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摂南大学薬学創立40周年記念行事/パネルディスカッション

② いい薬剤師とは?
(第35話)

パネルディスカッションにて

 
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『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』
7卷 142〜144, 154〜156ページ(第35話)
©️荒井ママレ/コアミックス

岡田美由紀さん(2003年4月入学)
 私は2007年3月に4年制の薬学部を卒業し、その後は一貫して病院薬剤師として勤務し、今年で16年目になります。病院薬剤師しか知らないので、質問もヒューマニズム的な感じになってしまうのですが、第35話、理想の姿というお話の中で、瀬野さんの教育係の陣先生が出てきた回があり、その話の中で理想の薬剤師、いい薬剤師って何だろうという問いかけがありました。富野先生が思う、いい薬剤師のイメージをお伺いしたいです。ちなみにこの質問をするにあたって、自分でもいい薬剤師をちょっと考えてみました。私は病院しか知らないので、すごく狭い了見でしか答えれないのですが、私もがん治療にずっと携わってきた中で感じることとして、医師は病気を治すことが仕事なので、薬の安全性よりも効果に重きを置いているなと感じるときがあります。漫画の話の中でも、イレッサの薬害について出てきたと思うのですが、薬剤師を目指す学生は大学で薬害について学びます。働きながらも薬の良い面だけでなく悪い面もたくさん見ていると思うので、薬の安全性に関する知識や経験は多分医師よりも薬剤師の方が多いかなと思います。なので、優れたリスクマネジメントを行える薬剤師がいい薬剤師ではと思っているのですが、富野先生のお考えをぜひお聞かせいただけたらと思います。

 
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『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』
7卷 142〜144, 154〜156ページ(第35話)
©️荒井ママレ/コアミックス

富野浩充先生
 色々その人によって答えはあると思うのですが、私としては患者に寄り添えるところかなとは思います。自分もこの漫画を始めてから特にですが、自分の患者と思って接しているというところですかね。この患者は自分の患者と思って話をするようにしています。なので、患者の本音を引き出せたら良いですけれども、いい薬剤師とは患者に寄り添えるところかなと考えております。

在校生(荒尾七海、2019年4月入学)が考えたこと・感じたこと

 パネルディスカッションや漫画の第35話に出てきたイレッサ®(ゲフィチニブ)は、2002年7月に発売されたEGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺がんに用いる内服薬の抗がん剤です。発売前には、プラチナ系抗がん剤で治療を受けたことのある進行性非小細胞肺がん患者を対象に第二相臨床試験が実施されており、日本人の奏効率(治療効果を示した患者の割合)は27.5%でした。つまり、プラチナ系抗がん剤で効果のなかった3~4人に1人の患者でがん細胞の縮小・消滅が認められました。また、イレッサは抗がん剤の中でも分子標的薬に分類されることから、脱毛や嘔吐の副作用が少ないことも特徴に挙げられます。
 イレッサの安全性について、副作用として急性肺障害や間質性肺炎があり、間質性肺炎の発現については、既に治験段階から報告があったため、販売開始時より添付文書の「使用上の注意;重大な副作用の項」に間質性肺炎が記載されていました。しかし、発売日から約3ヶ月でこの副作用による死者も出ていました。そのため、2002年(平成14年)10月に「イレッサ®錠(ゲフィチニブ)による急性肺障害、間質性肺炎について」という緊急安全性情報(イエローレター)が出され、「イレッサ®錠の投与により急性肺障害、間質性肺炎があらわれることがあるので、胸部X線検査等を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、患者に対し副作用の発現について十分説明すること。」という内容が添付文書の「警告欄」に追加で記載されました。また、「イレッサ®錠の投与により急性肺障害、間質性肺炎等の重篤な副作用が起こることがあるので、臨床症状(呼吸状態、咳および発熱等の有無)を十分に観察し、定期的に胸部X線検査を行うこと。また、必要に応じて胸部CT検査、動脈血酸素分圧(PaO₂)などの検査を行い、副作用が疑われた場合には、直ちにイレッサ®錠を中止し、ステロイド治療等の適切な処置を行うこと。また、イレッサ®錠を投与する際は、副作用について患者に十分に説明するとともに、臨床症状(息切れ、呼吸困難、咳、発熱等)が発現した場合には、速やかに医療機関を受診するように患者を指導すること。」という内容が添付文書の「重要な基本的注意」に追加で記載され、イレッサ投与後の経過観察の必要性がより重要視されるようになりました。
 イレッサなどの抗がん剤だけでなく、どの薬にも少なくとも副作用は存在します。中には患者に聞き取りをしなければわからないような副作用もあります。そのため、薬のリスクについて理解し、副作用について患者から正しく状態を聞き出すことができるコミュニケーション能力をもつ薬剤師もいい薬剤師であると私は考えます。

【参考文献】
・イレッサ®錠250mg 添付文書
・患者向医薬品ガイド イレッサ錠250
・審査報告書(2002年07月05日)
・緊急安全性情報 イレッサ®錠(ゲフィチニブ)による急性肺障害、間質性肺炎について
・ゲフィチニブによる急性肺障害、間質性肺炎についての「緊急安全性情報」の発出について(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)

 

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