ベトナム社会科学院Phan Cao Nhat Anh(ファン・カオ・ニャットアイン)博士のゲスト授業―国際学部の授業「世界を学ぶ」― 



UPDATE 2024-12-29

国際学部の授業「世界を学ぶ」は「世界と向き合うために必要な考え方の基礎」を身に着ける1年生の必修科目です。2024年度は、「世界の食文化」(担当:加来准教授)、「地理学的な観点からの考察」(担当:大谷講師)、「日本と東アジア諸国との関係」(担当:森准教授)の3つを主なテーマとし、それぞれの教員によるオムニバス形式で進めました。 

2024419日(金)の授業では、ゲストスピーカーとしてベトナム社会科学院南アジア・西アジア・アフリカ研究所副所長(Deputy Director General, Vietnam Institute for South Asia, West Asia and African Studies (ISAWAAS)  , Vietnam Academy of Social Sciences (VASS))のPhan Cao Nhat Anh(ファン・カオ・ニャットアイン)博士をお招きし、「日越(日本ベトナム)外交関係」というテーマでオンライン講義をしていただきました。 

ニャットアイン先生は、日本社会論(主に福祉政策)がご専門で、日本研究のキャリアは20年以上です。近年は、西南アジア諸国のみならず、アフリカを含めた国際関係についても活発に研究をすすめていらっしゃいます。VTV(ベトナムテレビジョン)を始めとした主流メディアのニュース番組にも多数出演され、特に日越関係や東アジア国際関係について解説をご担当です。 

ニャットアイン先生は講義で、2024年が日越外交関係樹立50周年であり、ベトナムにとって日本は「包括的戦略的パートナーシップ国(外交上最も重要視される2国間関係)」あることに触れ、大学1年生の理解が深まるように日本語で平易にお話しくださいました。ベトナム中部の都市ホイアンに16世紀末に形成された日本人街や有名な「来遠橋(日本橋)」(ベトナムの貨幣2万ドンに描かれている)の存在、近代における日越の人的交流、1940年の日本軍によるベトナム占領、ベトナム戦争下での日本との関係、日越国交正常化後の日本のベトナム支援(政府開発援助や医療援助など)に至る日越関係史の話を学生は興味深く聞いていました。質疑応答の時間には、学生がベトナムにおけるポップカルチャーの状況を尋ねるなどしました。 

講義後、学生からは「ベトナム語を少し学んで、ベトナム人と交流してみたいと思いました」「普段ベトナムについて触れることがなく、今日のこの機会でベトナムと日本の外交関係について知ることができ、親しみが湧いた。これからもっと深く知って行きたい」といった感想が寄せられました。   [文・写真:(国際学部准教授 森類臣)] 

韓国国際文化交流振興院にてチョン・ギルファ院長と面会しました! 



UPDATE 2024-12-29

森類臣准教授が韓国国際文化交流振興院を訪問しチョン・ギルファ院長と面会しました! 

 2024215日に国際学部国際学科の森類臣准教授が、韓国国際文化交流振興院(한국국제문화교류진흥원The Korean Foundation for International Cultural Exchange, KOFICE)を訪問し、チョン・ギルファ院長(20242月当時。20244月に同院退職。現在、東国大学韓流融合学術院院長)と面会しました。今回の面会は、ジャーナリストの李寅雨さん(元『ハンギョレ新聞』記者)の紹介で実現しました。 

韓国国際文化交流振興院は、文化を通した国際的な相互交流のため、研究・企画・ネットワーク構築を推進している機構です。民法および関連法規に基づき文化体育観光部の主導で2003年に財団法人として設立されました。なお、チョン院長は、元々MBCMunhwa Broadcasting Corporation문화방송/文化放送)の敏腕プロデューサーであり、「人間時代(인간시대)」「PD手帳(PD수첩)」「今だから言える(이제는 말할 있다)」など、韓国では知らない人はいないであろう、非常に有名な番組制作を指揮しました。MBC退職後に同院院長に就任しました。 

