経済学部
EU外交官による経済学部特別講演会が開催されました
5月26日、経済学部授業「国際協力論(担当:村瀬憲昭准教授)」において、駐パプア・ニューギニア欧州連合代表部(EUの大使館に該当)副代表であるSilviu Jora氏による講演が行われました。
ルーマニア出身の同氏は、同国内の大学から博士号を取得された後、ルーマニア政府においてEU加盟交渉を担当、同国のEU加盟実現(2007年)に重要な貢献をされました。また、日本国内のいくつかの大学で教鞭をとられた後、欧州委員会(EUの政府に該当)に入られ、日欧産業協力センター(わが国の経済産業省と欧州委員会が共同で設立した国際機関)東京事務所長を経て、2000年9月以来、現職に就かれています。
同氏は、「EUの開発アジェンダと南太平洋の地政学」と題する講演において、まず、EUとEUの開発政策について説明されました。他の国際機関、例えば、国連とかASEANと異なり、EUでは加盟27カ国の国内法を上回る効力を持つEU法が制定されているなど、超国家機関としての側面を持っていることを強調されました。また、EUでは、他国への影響力を高めるにあたり、軍事力よりも経済協力・文化交流などソフトなアプローチを中心とした政策を構築してきたことが述べられました。なお、EUが提供するODA資金と各国が独自に提供しているODA資金を合計すると、世界のODA額の半数を上回るとのことでした。
また、同氏は、世界地図を示しながら、南太平洋は太平洋・インド洋・豪州などの中心に位置することから、地政学的に極めて重要である点も力説されました。事実、かつてほとんどの島嶼は欧州の植民地であったし、第2次大戦時、日米間で激しい争いがあったことも紹介されました。
このように重要な地域に対して、日EUは経済協力面で共にアプローチしつつある点も力説されました。その契機になったのは、日EU間でグローバルな協力を強化しようとする「日EU戦略パートナーシップ協定(2019年に締結)」であり、そこには、例えば、気候変動、生物多様性、海洋の安全などでの協力が盛り込まれています。また、日EUの役割分担も決められており、日本はインフラ建設・汚水対策など、また、EUは気候変動、人権保護、健康といった分野を中心に援助することなっています。このような日EU協力は、南太平洋も重要な対象地域とされています。
こうした講演に対して、学生からは次々に質問がなされました。例えば、ODAに対する姿勢に各国間で温度差がある場合、どのように意思決定をするのかなどです。これに対して、Jora氏は、「EUの意思決定には、2つの方法がある。全会一致と(特定)多数決方式である。ODA政策は(特定)多数決が適用されるが、ただ、コンセンサスが得られるように出来る限り議論を重ねるのが通例である」との説明がなされました。
本講演には「国際協力論」の受講生だけではなく、関心を持つ他学部生を含め、約280名の学生が参加し、盛況に終わりました。