その他
【理工学部】超伝導特性向上の原因を量子ビームで特定〜簡便な合成方法で高品質化に道〜
NEWS RELEASE【No.39】
研究成果のポイント
(ア) 体積のごく一部分しか超伝導体にならない層状硫化ビスマス化合物※1に微量の鉛を添加することで大部分が超伝導体となります。この特性向上の原因は不明でしたが、今回初めて明らかになりました。
(イ) SPring-8※2での実験により、鉛を添加した超伝導体はこれまで7000 気圧以上の高圧で作っていた鉛無添加の超伝導体と非常によく似ていることがわかりました。
(ウ) 鉛を添加することにより大気圧で簡便に作製できるようになった上、高品質な結晶が得られるようになったことで、超伝導材料開発分野への波及効果が期待されます。
概要
甲南大学理工学部物理学科 山﨑篤志教授の研究グループは、日本大学 出村郷志助教、大阪公立大学 三村功 次郎教授、高輝度光科学研究センター 河村直己主幹研究員、大阪大学大学院基礎工学研究科 関山明教授、同大学 藤原秀紀助教、摂南大学 東谷篤志准教授、理化学研究所 玉作賢治チームリーダー、同研究所 濱本諭リサー チアソシエイト、立命館大学 今田真教授、東京理科大学 坂田英明教授などと共同で行なった大型放射光施設 SPring-8のビームラインBL39XUとBL19LXUでの研究により、層状硫化ビスマス化合物(LaO0.5F0.5BiS2)に微量の鉛を添加することでこの物質の超伝導の特性が向上する原因について世界で初めて特定することに成功しました。 山﨑教授らの研究グループは、量子ビーム※3 の一種である放射光を利用した高分解能エックス線吸収分光※4 実験およびエックス線光電子分光※5実験を行い、鉛を添加した超伝導体はマイナス223℃以下の低温になると 7000 気圧以上の高圧で作製された鉛無添加の超伝導体と非常によく似た状態に変化することを突き止めました。鉛を添加することにより大気圧で簡便に作製でき、加えて高品質な結晶を作ることもできるようになったため、量子技術への応用とSociety 5.0 実現を目指した超伝導材料開発分野への波及効果が期待されます。
論文情報
本研究成果は、2024年1月17日(アメリカ東部時間)にアメリカ物理学会刊行の英文誌「Physical Review B」に掲載されました。
タイトル:Bulk superconductivity in Pb-substituted BiS2-based compounds studied by hard x-ray spectroscopy
著者:A. Yamasaki, T. Oguni, T. Hayashida, K. Miyazaki, N. Tanaka, K. Nakagawa, K. Tamura, K. Mimura, N. Kawamura, H. Fujiwara, G. Nozue, A. Ose, Y. Kanai-Nakata, A. Higashiya, S. Hamamoto, K. Tamasaku, M. Yabashi, T. Ishikawa, S. Imada, A. Sekiyama, H. Sakata, and S. Demura
https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevB.109.045131
共同研究における各研究機関の役割
甲南大学:高分解能X線吸収分光実験、X線光電子分光実験、データ解析、理論計算、論文執筆
日本大学、東京理科大学:高純度単結晶試料の作製および評価
大阪公立大学:高分解能X線吸収分光実験
高輝度光科学研究センター:X線ビームライン、X線光学系、および高分解能X線吸収分光測定系開発
大阪大学、摂南大学、立命館大学:X線光電子分光実験手法開発および同実験
理化学研究所:高輝度X線ビームラインおよびX線光学系開発
発表機関連絡先
甲南大学 学校法人甲南学園 広報部
TEL:078-435-2314 E-mail: kouhou@adm.konan-u.ac.jp
日本大学理工学部 庶務課
TEL: 03-3259-0514 E-mail: cst.koho@nihon-u.ac.jp
大阪公立大学 企画部広報課(担当:竹内)
TEL:06-6605-3411 E-mail: koho-list@ml.omu.ac.jp
高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課
TEL:0791-58-2785 E-mail: kouhou@spring8.or.jp
大阪大学基礎工学研究科 庶務係
TEL:06-6850-6131 E-mail: ki-syomu@office.osaka-u.ac.jp
摂南大学 学校法人常翔学園 広報室(担当:石村、上田)
TEL:06-6954-4026 E-mail: Koho@josho.ac.jp
理化学研究所 広報室 報道担当
TEL:050-3495-0247 E-mail: ex-press@ml.riken.jp
立命館大学 広報課
TEL:075-813-8300 E-mail: r-koho@st.ritsumei.ac.jp
東京理科大学 経営企画部 広報課
TEL:03-5228-8107 E-mail: koho@admin..tus.ac.jp