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齊藤さんはアインシュタインの理論まで遡って重力波を説明 齊藤さんはアインシュタインの理論まで遡って重力波を説明

身振り手振りを交えながらブラックホール衝突を解説する棚橋さん 身振り手振りを交えながらブラックホール衝突を解説する棚橋さん

 6月2日、基礎理工学機構主催の「重力波が紐解く宇宙の謎―ブラックホールは見つかったのか?―」と題する講演会を寝屋川キャンパスで開催しました。当日は教職員、学生、一般の方約50人が参加。重力波の説明やその観測手法、観測の意義や今後の展望について京都大学基礎物理学研究所の齊藤遼さん、大阪大学理学研究科の棚橋典大さんが講演し、参加者は宇宙の神秘と科学技術の進歩に心を弾ませながら耳を傾けました。

 重力波とは、時空のゆがみが光と同じ速さで水面の波紋のように広がる波のことで、重さを持つ物体が運動することで生じます。その揺れ幅はあまりにも小さく (10のマイナス19乗%=0.0000000000000000001%=太陽と地球の距離を原子の大きさ分変える大きさ)、普段私たちが感じることはできません。その存在はアインシュタインによって一般相対性理論が発表された翌年の1916年に予言されていましたが、この100年間実証されてはいませんでした。物理学は実験結果の積み重ねで作られていると思いがちですが、アインシュタインはペンと紙と頭の中だけでさまざまな理論を打ち立て、技術の進歩がその後を追っているのです。

 今回の観測は、アメリカのワシントン州とルイジアナ州に設置された検出器LIGO (Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory/レーザー干渉計重力波天文台)で行われました。その装置で観測されたのは2つのブラックホールの衝突。2つのブラックホールは円を描きながら互いに近づき、最後は衝突して一つに。ブラックホールは光も抜け出せないほどの非常に大きな重力を持っていますが、こうした強い重力を持つ星の衝突が地球でも観測できるほどの重力波を生み出したのです。
 この発表は2016年2月11日にLIGOのチームによって行われ、ニュースは瞬く間に全世界に広がりました。重力波という普段私たちが感じることのできない小さな波の話題が、世界を揺るがす大きな波となったのです。

 日本の重力波検出器KAGRAなど、LIGOのような検出器による重力波観測は世界各国で今後続々と行われる予定です。また、重力波検出器を宇宙空間に建設する計画も進んでいます。重力波によって天文学の新たな世界が広がり、これまで知ることのできなかった宇宙の成り立ちが解明される日もそう遠くないかもしれません。

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