研究テーマ:線虫を起点とした普遍的な生殖メカニズムの解明 研究分野:生殖生物学 研究のキーワード:線虫,マウス,生殖,化合物
研究内容:精子や卵子は配偶子とよばれ,配偶子が作られる過程やこれらが受精をする過程を含めて生殖といいます。不妊とは生殖のどこかに異常が起こる病気ですが,近年,不妊の検査や治療を受けているカップルの数は増加しています。しかし,不妊になる仕組みについては,不明な点が多く残されています。
私は,モデル生物である線虫(学名:Caenorhabditis elegans)とマウスを使い,「精巣を高温状態に晒すと雄性不妊となる」という現象について研究を行っています。線虫は体長が最大で約1 mmの小さな虫で,一見するとヒトとは全く異なる生物に思われますが,線虫で起こる様々な生命現象は,哺乳類を含む他の生物と共通しています。さらに,線虫の場合,精子の形成や受精能獲得反応が試験管内で再現できることに加えて,ゲノム編集技術によって特定の遺伝子が機能しない変異体を作ることができます。当研究室では,線虫を使ったスクリーニング系により,マウス精子の受精能獲得反応を引き起こす化合物を発見しました。さらに,その化合物を使った研究により,高温で飼育した線虫では,精子の形成・受精能獲得反応が起こりにくくなることを発見し,その仕組みが哺乳類と共通していることを示唆するデータを得ました。その為,線虫を使った研究により,温度感受性の雄性不妊の仕組みを明らかにすることができると考えています。
業績
総説 |
1. Shimada, Y., Kanazawa-Takino, N., Nishimura, H. (2023): Spermiogenesis in Caenorhabditis elegans. An Excellent Model to Explore the Molecular Basis for Sperm Activation. Biomolecules. 13(4), 657
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海外および国際学会発表 |
*ポスター発表
- Shimada, Y., Shiraki R., Kanazawa N., Honda A., Karuo Y., Omote M., and Nishimura H. DDI-4 is a compound enabling to elucidate the common mechanism underlying sperm activation in C. elegans and mice. Gordon Research Conference on Fertilization and Activation of Dvelopment, Holderness, USA, July, 2023.
- Shiraki R., Shimada Y., Kaneko M., Yamanaka M., Ohkura K., Hashiba Y., Hashimoto M., Karuo Y., Omote M., Nishimura H. The C. elegans spermiogenesis-inducing compound DDI-4 can trigger the acrosome reaction in mouse spermatozoa. The 23rd C. elegans International Conference, online, June, 2021
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国内学会発表 |
*口頭発表
- 島田 幸拡,西村 仁.線虫の精子形成における新規温度感受性経路にはtRNAメチル基転移酵素遺伝子nsun-2が関与する.関西線虫勉強会2024,大阪 2024年1月
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島田 幸拡,武村 采音,白木 梨央奈,吉田 彩夏,金澤 奈々,野村 寿々香,金田 拓海,金子 眞弓,山中 美貴子,橋場 優喜,本多 新,橋本 正陽,軽尾 友紀子,表 雅章,西村 仁.ベンジルアミン系化合物をプローブとした線虫とマウスに共通する精子活性化因子の同定.日本動物学会 第94回山形大会,山形 2023年9月
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島田 幸拡,西村 仁.線虫における新規の精子活性化経路にはtRNAメチル基転移酵素NSUN-2が関与する.関西地区線虫勉強会2023,大阪 2023年1月
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島田 幸拡,白木 梨央奈,金田 拓海,金澤 奈々,金子 眞弓,山中 美貴子,橋場 優喜,本多 新,橋本 正陽,軽尾 友紀子,表 雅章,西村 仁.線虫とマウスに共通する精子活性化関連因子の同定.日本動物学会 第93回早稲田大会,東京 2022年9月
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島田 幸拡,西村 仁.線虫精子とマウス精子の活性化に関与する共通因子の同定.線虫研究の未来を創る会 2022,オンライン開催 2022年8月
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白木 梨央奈,島田 幸拡,金子 眞弓,山中 美貴子,大倉 光平,橋場 優喜,橋本 正陽,軽尾 友紀子,表 雅章,西村 仁.線虫をスクリーニングで使用した男性不妊治療薬・検査薬のシード化合物の同定.日本ケミカルバイオロジー学会 第15回年会,オンライン開催 2021年6月
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白木 梨央奈,島田 幸拡,金子 眞弓,山中 美貴子,大倉 光平,橋場 優喜,橋本 正陽,軽尾 友紀子,表 雅章,西村 仁.線虫精子を活性化する化合物DDI-4はマウス精子における先体反応を惹起する.第67回日本生化学会近畿支部例会,オンライン開催 2021年5月
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白木 梨央奈,島田 幸拡,金子 眞弓,山中 美貴子,大倉 光平,橋場 優喜,橋本 正陽,軽尾 友紀子,表 雅章,西村 仁.化合物DDI-4は線虫およびマウス精子を活性化する.2021年度日本動物学会近畿支部研究発表会,オンライン開催 2021年5月
*ポスター発表
- 島田 幸拡,白木 梨央奈,吉田 彩夏,金澤 奈々,野村 寿々香,金子 眞弓,山中 美貴子,橋場 優喜,本多 新,橋本 正陽,軽尾 友紀子,表 雅章,西村 仁.ベンジルアミン系化合物DDI-4をプローブとした線虫とマウスの精子活性化における共通因子の同定.第46回日本分子生物学会年会,神戸 2023年12月
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島田 幸拡,軽尾 友紀子,表 雅章,西村 仁.ベンジルアミン系化合物DDI-4をプローブとした線虫とマウスに保存されている精子活性化機構の探索.線虫研究の未来を創る会 2023,神戸 2023年8月
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島田 幸拡,白木 梨央奈,金澤 奈々,金田 拓海,金子 眞弓,山中 美貴子,橋場 優喜,本多 新,橋本 正陽,軽尾 友紀子,表 雅章,西村 仁.tRNAメチル基転移酵素遺伝子nsun-2は線虫精子の活性化に関与している.第45回日本分子生物学会年会,千葉 2022年12月
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白木 梨央奈,島田 幸拡,山中 美貴子,金子 眞弓,大倉 光平,橋場 優喜,橋本 正陽,軽尾 友紀子,表 雅章,西村 仁.DDI-4は線虫精子とマウス精子を活性化する化合物である.第43回日本分子生物学会年会,オンライン開催 2020年12月
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島田 幸拡,金子 眞弓,山中 美貴子,田島 達也,大倉 光平,橋本 正陽,表 雅章,西村 仁.薬理学的および遺伝学的解析による線虫の精子形成における新規経路の同定.第42回日本分子生物学会年会,福岡 2019年 12月
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