研究プロジェクト
カチオン性オリゴペプチド固定化高分子を用いた低膜透過性分子の細胞内デリバリー/経粘膜デリバリー
低膜透過性分子の膜透過性を促進する技術は主要なDDS研究の1つですが、プロドラッグに一部の成功例が見られるのに留まっています。膜透過促進技術の開発が困難を極める中、現状を打破する可能性を秘めたDDSキャリアとして、膜透過ペプチドが精力的に研究されています。膜透過ペプチドはアルギニンやリジンなどの塩基性アミノ酸に富む10残基程度のカチオン性オリゴペプチドであり、マクロピノサイトーシスにより細胞内に取り込まれます。私達は、カチオン性オリゴペプチドを側鎖に化学結合させた新規高分子を創製し、「低膜透過性分子と混合して生体膜上に適用するだけで、膜上に留まる同高分子のペプチド鎖に対して繰り返し誘起されるマクロピノサイトーシスを介して、共存する低膜透過性分子のみの細胞内取り込みが飛躍的に促進される」ユニークなコンセプトに基づく細胞内デリバリーシステムを研究しています。現在、同システムを基盤とするDDS技術(生理活性分子の生体膜透過を非侵襲的に促進するデバイス)及び細胞機能制御技術(生理活性分子を細胞内導入するトランスフェクションツール)の2つの観点から研究を進め、前者では、粘膜投与型ワクチンの抗原キャリアとしての可能性を探究しています。
図.カチオン性オリゴペプチド固定化高分子による低膜透過性分子の膜透過促進機構