 面会では、チョン院長が韓国国際文化交流振興院のビジョンと業務について概略を説明してくださいました。また、具体的な研究成果と企画についてはナム・サンヒョク運営管理部長が詳細を教えてくださいました。森准教授が今後の研究教育活動における連携を提案したころチョン院長は肯定的な返事をしてくださいました。本学との本格的な交流発展が望まれます。例えば、学生を引率して同院を訪問し、同院の業務や成果について国際的な文化交流という視点から教えてもらうこともできるのではないでしょうか。これは、韓国のポップカルチャーや日韓関係に関心のある学生にとっては非常に良い学びになるでしょう。 

同院は現在、パク・チャンシク院長のもと事業を展開しています。 

 

【左からナム・サンヒョク部長、森准教授、チョン・ギルファ院長、李寅雨さん(20242月) 

 

チョン・ギルファ院長と森准教授(20242月) 

 

韓国国際文化交流振興院 

韓国語サイト https://kofice.or.kr/index.asp 

英語サイト http://eng.kofice.or.kr/ 

韓国MBC訪問記:スタジオ見学と関係者インタビュー[森ゼミナール]



UPDATE 2024-12-29

2024年2月15日(木)に、私たち森ゼミナール3期生は、韓国MBC(Munhwa Broadcasting Corporation/문화방송/文化放送)を訪問してスタジオ見学をしました。森ゼミナールによる韓国現地調査の一環です。壇国大学のカン・ネウォン教授(メディアコミュニケーション学部教授)の紹介で実現しました。日常生活では絶対に見ることのできないものを見ることができ、新しい学びへと繋げることができました。

スタジオ見学

 いつも何気なく見ていた音楽番組のセット作りをされている場面では、こういった裏方と呼ばれる多くの方々がいてこそ成り立つものだと再確認できました。同時に、やはり私達が映像として見ているものはほんの一部に過ぎないということに気付かされました。

【スタジオでの番組準備の様子】

 また、ニューススタジオを見させて頂いた際には、ニュースカウンターに一人一人座っての記念撮影もできました。そこにもまた、当然ではありますが、ディレクターや照明担当、カメラ担当の方々がいて、毎日のニュースを届ける準備をしていらっしゃいました。

【ニューススタジオでの撮影(森先生とゼミメンバー)】

音響室では、それぞれの機材の説明を丁寧にしていただき、部屋のひとつひとつにしっかりと意味があることがわかりました。

今回のMBC訪問で改めて学んだことは、どこの場所でも、目立つところ目が行きがちですが、その裏ではいろいろな人たちの支えがあり、そのサポートがあってこそ成り立っているということです。一つの番組を作るのにもたくさんの人が関わっていて、一人でも欠けたらできない仕事であり、これはどの業界でも同じことが言えると思いました。

今回MBCスタジオ見学を案内してくださったキム・テホン先生(メディア解説者、元MBC職員。現在、白石芸術大学教授)含め多くの方々に深く御礼申し上げます。私たち摂南大学外国語学部(国際学部)森ゼミナールは、今後も学び続けたいと思います。ありがとうございました。

パク・ドンヒョク部長(デジタルニュース編集チーム)へのインタビュー

同日に、私たちは、デジタルニュース編集チームのパク・ドンヒョク部長のインタビューも行いました。そこでは、色々はお話を聞きましたが、私(太田)が1番印象に残っていることを1つ紹介します。私がパク部長に「プロデューサーという仕事を長年務められて大変だったことは何でしょうか」ということをお聞きした時に、「人の死に携わるニュースを扱うときです」とおっしゃられていました。私はプロデューサーの仕事は忙しいだけでなく、あらゆる現場に向きあう仕事なのでストレスがかかる仕事だと考えていました。私のこのような想像をはるかに超えて「人々の死に触れる内容を扱う度に深く考える」とおっしゃったことが一番衝撃的でした。また勤務してきた20年を通して1番変化したと感じたことはメディアの多様化だそうです。

