軽減できる治療・予防方法に関する研究
がん化学療法によって生じる脱毛は、患者さんに大きな精神的苦痛を与えます。当研究室では、フリーラジカル消去作用および抗酸化作用を有するエダラボン(EDR)という医薬品に着目し、脱毛を抑制できる方法の構築を目指して研究しています。具体的には、シクロホスファミド(CPA)という抗がん剤を用いて、実験動物に脱毛を誘導し、EDRの外用療法による脱毛抑制効果について研究しています。この効果が明らかとなれば、脱毛リスクのあるがん化学療法に伴う精神的苦痛を最小限に留め、より効果的ながん化学療法が実現できると考えています。また、抗がん剤投の投与によって、腎障害を生じることがあります。その腎障害の発症メカニズムを明らかとし、発症を抑制・軽減できる治療方法に関する研究を行っています。
- 医薬品の適応拡大を目指した研究
脂溶性薬剤の過量服用時の治療方法(解毒方法)に対する、脂肪乳剤の静脈内投与の有用性について研究しています。具体的には、三環系抗うつ薬であるクロミプラミンによる中毒症状を呈した実験動物に、予防的に脂肪乳剤を投与することで、体温低下や不整脈の発症が抑制されることが分かりつつあります。今後、治療効果についても明らかとして、臨床応用を目指したいと考えています。
- アトピー性皮膚炎に対する新たな治療方法の開発
- アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis)は、乳児期に発症し大部分が成長に伴って2歳程度で軽快します。 薬物治療についても選択の幅は広く、糖質コルチコイドの軟膏や抗アレルギー薬などが用いられています。
しかし、既存の治療方法では、成人期に至っても軽快せず、慢性化する症例が増加しています。 当研究室では、このような難治性アトピー性皮膚炎(ステロイド抵抗性アトピー性皮膚炎)に対する新たな治療方法の開発を目的に研究を行っています。
- アレルギー疾患(食物アレルギー、アレルギー性鼻炎等)に対して効果的に免疫寛容を誘導できる予防・治療戦略に関する研究
- 食物アレルギーやアレルギー性鼻炎の有病率は年々増加しています。これらのアレルギー疾患に共通して、効果的な予防・治療戦略の確立には高い臨床的ニーズがあります。当研究室では、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎等のアレルギー疾患モデル動物を用いて、効率の良い予防戦略の確立及びその予防的な耐性獲得機構の解明に基づく治療的かつ効果的な免疫寛容誘導戦略の創生を目指した研究を展開しています。
- 自己免疫疾患(多発性硬化症、関節リウマチ等)に対して効果的に完全寛解を導入できる治療戦略に関する研究
- 多発性硬化症や関節リウマチは、一般に発症後、寛解と再燃を繰り返します。既存の治療方法では、寛解を導入できても休薬すると再燃してしまうケースが多く、長期間の寛解状態(完全寛解)を導入できる治療方法の開発が待たれています。当研究室では、多発性硬化症、関節リウマチ等の自己免疫疾患モデル動物を用いて、完全寛解を効果的に導入できる理想的な治療方法の開発に関する研究を展開しています。
- 臨床研究
- 臨床施設との共同で、以下の研究を進めています。
1. ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)が中止あるいは減量となる要因とその予測因子に関する研究
2. 医薬品の供給不足が小児の服用に及ぼす影響の実態調査