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お知らせ

2019年4月19日から2020年3月12日まで、長期海外出張として本学と連携協定を締結している、インドネシア・スラバヤのストモ博士大学(Universitas Dr.Soetomo)にて教育・研究活動をしてまいりました。

1年弱のインドネシア滞在では、ほんとうに多くの体験をしてまいりました。本紙面上ではすべてを語り尽すことができませんが、いくつかのトピックについてお話ししたいと思います。

まず、研究面についてです。この度の海外出張においてわたしは、特に社会・文化面におけるインドネシアと日本の相互認識の構造を探ることをその目的としました。相互認識とは何か、と申しますと、例えばインドネシアの人びとが日本をどう捉え、日本人がインドネシアをいかに理解しているのか、さらには両者のギャップというものはどれほどのものなのか、というものです。この相互認識についての研究を深めることは、相互理解につながるきっかけとなりますし、留学生に対する教育や異国の地で暮らす人びとのカルチャーショックのリスク回避にもつながるものだと考えています。より詳しい話は稿を改めますが、今回の長期滞在の中であらためて感じたことの一つは、多民族社会であるインドネシアと「単一民族神話」が根深い日本との間の認識ギャップは比較的大きいものだということです。

次に、教育面についてですが、今回、ストモ博士大学においてわたしは、2年次生向けの「日本社会学」と4年次生向けの「観光学基礎」という二つの授業を受け持ちました。これらの授業はともに文学部日本語学科に設けられている授業であり、教授言語としてはインドネシア語と日本語の両方を用いました。受講生たちは将来的には日本語の通訳や観光ガイド、あるいは日系企業で働くことを目的としており、たいへん意欲的に授業に臨んでくれました。受講生の年齢もバラバラで日本のように一定の年齢層だけではなく、すでに仕事を持っている者や日本留学経験者、退職後に大学に再入学した方など、多種多様な学生が勢ぞろいしていました。わたしがネイティブ教員だったこともあってか、授業外でも多くの質問が投げかけられ、学生たちの「日本や日本語をより深く知りたい」という意欲が十分に伝わってきました。以上の二つの授業を受け持った以外にもインドネシアで行われた、「日本語弁論大会」や「漢字コンテスト」などの指導も行いました。インドネシア人はシャイなところが日本人によく似ているとも言われますが、「日本語弁論大会」へ向けての練習では、初めの頃は恥ずかしがっていました。しかしながら、徐々に慣れてきて、ジェスチャーを交えながら、大きな声で自信をもってスピーチする姿へと変わっていき、頼もしさを感じました。一方、「漢字コンテスト」では、日本語を母語とするわたしでさえ、一瞬戸惑ってしまうような漢字をしっかりと憶えていたのはとても印象的でした。

最後に、日常生活についてです。
今回、わたしは首都のジャカルタと第二の都市スラバヤを毎月のように行き来し、インドネシアの都市における生活に浸かってきました。そこで感じたことの一つがITを活用した利便性の追求でした。日本では今、コロナ禍により遠隔授業が広がっていますが、インドネシアにおいてはコロナ禍以前より、時と場合によってはリモート教育を行っておりました。また、レストランや商店などでの決済においてはスマホを利用した電子決済が日常化しており、まだまだ現金決済が主流の日本とは異なっているという実感がありました。さらに、自家用車を用いてのタクシー(日本では「白タク」とされています)が町中の至る所に走っています。スマホのアプリを用いて空車を呼び出すのですが、ドライバーの顔写真とともに目的地までの料金がアプリ上に提示され、スムーズに予約できます。そして、到着までの残り時間の情報も示され、イライラすることなく待つことができました。降車時にはアプリで料金を支払います。印象的だったのは支払いの際、「チップ支払い」の画面もあり、乗客の気持ちよさに応じて「チップ」も電子決済で支払うという仕組みがあったことです。このように、「わかりやすく」「簡単」で「安心」な利便性を追求していることが感じ取れました。

以上、わたしが長期にわたって海外に暮らした経験の一端を披露させていただきました。今後、新型コロナウイルスが収束し、海外に出かける機会も訪れることかと思いますが、たとえ短い期間であったとしても、異国の地での「生活」を実感してみてください。必ずや、新たな「発見」があるはずです。

(浦野崇央 教授)

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