 お忙しい中、私たちのインタビューに真摯に答えてくださったパク部長に心からお礼を申し上げます。

【インタビュー後にパク・ドンヒョク部長と囲んで撮影】

(摂南大学外国語学部 森ゼミナール 池上愛利・太田彩夏)

2024年度後期留学帰国者報告会を開催しました



UPDATE 2024-12-19

カナダ、マレーシア、スペインに留学した学生による報告会を、2024年12月10日(火)5限に開催しました。報告会には国際学部の学生と教員が参加し、半年間の留学を終えて2024年度前期末に帰国した学生4名がそれぞれ15分程度の報告と5分程度の質疑応答を行う形式で進行しました。

カナダ西海岸のバンクーバーにあるサイモンフレーザー大学に留学した学生は、授業で語学だけでなくカナダ文化も学び、豊かな自然環境を活用したアクティビティやフィールド調査に参加した経験を紹介しました。後輩への実践的なアドバイスとして、クラスメートやホストファミリーと交流した自身の経験から、意義のある留学にするためには「日本についての知識を深めておくこと」や「積極的に挑戦する姿勢」が重要であることをと強調して述べました。

続いて、同じくカナダのカルガリー大学に留学した学生が発表を行いました。カルガリーはバンクーバーから東に約1000kmに位置し、ロッキー山脈と隣接した自然豊かな環境にあります。この学生は、ホームステイを快適に過ごすためのポイントをホストファミリーの視点から説明してくれました。また、現地学生とのジムでの交流やオーロラに遭遇したこと、さらには大谷翔平選手のプレーを間近で観戦したり、有名選手のファウルボールをキャッチしたエピソードなどを披露し、会場を大いに盛り上げました。

マレーシアの首都クアラルンプール近郊のスバンジャヤにあるサンウェイ大学に留学した学生は、学生寮に滞在しながら英語集中プログラムに参加し、留学生活の詳細を語ってくれました。寮内のスチューデントラウンジは、勉強や料理、交流の場として重要な場所であったこと、また、国内ではコタキナバルやマラッカを訪れ、近隣諸国ではタイやシンガポール、インドネシアのバリ島を旅した体験を紹介してくれました。最初はマレーシアの英語に戸惑った体験や多種多様な食文化に親しんだことも印象的なエピソードとして語られました。

最後に、スペインのサラゴサ大学に留学した学生が発表しました。サラゴサはマドリードとバルセロナの中間に位置し、イスラム文化の影響を受けた建築が多く残る歴史的な都市です。この学生は、留学期間の大半はサラゴサ市内で過ごし、7月から8月にはピレネー山脈の麓にあるハカのキャンパスで集中講座に参加しました。ハカでは、寮生活とホームステイを通じて多国籍のクラスメートと交流を深めたほか、スペイン語教師を目指すスペイン人とも親しくなり、スペイン語が飛躍的に上達したと報告しました。

今回の海外留学報告会では、4名の学生がカナダ、マレーシア、スペインでの多彩な留学体験を発表しました。語学学習や異文化理解、地域の自然や食文化への親しみ、現地での交流を通じて得た成長や学びが具体的に共有されました。参加者は、報告者との活発な議論を通じて異文化への関心と理解を深めるとともに、留学への意欲が刺激される機会となりました。

(国際学部教授 中西正樹)
関連ページ:
 サラゴサ大学[スペイン]

 カルガリー大学[カナダ]

第10回国際文化セミナー「マレー世界で考える/マレー世界を考える」



UPDATE 2024-12-17

 2024年12月10日に、第10回国際文化セミナー「マレー世界で考える/マレー世界を考える」を開催しました。第1回からZoomを用いたオンラインセミナーの形式で実施してきましたが、今回は対面での開催となりました。

