8卷 139〜140ページ(第40話)
⑧ 外国人患者様の受け入れに対する現状
(第40話)
パネルディスカッションにて
8卷 139〜140ページ(第40話)
小山紗由莉さん(2013年4月入学)
治験のCROにて、5年目の臨床開発モニターとして働いています。
私が質問させていただきたいことは、第40話『異国の風』にて、葵みどりが外国人患者に対して服薬指導する場面なのですが、翻訳機を使っても正しい英語に変換されずに伝えたい内容が伝えきれないという場面です。薬局で働く友人に同じようなこと起きるかを聞いたところ、実際にそういうケースがあり、翻訳機だけでは患者の困り事や悩みを、コミュニケーション能力がないと伝えきれない、くみ取れないということがあるようです。治験に携わっている上で、医薬品開発が進んでいく上で、国際共同治験が進むと、やはり英語で病院側に対して『安全性情報や患者の併用薬を入力してください。』とお願いするケースが多くなってきている状況です。今後、英語を使う場面が増えていくと思っています。
そこで、外国人患者の受け入れに対する現状や、この題材がテーマになった背景が、もしあれば教えていただきたいと思います。
8卷 139〜140ページ(第40話)
富野浩充先生
その患者の話は、イスラム教で使用してはいけない医薬品に対してどう対応するかを題材にしようという話を作る際に最初の場面にあったと記憶しています。その中で言葉の問題も出てきて、『お腹の張りはないのか』を実際に翻訳にかけると本当に『Are you hungry?』と出てきたのです。AIも進んできて、今検索するとどう出てくるかは分からないですが、当時翻訳をかけたらそう出てきたので、面白いと思って取り上げました。
外国人患者に実際に対応していて、私も英語力がないので、突っ込んで聞くこともちょっと難しいなと。多分向こうも遠慮して聞いていないこともあるのかなと感じることもあります。
小山紗由莉さん
漫画の中で、外国人受け入れ態勢が整っている病院のパーセンテージのデータが出ていたと思うのですが、私も病院に行かせていただくうえで、先生方もとても忙しそうなので、体制が現状どのくらい整っているものなのかなと思うことがあります。
富野浩充先生
そうですね。非常勤の通訳の方が私の病院にもいて、ポルトガル語とか、ブラジル人も多いので。通訳の方の同席で服薬指導等を行っています。
在校生(川出佑香、2019年4月入学)が考えたこと・感じたこと
イスラム教で使用できない医薬品
イスラム教では、豚を食べることを禁止しています。そのため、豚由来の医薬品を使用できません。医療現場でよく使用されるヘパリンは、豚の小腸由来です。他にも、豚の膵臓由来のパンクレリパーゼ(リパクレオン)、肝臓由来のレバサルトなどがあります。
日本にも約10万人のイスラム教の信者がいるとされています。イスラム教でも、宗教によってヘパリンなどの使用が可能な場合もあります。そのため、決まった対応ではなく、患者それぞれに合わせて治療を行う必要があります。また、使用する医薬品以外にも、未婚の女性に対して男性医師が医療行為を行う場合には事前の了承が必要になるなど、社会風習の違いにも配慮する必要があります。
感想
海外の患者さんへの対応は、言語的な面以外にも文化や慣習など様々な面に対して配慮が必要になることを改めて感じました。薬剤師として患者さんに対して何でもできるわけではないですが、文化の違いなどを知ることで、患者さんに少しでも寄り添うことが出来ると感じます。言語や文化の壁を簡単には超えられませんが、医療通訳さんなどと連携し、チームとして患者さんに対応することで正確な情報の聞き取りや伝達が可能になると思います。病院のHPなども言語対応し、対応言語の記載などもすることで安心して病院に来ることができるのではないかと感じました。また、医療通訳の存在を患者さんに知ってもらうことで、その人がついてくれれば安心と、病院への抵抗感も少し薄れるのではないかと感じました。
参考文献
杏林製薬会社HP「医薬品の中にある動物由来物質の今」
イスラム教徒患者の周術期管理

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