摂南大学薬学部 公衆衛生学研究室
資料集

内分泌撹乱化学物質のスクリーニング法

T1S(Tier 1 Screening)

In vitro試験 エストロジェンレセプター(ER)試験 ER結合試験 哺乳動物や他の脊椎動物のサイトソール中あるいは核抽出のERを用いて,無細胞系でRI標識リガンドに対する被験物質の競合的結合阻害で結合能を調べる.
ER転写活性化試験(MVLN法) ERalpha発現ベクターとレポーター遺伝子が組み込まれている乳ガン細胞MCF-7を使用.感度良く(抗)エストロジェン物質の検出が可能.
アンドロジェンレセプター(AR)試験 AR結合試験 去勢したオスラット生殖組織のARを用い,無細胞系で被験物質のテストステロン(T)などとの競合的結合阻害で結合能を調べる.
AR転写活性化試験(CV-1細胞) ヒトのhAR発現ベクターとレポーター遺伝子が組み込まれているサル腎CV-1細胞を使用.アンドロジェン添加の有無で阻害作用も検出可.多少細胞内での代謝能あり.
ステロイドホルモン生合成阻害試験 細切断した睾丸組織でのホルモン合成の阻害を調べる.レセプターを介する毒性ではなく,ホルモン合成に関与するP-450の阻害を見る.
In vitro試験 齧歯類3日 子宮試験法 エストロジェン試験 卵巣摘出あるいは未成熟のメスラット・マウスにエストロジェン作用を持つ物質を1〜3日間皮下投与すると,子宮の重量が増加する減少を利用した試験.
齧歯類20日 性成長試験 エストロジェン試験 21日令のメスラットを用い性成長を指標に,被験物質の影響を調べる.
齧歯類5〜7日 Hershberger試験 抗アンドロジェン試験 去勢オスラットに5〜7日間被験物質をあたえ,前立腺,貯精嚢の重量をテストステロン同時投与あるいは非投与時で測定する.
カエル変態試験 50〜54日令のオタマジャクシ段階のアフリカツメガエル(Xenopus laevis)を被験物質に14日間曝露し,変態時の尾の再吸収変化を調べる.(抗)甲状腺ホルモン作用を評価する.
魚類の生殖能復帰試験 冬眠状態におき第2次性成長が後退したサカナを,被験物質に曝露し日照時間と水温を上昇させ,成熟状態復帰時の影響を見る.

T2T(Tier 2 Test)

哺乳動物試験 2世代哺乳動物試験 ラット,マウスに,主に経口で被験物質を摂取させ,行動変異,妊娠率,懐胎期間,出産異常,子孫の性比,子供のメス化あるいはオス化,生殖組織およびその他の組織変化などを調べる.
他の動物種での試験 鳥類での生殖試験 マガモ(mallards)とウズラ(northern bobwhite)を用い,成鳥に曝露後,排卵,卵殻の厚さ,孵化率,孵化後の生存日数などを調べる.
魚類のライフサイクル試験 Pimephales promelasを受精後から被験物質に曝露し,発生,成長,生殖,次世代の発生を300日間以上観察する.
甲殻類のライフサイクル試験 甲殻類のアミ(Americamysisi bahia)を用い,発達,致死,成長,有性生殖などを観察する.
両生類の発生と生殖 カエルなどの幼生期に曝露し,変態に及ぼす影響などを観察する.

杉原数美,開発進む内分泌攪乱物質スクリーニング法,ファルマシア34 (10),1012-1013.(1998年)