 講師は、上田逹先生(摂南大学国際学部教授)です。今回のセミナーでは、「マレー世界で考える」という観点でサバ州(マレーシア)のカダザンドゥスンの人々を中心に、半島地域のマレーシアとは異なるボルネオ島側のマレーシアにおける文化・芸術動態に注目することで、民族という範疇を超えてサバ州という領域を意識した「サバ人・サバ文化」が実体化されていく社会文化的な動態についてお話しいただきました。また、「マレー世界を考える」という観点から、広義のマレー世界の周縁に位置していると言いうる東ティモールにおけるテトゥン語に見られるマレー語・マレー世界の言語的・文化的・歴史的影響を取り上げることで、広義のマレー世界の広がりを示すとともに、その先に展開する今後の研究の可能性についてお話しいただきました。限られた時間でしたが、内容の濃い発表でした。

 今回のセミナーの内容については、下記のリンク先の記事内容とも相関していますので合わせてお読みいただければ幸いです。

関連リンク

 長期海外出張 マレーシア(上田教授)(https://www.setsunan.ac.jp/intlstudies/w/2024/10/長期海外出張%E3%80%80マレーシア(上田教授)/)

(文責:金子正徳・国際学部准教授)

English Speech Contest 2024を実施しました



UPDATE 2024-12-09

<English follows Japanese>

2024年12月3日(火曜)5限に、今年度の英語による3分間スピーチと、物語の暗唱コンテストを開催しました。たくさんのエントリーがあったため、2つの教室でスピーチ部門(個人)と、暗唱部門(ペア)を同時進行で始めました。

3分間スピーチ部門の参加者は、コンテストが近づくにつれ、構内で英語スピーチを自主練習する姿もあちこちで目撃されていました。コンテストの時間に残念ながら履修授業がある学生は、事前に担当教員の監督の元で録画をし、動画でコンテストに臨みました。初めての試みでしたが、2件あった事前録画の参加者はいずれも自然にカメラに向かって語り掛け、ライブでの発表者と互角に戦っていました。

暗唱部門の参加者は全員が1年生で、一生懸命に練習してきたのですが、発表の順が来て客席を前にスポットライトに照らされると、緊張で頭が真っ白に。外国語で暗唱し、なおかつ物語を情感をこめて人前で語るのは、なかなかの難題です。しかし、役に合わせて声色を変えようとしていたり、大事なところは2人で声を合わせて言ってみたり、またト書きに合わせて非言語の表現を取り入れたり、それぞれのペアが工夫を重ねていることが見てとれました。

発表が早く終わった暗唱部門の参加者は、そろって別室のスピーチ部門に合流し、最後の5名の発表を聴くことができました。そこで1年生たちが目にしたのは、上級生の格段に表現力にあふれたスピーチでした。発音も、なめらかさも、ジェスチャーも、3年次には自分もあんなふうになっていたい、と強く思ったそうです。

入賞者はこちら:

スピーチ部門

 1位 Hinano Inoue ”Something I Learned about Life”  

 2位 Runon Yamaguchi   “How to get Love”

 3位 Yumi Ueno   “My Dream for the Future”

暗唱部門

 1位 該当なし

 2位 Akito Furuya & Yuki Ishiya  ”The Fox and the Leopard”

 3位 (2組)   

              Kojiro Kochi & Kaisei Nakao ”Belling the Cat”

         Matsukiyo Hazuki & Kaiki Nakayama  “The Fox and the Leopard”

参加者へのコメントとして、暗唱部門のジャッジのサッジャド・プールオミッド先生からは、緊張を乗り越えて何度でも挑戦する勇気と、伝えたい内容を自分のストーリーとして語る重要性が語られました。また、スピーチ部門のジャッジのマイケル・ハーキー先生からは、自動読み上げやAIが発達してきた現代でも、イソップ物語の時代と変わらず、人が言葉を語って起きるコミュニケーションの価値について言及がありました。

なお、この日は英語科の教職課程の3年生が、コンテスト参加者としても、またイベント進行のアシストにも活躍しました。学年横断イベントの実施を通して、外国語を学ぶ側と教える側の視点を持つ時間になったようです。

On Tuesday, December 3, 2024, during 5th period, this year’s 3-minute speech and story recitation contest in English was held at Setsunan University. Due to the large number of entries, the 3-minute speech category (individuals) and the recitation category (pairs) were held simultaneously in two different classrooms.

