論証の力を鍛えるフレームワーク「Q-IDEA」。
私はこれまで、第二言語習得のメカニズムやスキルに焦点を当てた研究に取り組んできました。しかし、研究を進める中で、単に言語を学ぶだけでは十分ではないことに気付きました。どれほど流暢に第二言語を話せても、それを使って何かおもしろいこと、役に立つこと、知的なことを表現できなければ、その教育は不完全だと感じます。これが、私がリベラルアーツを重視する理由です。第二言語習得とリベラルアーツ、この2つは鳥の両翼のような関係にあると考えています。一方が欠けていては、うまく機能しません。
リベラルアーツとは、ただ知識を得るだけでなく、自分自身を問い直し、変革するための学問です。そこで私のゼミでは、学生が単に英語を「話す・書く」のではなく、考える力を鍛えることを目標にしています。言語を使って、いかに魅力的で論理的な主張ができるか。そのために、学生たちには「Q-IDEA」というフレームワークを伝えています。「Q-IDEA」とは、「何か存在するのか(情報)」「存在するとしたら、それはいったい何なのか(定義)」「それは善か悪か(評価)」「どうすべきか(行動)」という4つの問いを軸に論理を構築する手法です。このフレームワークを用いることで、学生は問題解決能力を磨きながら、議論や論証を進めていくことができます。
例えば、「フードトラックは日本の起業家にとって有望なビジネスか?」というテーマなら、学生たちはまず、このテーマに関連する「情報」を集めます。「どんな食べ物が人気なのか?」「どんなフードトラックがあるのか?」「レストランと比べて、どれくらいのエネルギーを使用しているのか?」。そしてフードトラックがどのように機能しているのかを「定義」し、それがビジネスとして良いものか悪いものかを「評価」し、最終的にどのような「行動」を取るべきか考えることができます。このプロセスを通じて、単なる知識の詰め込みではなく、自分で考え、判断し、表現する力が養われていきます。
いずれ、第二言語習得と論証を統合した教材を。
また、私は第二言語を習得する過程そのものが、異文化理解の第一歩だと考えています。例えば、英語圏では物事を具体的に、詳細に説明する文化がありますが、日本語では曖昧さが重視されることが多い。このような文化的背景を理解することは、言語を学ぶ以上に重要です。私の学生たちには、言語学習を通じてこうした異なる価値観やコミュニケーションのスタイルを体感し、自らの考えを深めてほしいと思っています。
将来的には、「Q-IDEA」をさらに発展させて、第二言語習得と論証を統合した教材を作りたいと考えています。現在、この分野で論証の活用に注目した教材はほとんど存在しません。このギャップを埋めることで、学生たちがより深い学びを得られるような環境を作りたいと思っています。私の目標は、言語教育を通じて、学生一人ひとりが自分で考え、判断し、行動できる力を身につけることです。その力は、人生のあらゆる場面で役立つものになるでしょう。
(取材内容は2024年9月時点のものです)
摂南タイムズ一覧へ戻るこの記事に関連する学部をチェック
学科紹介
国際学部