経済学部
ワークショップ「『経済学者たちの日米開戦』を論じる」を開催しました。
経済学部の牧野邦昭准教授は、このほど『経済学者たちの日米開戦 秋丸機関「幻の報告書」 の謎を解く』(新潮選書)を刊行されました。これまで多くの歴史家、思想家、政治学者が分析を重ねてきた日米開戦について、同准教授は当時の経済学者の日米開戦での役割に光を当て、行動経済学などの理論を適用することで新たな視角から文献を分析しようとするのが、本書の目的となっています。
本ワークショップでは、まず牧野准教授から、本書の概要について報告がありました。すなわち、満州国と秋丸機関、秋丸機関の活動について説明があり、その後、秋丸機関の報告書の内容、それがどのように受け止められたかについて詳しく紹介されました。そのうえで何故に開戦が決定されたのか、さらには当時のトップクラスともいえる経済学者達がこの意思決定にどのようにかかわったかについても紹介があり、最後に現代への教訓について述べられました。意思決定に当たっては、エビデンスに基づく正確な情報だけではなく、ヴィジョンを持つことも必要だということなどです。
続いて、慶應義塾大学の細谷雄一教授(当日、体調不良で出席できなかったのですが、同教授から送付されてきたコメントを司会担当の久保廣正教授が代読しました)から次のような4点について本書を評価する旨の指摘がありました。すなわち、第1は、日米開戦史研究に経済史的な手法で新たな貢献をしたことです。第2には、知識人と政府との関係です。つまり、いつの時代でも、学者がどのように政府に関与をするべきか、あるいはするべきではないかについて議論があるが、牧野准教授は両者の緊張関係を見事に描いていることです。第3は、戦前と戦後の連続性を鮮やかに描いているところです。第4は、政策決定過程の分析です。すなわち、本書では政府と民間人との間に境界線を引かずに、ゆるやかなネットワークが、政策決定に大きな役割を果たした事実を明らかにしたことです。
その後、参加者との間で多くの質疑応答があり、本ワークショップは成功裏に終了しました。