Participants in the 3-minute speech category prepared meticulously by working on their scripts in advance. As the contest approached, participants were seen practicing their English speeches here and there on campus. Students who unfortunately had classes during the contest time were able to record their speeches under the supervision of their teachers and were able to participate in the contest on video. This was the first time this had been attempted, but both participants in the two pre-recorded sessions spoke directly to the camera without notes and were evenly matched with the live presenters.

The participants in the recitation category, all of whom were first-year students this year, had practiced hard, but when their turn to present came and the spotlight shone on them in front of the audience, they were so nervous that their heads went blank. It is quite a challenge to recite a story in a foreign language and tell it with feeling and gestures in front of an audience. However, it was evident that each pair was trying their best to use a different tone of voice for each role. They said important parts in unison and used gestures that enhanced the text they were reciting.

Participants in the recitation category, who had finished their presentations early, moved to the room hosting the 3-minute presentations to hear the last five presenters in that category. There, the first-year students saw the much more expressive speeches of the second-year and third-year students. Their pronunciation, fluency, and gestures encouraged the first-year students to improve their speaking skills so that they would become more like the experienced speakers in the 3-minute category.

 

Here are the winners:

3-minute Speech Category

 First Place:     Hinano Inoue, “Something I Learned about Life”  

 Second Place: Runon Yamaguchi, “How to Love”

 Third Place     Yumi Ueno, “My Dream for the Future”

Recitation Category

 First Place: No Prize

 Second Place:    Akito Furuya & Yuki Ishiya “The Fox and the Leopard”

 Third Place:     (2 pairs)  

                               Kojiro Kochi & Kaisei Nakao “Belling the Cat”

                          Matsukiyo Hazuki & Kaiki Nakayama “The Fox and the Leopard”

In his comments to the participants, Sajjad Pouromid, the judge for the recitation category, emphasized the importance of overcoming nervousness, having the courage to try again and again, and telling your own story. Also, Michael Herke, the judge for the 3-minute speech category, mentioned the value of students speaking in their own words, just as in the days of Aesop’s Fables, even with the development of automated speechreading and AI.

Note that third-year students in the English teaching program were active participants in the speech contest, both as contest participants and as assistants in facilitating the event. It seems that this event provided an opportunity for students from different grades to gain perspectives from both sides of learning and teaching foreign languages.

(和文記事:齋藤安以子 / 英文記事:トッド・フーパー)

 

 

第9回「国際文化セミナー」を開催しました



UPDATE 2024-12-05

2024年11月9日(土曜日)に摂南大学国際学部主催の第九回「国際文化セミナー」をオンラインで開催しました。今回は「ヨーロッパ世界へのいざない」というテーマで、本学部の教員2名が講演しました。


まず、原田豪講師が「欧州統合における制度への注目――問いかけることから」というタイトルで、現在の研究テーマにつながる研究上の問いの連鎖について話しました。学部時代に滞在した南米のペルーで見聞きしたことが、地域統合という具体的な研究テーマに結実して、欧州での研究活動への誘いとなったことが紹介されました。より具体的には欧州共同体の法的制度の成立と、加盟国におけるその運用について、原田講師が実証的な研究を進めてきたことが示されました。また、その後の質疑応答を通じて、欧州連合における法的基盤整備にかかる使用言語についても理解が深まりました。

次に、池田景子准教授による「英詩の読み方――P. B. シェリーの「西風に寄せるオード」」と題した講演がありました。池田准教授が学問的関心を寄せてきた英国の詩人シェリーの略歴を簡単に紹介したあと、彼のイタリアでの創作活動について説明しました。そして、シェリーの詩の一節を挙げながら、脚韻等の音韻的側面や文化的・宗教的背景といった、英詩解釈の基礎が説明されました。また、私たちの暮らしにおいて、英詩をはじめとする文学作品に触れることの意義についても言及がありました。質疑応答によって、シェリーの英詩とイスラーム世界との関連についても知見を得ることができました。


