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長期海外出張報告:シンガポール共和国

                                                                               経営学部 経営学科  西之坊 穂

 NUSビジネススクールのKai Chi (Sam) Yam教授との共同研究で2023年9月1日から2024年8月31日までに12ヶ月間海外長期出張をしました。

 最初にシンガポールの紹介をします。シンガポールは東南アジアの中核都市で、2023年の1人あたり名目GDPが84,734USD(日本は33,806USD)でとても豊かな国です。国土はとても狭く、東京23区あるいは淡路島とほぼ同じ大きさです。人口は600万人弱で中華系が一番多くて74%、次にマレー系が14%、インド系が9%の民族構成になっています。シンガポールは北緯1.37度で熱帯雨林気候に属し、四季はなく一年中夏です。あえて言うなら雨季と乾季に分けられます。乾季に入る4月頃からは特に熱いですが、果物がおいしい季節になります。NUSにあるThe DeckというCanteen(学食)で安く果物が売られており、マンゴーが3つで2SGD(約230円)でした。

1.NUSビジネススクール

 NUSのメインキャンパスは、シンガポールのやや西側にあります。大学のキャンパスの広さは約15万㎡で東京ドーム30個分の広さを誇ります。キャンパスが広大ですので最寄り駅を表現するのは難しいのですが、あえて言うと鉄道(MRT)の最寄り駅はClementi駅かKent Ridge駅です。NUSビジネススクールには学部・MBA・PhDの3コースがあり、その中にはAccounting, Analytics & Operations, Finance, Management & Organisation, Marketing, Strategy & Policy, Real Estateの部門があります。その部門の中で私はManagement & Organisationに所属していました。そこには25名の専任教員が所属しており、研究者の研究力は圧倒的に高かった印象です。

2.研究

 Times Higher Educationの世界大学ランキング2024で19位(アジアで3位)、Business and Economics部門では15位(アジアで4位)となっており、研究レベルの高さや研究環境の良さは言うまでもありません。毎月のように所属教員の論文がトップジャーナルに掲載されたという情報が流れていました。

 次に、主にアメリカの大学に所属する有望な研究者をNUSビジネススクールに招いて、水曜日(不定期)にセミナーが開催されました。このセミナーで招待された研究者のプレゼンテーションを聴講しているのはNUSビジネススクールの教員とPhD studentです。日本では一般的にプレゼンテーション終了後に質疑応答が行われますが、こちらでは、プレゼンテーションの途中に手を挙げて多くの質問が飛び交うのが印象的でした。NUSビジネススクールの教員は、研究目的や研究前提条件、そして理論的背景を徹底的に、かつ明確に理解して聴講することが習慣化しているようです。このように活発な質疑応答がセミナー中に行われるのですが、毎回終了時間ピッタリにセミナーを終わらせることができるゲストスピーカーのタイムマネジメントに毎回感心しました。セミナー後にランチミーティング等があり、PhD studentがゲストスピーカーのところに集まって、セミナーの研究内容やアメリカの大学関連に関する質問を次々にしていました。

3.授業

 私はAY2023/2024のSEMESTER2で学部生カリキュラムのOrganizational Behaviour(組織行動論:LIM Ghee Soon先生)とPhD studentカリキュラムのPositive Psychology(ポジティブ心理学:ONG Wei Jee先生)の受講を希望し、両先生ともに快諾してくださりました。以下、その概要を簡単に説明します。

 まず学部も大学院も授業は3時間です。その3時間で教員が1回だけ5~10分間程度の休憩を入れていました。私が見る限りペーパーレスの授業で、全員自前のノートパソコンを持参して授業を受けていました。学部の授業は上限55名程度と少人数で机は3列しかなく、教員と学部生は非常に近い距離で授業が行われていました。また、学生は名札を机の上に立てて教員とインタラクティブな授業が行われており、一部の学部生が非常に積極的に手を挙げて発言する様子が印象的でした。驚いたことに、授業中の飲食はOKでした。朝ご飯を食べながら授業を受けている学生もいましたが、教員はそれに対して何も言いませんでした。

 PhDの授業では、心理学系のトップジャーナルに掲載された、Positive Psychology関連の論文を教員が選び、それがNUS Canvasというポータルサイトに講義日程別に毎回5~7本をアップロードしており、履修生がそれらを読みこんできて授業に臨みます。毎週1人の履修生がそれらの論文の疑問点や批判を教員やPhD studentに問いかけ、その問いかけに基づいてディスカッションを行うという授業方法でした。最後に、その1人の履修生がそれらの論文を読むことで仮説モデルを考えてきて全員の前で発表し、教員やPhD studentが再度ディスカッションを行い、教員がコメントをして終わるという流れでした。5~7本の論文を1週間で読んでディスカッションできる状態で授業に参加するのは本当にハードでした。Positive Psychologyを履修しているPhD student5名のうち、シンガポール人は1名だけで残り4人はすべて中国人でしたが、その4人の英語力はとても高く、ほぼネイティブレベルでした。また、全員とても経営学の理論を勉強していてよく理解していました。

 学部生やPhD studentは、SEMESTER期間中は本当に勉強が大変そうで、昼夜や土日を問わず学習スペースでよく学習していました。

4.生活

 シンガポール生活で一番苦労したのは物価の高さです。そもそも物価水準が日本よりかなり高いことに加え、円安が追い打ちをかけました。日本からシンガポールへ送金するたびに円安の影響で着金額がどんどん減り、円の弱さを痛感しました。さらにシンガポールのGST(Goods & Services Tax)が毎年1%上昇し、2024年1月から9%になりました。

 物価が高いとはよく聞く話ですが、どれぐらい高いのか想像がつかないと思いますので具体例を紹介します。最初に驚いたのが家賃の高さです。実際私が契約したコンドミニアムの家賃は約65㎡の広さ・築4年の物件で月額4,300SGD(約50万円)でした。この物件はNUS徒歩圏内にあるのですがNUSは先述の通りシンガポールの西側にあり、シンガポールの中心地ではありません。また、このコンドミニアムは駅から離れているのですが、この家賃でした。NUSビジネススクール(Finance)に日本の他大学からサバティカルで来た先生は、シンガポールの中心地で物件を借りたため、その家賃は月額7,800SGD(約90万円)でした。その他医療費、教育費、車が特に高額でした。通常の食品等は日本のおよそ2~3倍、日本から輸入した食品等は4~5倍でした。1つ例をあげると、伊藤園のペットボトルのお茶(2リットル)がDon Don Donki(シンガポールでは「ドンキホーテ」ではなく、「Don Don Donki」という名前で展開されています)で1本4.9SGD(約560円)で売られていました。

 しかし、シンガポールには良い点もたくさんあり住みやすい国でした。シンガポールでの楽しみと言えば、フードコートやホーカーセンターのような屋台での食事です。中華料理、マレー料理、インド料理、ベトナム料理、台湾料理、韓国料理、日本料理など、様々な国の料理を楽しむことができます。NUSの学食も同様で、一般のホーカーセンターよりやや割安で食べることができます。ホーカーセンターの人気店はシンガポールに来たばかりの人でも簡単に見つけることができます。なぜなら人気店は常にLong Queue(長い行列)だからです。シンガポール人曰く、長時間並ぶことが苦痛ではないとのことでした。

 以上、海外長期出張での経験の一部を紹介させていただきました。摂南大学生に限らず、教職員の皆さんもどんどん海外で経験を積んでみてください。きっと視野が広まり、その後の努力次第で以降の人生が豊かになるでしょう。

                                                                                                (西之坊 穂 准教授)

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