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お知らせ

農学部農業生産学科の小玉紗代助教と藤井毅准教授は、カイコガのフェロモン腺細胞における脂肪滴の形成過程を、蛍光顕微鏡を用いて詳細に調べました。本研究成果は、2025年11月に国際学術誌「Journal of Insect Biotechnology and Sericology」に掲載されました。

近年、地球温暖化に伴いガ類に代表される農業害虫の大量発生に伴なう生息域の拡大により、農業に深刻な影響を及ぼしています。このため、農業害虫の防除法として環境負荷の低い性フェロモンを拡散させ交尾を阻害し次世代以降の害虫密度を漸減する「交信かく乱法」の開発が進められています。一般に、ガのメスが分泌する性フェロモンは複数の揮発成分からなり、配偶相手となるオスを誘引するためのシグナルとして機能しますが、その成分量比が種の認識のために重要です。しかし、フェロモンの原料となる脂肪酸を含む脂肪滴がどのように形成されるかについては不明であり、ガのフェロモン量はもっぱら酵素で規定されていると考えられていました。

今回、小玉助教らは蛍光顕微鏡を用いて、カイコガのフェロモン腺細胞における脂肪滴の形成過程を観察しました。その結果、小胞体から出芽した脂肪滴が成長し、場合によってそれらが融合して、より大きな脂肪滴へと成長する様子が明らかになりました。この仕組みは他の生物種にも保存されていることから、カイコガ以外のガ類でも小胞体から出芽するメカニズムが保存されていると考えられ、本研究成果によりフェロモン分泌量の種毎の違いを考察するための新しい視点が加わりました。

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