二つの発表は、学問的探求の面白さを第一線の研究成果とともに伝えるものであると同時に、ヨーロッパ世界を身近に感じることの出来るイントロダクションでもありました。参加者の多くが本学部の1年生であったため、国際学部での学びについてイメージを膨らませて、学ぶことの楽しさに触れる機会になったはずです。

(上田達 教授)

インドネシアとマレーシアをよりよく知るための集まり



UPDATE 2024-11-28

 2024年11月18日(月)に、「インドネシアとマレーシアをよりよく知るための集まり」を実施しました。このイベントは毎年、インドネシア語・マレーシア(マレー)語を学ぶ学生を対象として実施しています。

 今回は、インドネシア政府のダルマシスワ奨学金により1年間留学をしていた徳見賢太郎さん、そして本学のグローバル教育センターが主催する下記のマレーシア文化体験プログラムに参加した山䑓くるみさんと川原明日美さんがそれぞれの体験を話してくれました。

 徳見さんは、ダルマシスワ奨学金の概略や、現地での授業の様子などを短い動画を交えて紹介してくれました。山䑓さんと川原さんは滞在先であるペナン島でのロヒンギャ難民との交流、ホームステイなどの多様な体験について印象的な写真を交えて話してくれました。

 その後、来場者の1、2年生との交流や、マレーシアグッズのラッキドローなど少人数ながら楽しい会となりました。

文責:金子正徳(国際学部准教授)

国際学部有志ゼミ対抗運動会を開催しました



UPDATE 2024-11-28

2024年11月12日火曜日、今年で3回目となる有志ゼミ対抗運動会が摂南大学寝屋川キャンパスの体育館で開催されました。今回は5つのゼミから総勢34名の3年生が参加しました。


この運動会は企画、立案、進行などすべて学生が主体となって運営します。当日は準備体操にはじまり、バスケットボール、ドッジビー、ゼミ対抗リレーの3種目が用意され、学生らは白熱の競技を存分に楽しみました。

参加した学生らは互いに協力しあいながら良い汗を流し、ゼミ間の交流を深める良い機会となりました。

長期海外出張 マレーシア(上田教授)



UPDATE 2024-10-07

私は2023年9月から長期海外出張制度を利用して、マレーシアに行きました。現地での受入研究機関はマレーシア国民大学(Universiti Kebangsaan Malaysia、以下UKM)の人文社会科学部(Fakulti Sains Sosial dan Kemanusiaan、以下FSSK)です。同学部内にあるマレー言語・文学・文化研究センター(Pusat Kajian Bahasa, Kesusasteraan dan Kebudayaan Melayu)というセクションに在籍するカリム・ハルン博士が受入教員としてご尽力下さり、現地での研究活動を円滑に進めることができました。

UKMは1970年に建てられた国立大学です。スランゴール州にあるメインキャンパスは広大で、山を切り開いた敷地に9学部と11研究機関を擁します。私の所属したFSSKは言語学や歴史学といった人文科学から、国際関係論や政治学などの社会科学まで、広く文系の学問領域をカバーしています。

一年間、UKMに拠点を置いて、自身の調査地であるサバ州や東ティモールに足を運び、現地調査を行うことが出来ました。また、UKMの図書館は東南アジア関連の文献コレクションが充実しているため、時に書庫で本や資料を探しつつ、時にオンライン化された論文を閲覧する日々でした。現地調査や文献調査の成果は、帰国前に二つの国際学会で発表しただけでなく、いくつかの研究会で話す機会を得ました。こうした機会に、新たに国内外の研究者と知り合えたのも大きな収穫の一つです。研究活動に加えて、FSSKで開講されているカリム博士らの授業に参加して、教授方法について知見を得ることもありました。

