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第15・16回ライフサイエンスセミナーのお知らせ

理工学部生命科学科ライフサイエンスセミナー
摂南大学寝屋川キャンパス プチテアトル(10号館 3F)

第15回 2018年1月9日(火) 11:00~12:30

「マウス精子形成における特異的転写活性化メカニズム」

    木村 敦 先生
    北海道大学大学院理学研究院

第16回 2018年 1月16日(火) 11:00~12:30

「モデル植物シロイヌナズナを用いて虫こぶ形成の謎を解く」

    佐藤 雅彦 先生
    京都府立大学大学院生命環境科学研究科

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生命科学科主催のライフサイエンスセミナーが、2018年1/9(火)と1/16(火)にプチテアトルで開催されます。ご興味のある方は是非ご参加ください。 下記にご講演の要旨を掲載いたします。

マウス精子形成における特異的転写活性化メカニズム

北海道大学大学院理学研究院 生物科学部門
生殖発生生物学講座 木村敦

 精子形成は精巣で行われており、精原幹細胞が増殖して減数分裂に入り、減数分裂の結果できた精細胞が精子変態を経て精子になる過程のことである。その重要性から精子形成は、これまでも多くの研究がなされてきたが未だ謎の多い現象で、完全解明には至っていない。我々の研究室では、精子形成研究の中でも理解が遅れている「減数分裂過程での特異的な遺伝子活性化メカニズム」について解析を進めている。減数分裂では各段階で特異的な遺伝子が転写活性化されるが、先人たちによって「そのような遺伝子はプロモーターだけで十分に転写活性化される」という報告が相次いだこともあり、近年の研究は停滞していた。しかし、我々を含むいくつかの研究により、減数分裂特異的に活性化される遺伝子もプロモーター以外の調節因子を必要とすることが近年示されており、さらに詳細な解析が必要となっている。我々は、減数分裂の中でも特に重要な遺伝子が多数活性化される一次精母細胞に焦点をあてて、2つのマウス精巣特異的遺伝子座をモデルとしてその転写活性化メカニズムを解析している。本セミナーでは、精子形成と転写調節それぞれの基礎から、dual promoter-enhancerやlong noncoding RNAなど新たな調節因子を含む最新の研究結果までを解説する。

モデル植物シロイヌナズナを用いて虫こぶ形成の謎を解く

京都府立大学生命環境科学研究科 佐藤雅彦

 虫こぶ(plant gall)とは,昆虫が自身のすみかや餌とするためにホスト植物に形成させた異常組織である。虫こぶは,本来の植物には見られない高度な組織形態を持っていることから,昆虫の分泌する何らかの誘導物質により,植物の発生プログラムをハッキングすることで,植物の形態形成を高度に制御していると考えられる。しかしながら虫こぶ形成は,野外で行われることや虫こぶ形成昆虫の宿主選好性のため,実験室内でモデル植物を用いての研究がほぼ不可能であり,その形成メカニズムの分子生物学的な理解は,ほとんど進んでいない。
 我々は,シロイヌナズナ幼植物にゴール形成昆虫の虫体破砕液を処理した時の形態変化に注目し,モデル植物シロイヌナズナを用いた植物におけるゴール形成メカニズムの解析法の開発を試み,虫こぶ形成メカニズムを総合的に解析する手法,Ab-GALFA(Arabidopsis based-Gall Formation Assay)法の開発に成功した。Ab-GALFA法は,ゴール形成過程の昆虫個体の虫体破砕液(虫液)を作成し,虫液をシロイヌナズナ幼植物に処理した後,細胞の形態変化をオルガネラマーカー,植物ホルモンマーカー,細胞骨格マーカーなど様々な蛍光タンパク質マーカー発現植物を用いて,共焦点レーザー顕微鏡で観察,更に,次世代シークエンサーを用いて原因遺伝子産物の発現様式を網羅的に解析することによりゴール形成メカニズムを分子生物学的に解析する方法である。
 本講演では,リーフマイナーからゴール形成者に転換し,カンコノキ(コミカンソウ科, Glochidion obovatum)に膨らみのあるゴールを形成するタマホソガ(ホソガ科, Caloptilia cecidophora),ヒサカキ(モッコク科, Eurya japonica)に平たいゴールを形成するヒサカキホソガ(ホソガ科,Borboryctis euryae)とヌルデ(ウルシ科, Rhus javanica)に五倍子と呼ばれる巨大な虫こぶを形成するヌルデシロアブラムシ(アブラムシ科, Schlechtendalia chinensis)を解析に用いることで,Ab-GALFA法によって明らかとなった虫こぶ形成の分子メカニズムの実体について解説する。

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