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薬学科 吉田講師が研究する自己免疫疾患治療に海外も注目!
薬学科の吉田侑矢講師は、根治の難しい関節リウマチなどの自己免疫疾患に対して薬剤フィンゴリモド(FTY720)を使って免疫を制御することで、長期的な寛解の導入を目指す研究を行っています。
この研究が2021年6月発行の英国雑誌「Impact」(Vol.2021, No.5)で取り上げられ、「自己免疫疾患治療へのユニークなアプローチ」と紹介されました。
吉田講師は、故・藤多哲朗京都大名誉教授が発見した血液中へのリンパ球の移出を抑制するフィンゴリモドについて、同学科の河野武幸教授、辻琢己准教授と共に大学院生の頃から研究に取り組んできました。
一般的な免疫抑制剤が免疫細胞そのものを直接弱らせるのに対し、フィンゴリモドは病因となるリンパ球を弱らすのではなくリンパ節などの二次リンパ組織に閉じ込めます。この点に着目し、フィンゴリモドで二次リンパ組織に閉じ込めた病因リンパ球に病因抗原を暴露させることでリンパ球に過剰な活性化を起こさせ、結果的にそれを制御するための免疫寛容(自己の細胞や抗原に対して免疫反応を起こさない)を誘導できるのではと着想しました。この治療戦略を関節炎モデルで試したところ、優れた治療効果が確認できただけでなく、二次リンパ組織内に抑制性サイトカインを高産生する細胞集団が増加していることも確認しました。
自己免疫疾患は一般的に寛解と再燃を繰り返し、患者は継続的な免疫抑制剤の治療を強いられます。それは長期間にわたり感染や発がんリスクが伴うことを意味します。吉田講師の研究は、短期間の治療で寛解に導き、治療停止後も寛解状態を維持できる新しい治療戦略になる可能性があります。
「Impact」では「(この研究は)患者に長期の寛解と大きな自由をもたらすだけでなく、高額な治療の必要がなくなり、経済的な恩恵も導く可能性がある」と評価しています。