<チャペル内で行われた収穫祭関連イベント(マレーシア)>

サバ州でも東ティモールでも、私が調査対象とする人々の宗教はカトリックです。現地調査を通じて、二つの社会を対照したり、重ね合わせて見ることで、かれらの信仰生活について理解を深めることが出来ました。とりわけ今回の滞在でありがたかったのは、大学で教えている限りはなかなか赴くことの出来ない時期に、調査地を訪れられたことです。サバ州は毎年五月末に「収穫祭」と呼ばれる文化行事があります。サバ州の先住民の人々が米の収穫を祝して行ってきた伝統行事が、州の文化行事として大々的に行われるようになったものです。さまざまな関連行事が開催されて、お祭りムードが醸成される五月末の時期にサバ州に滞在したのは、およそ20年ぶりのことでした。

また、10年ほど前から調査を始めている東ティモールも、通常であれば調査のために赴くことが出来るのは、授業のない期間に限られます。同国の主要な農作物であるコーヒーの収穫のシーズンは七月頃なので、いつも収穫前や収穫後に行かざるを得ませんでした。今年、初めて収穫の時期に行くことが出来たので、農作業の分担や販路の詳細がわかって、また違った角度から東ティモール社会について知見を得ることが出来たように思います。
< 山間部の小さなチャペル(東ティモール)>

実は、私が大学院生だった2002年から2004年までの期間も、UKMに研究生という立場で在籍して現地調査をしていました。20年の時を経て、同じキャンパスで時間を過ごすことになったわけです。

現地で暮らしていて20年の変化を最も感じたのは、売られているものの値段です。折からの円安に加えて、マレーシア国内の物価上昇もあって、食料品などは日本で調達するのとそう変わらないものも増えてきました。たとえば卵や牛乳は、スーパーでの価格を見るとほとんど違いを感じません。いっぽうで、南国ならではのフルーツや、日常的に食する野菜などは、美味しいものを安価で入手できます。新鮮な葉物の野菜は、日本で支払う値段で数倍の分量が手に入ります。日本とマレーシアの二国間の物価の差はますます小さくなっているようですが、ものによって事情はさまざまのようです。

大きく変わったなと思うことの二つめは、キャッシュレス決済の普及です。日本もコロナ禍を経てキャッシュレス決済が急速に普及しました。ですが、マレーシアで暮らしていると、普及の度合いはそれ以上だと感じます。大学内でさえ、現金が使えないシチュエーションがしばしばあって、苦慮したのを思い出します。もちろん、ショッピングセンターやホテルなどでは、マレーシアでも昔からクレジットカードが使えていました。ですが、今や小さなスーパーでも現金以外の支払いが一般的です。

とりわけ、現金以外の決済手段として、QRコード決済が広がっているのが興味深かったです。スマホにオンラインバンキングのアプリを入れると、(ほぼ自動的に)個人のQRコードが発行されるほか、種々のアプリに決済用のQRコードが実装されています。そうしたスマホのアプリによる決済が、いたるところで可能になっています。支払用のアプリが何であるかを特に考えることなく、レジ横に設置されたQRコードを読み取ったり、こちらが表示したQRコードを表示したりして行う決済は、とても便利です。ナイト・マーケット(pasar malam, 夜市)や、道ばたの屋台などでも、QRコード払いがかなり浸透しています。私も、日本ではスマホでの支払いをしたことがありませんでしたが、マレーシアではそれなしでは不便だと思うくらいに使い慣れてしまいました。
<小さな個人商店でもQR決済が可能(マレーシア)>

20年ぶりのマレーシアでの生活は、新鮮で刺激に満ちたものでした。現地で暮らすことは、現地の社会や文化を学ぶことに直結します。特に、私の専門分野では、こうした感覚を持ち続けることが大きな意味を持ちます。今回の滞在は、これまでに得てきた知識や情報を見直したり、時に再確認したりする、充実した時間となりました。

末筆ですが、このような機会を頂けたことにつきまして、関係各所にあらためて感謝申し上げます。とりわけ、手続き等でバックアップして下さった職員のみなさんや、温かく送り出してくれた国際学部のみなさん、ありがとうございました。

(国際学部教授 上田達)