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「18歳、19歳が「特定少年」に 起訴後の実名報道に危機意識を」法律学科 島田良一 准教授(FLOW97号「研究最前線」より)
4月1日から民法の成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるとともに、少年法も改正されます。特に高校生・大学生にあたる18歳、19歳は「特定少年」と位置づけられ「裁判所に起訴された段階で実名報道が可能になるため、従来のように匿名で守ることが難しくなる」と島田准教授は指摘します。検察庁での実務経験もある島田准教授の研究テーマは、刑事訴訟法や少年法です。
そもそも少年法は20歳未満の者を「少年」と定義し、その健全な育成と非行のある少年の更生を目的とした法です。「成人の場合、行為の結果を重視し、その責任に応じて、刑事裁判において刑罰という制裁が科されるのに対して、少年の場合、行為の結果のみならず行為に至った経緯や背景、少年の成育環境なども考慮して、少年の保護・更生を重視した処分が下されます」。そのため、少年事件は警察・検察の捜査後、全て家庭 裁判所(家裁)へ送致され、専門的な知識を有する家裁の調査官による調査の後、審判が開かれ、裁判官によってその少年にふさわしい処分が決定されることになります。その内容は少年院送致や保護観察がほとんどですが、逆送といって家裁から検察に事件が送り返されることがあります。これは、家裁が起訴相当と判断した際に行われる措置で、現行法で は裁判官の裁量によることとなっていますが、16歳以上の少年が故意の犯罪で人を死亡させた場合に限り、原則として、裁判官は少年を逆送することとなっています。しかし改正少年法は、特定少年についてその範囲を拡大し、強盗罪や強制性交等罪など、法定刑の下限が懲役・禁錮1年以 上の罪も原則逆送の対象としました。「つまり、これまでは保護処分で済んだ事案でも、今後、特定少年については、検察に逆送され、刑事裁判を受けることになるケースが増えます」と島田准教授は言います。
新たな関心は、実名報道です。もともと少年法では第61条で実名報 道を禁じていますが、4月以降は、特定少年の起訴後は実名や顔写真、学校名などの報道が可能となります。「特定少年であっても起訴されれば『1人の大人』として社会的な批判・論評の対象となり得る」と島田准教授は言います。一部の週刊誌が既に実名報道に踏み切った例もあり、「少年事件は世 間の注目度も高く、報道により 少年個人だけでなく家庭や学校も対応に追われることが想定されます」と警鐘を鳴らします。
4月からは、18歳、19歳は、刑事法上、ほぼ「大人」として扱われる場面が増えることになります。そのため「『軽い気持ち』『魔が差した』では済まされません。自らが大人であると自覚し、自身の行為に責任を持つことを忘れないでほしい」と語りました。
■しまだ・りょういち 1997年同志社大学大学院文学研究科社会学専攻修士課程修了。 2002年大阪大学大学院国際公共政策研究科比較公共政策専攻博士前期課程修了。2005年同大学院法学研究科法学政治学専攻博士後期課程単位取得退学。大阪地方検察庁検 察事務官、山梨学院大学法学部法学科講師を経て、2008年摂南大学法学部法律学科講 師。2010年から現職。大阪府出身。
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