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点群データをAIで解析し、倒壊危険度の高いブロック塀を検出。

  • # 研究

梅原 喜政 講師

  • 学部:経営学部 経営学科
  • 専門分野:知識情報学、コンピュータ・サイエンス

現実空間から収集されるデータを解析し、社会や企業の課題を解決。

近年、センサ機器の発達によって、私たちの日常から多くのデータが収集されるようになりました。たとえば、町中には監視カメラ、宇宙には衛星が存在し、私たちはスマートフォンを常に持ち歩いています。これらは画像センサ、GPSセンサなどを搭載しており、現実空間のさまざまな事象をデータ化して蓄積しています。また、コンピュータの性能も急速に向上したことで、こうしたセンサデータを含むビッグデータをAIによって解析できるようになりました。

私は、さまざまなセンサを搭載したデバイスと、それによって蓄積されたビッグデータ、それを解析するAIを駆使して、企業や地方公共団体とともに、多種多様な課題を解決する方法を研究しています。特に超高齢社会が進む日本では、人手不足解消のための作業の自動化・効率化は必要不可欠だと考えています。

ブロック塀の測定から、評価システム構築、アプリ開発まで。

現在は、徳島県の自治防災の方々とともに、ブロック塀に関する研究を進めています。ブロック塀は、全国の至るところに存在しますが、震災時には危険な構造物となる可能性があります。たとえば、倒壊したブロック塀が避難者に危害を及ぼしたり、緊急車両の通行を妨げたりするなど、多くのリスクが指摘されています。この研究を始めるきっかけとなった、2018年の大阪府北部地震で発生したブロック塀倒壊事故のような例もあります。しかし、実は危険なブロック塀がどこにどれだけあるのかという情報は、誰も把握できていません。地方公共団体が撤去等に補助金を出しても、管理が行き届かずそのまま放置されているケースが多いのが現状です。

そこで開発したのが、「点群データ」と呼ばれる3Dセンサデータを利用して、ブロック塀の位置や倒壊の危険度を自動算出する技術です。具体的には、測量会社の協力のもと「モービルマッピングシステム」と呼ばれるレーザー計測機器を搭載した車を町中に走らせて収集した点群データをAIで解析し、ブロック塀を見つけ出した上で、塀の高さや傾き、ひび割れの有無などをもとに危険度を評価する仕組みです。たとえば「傾き」なら、2度以上傾いているものは危険度が高いと判断できます。

また、これらの技術を応用したiPadアプリも開発しました。このアプリをインストールすることで、住民の方々自身が自宅のブロック塀の危険性を簡単に評価することができます。ブロック塀は個人の所有物であることが多いため、自ら危険を認識していただくことが重要だと考えています。この一環として、防災教育にも力を注いでいますが、普段当たり前に目にしているブロック塀の状態をアプリによって数値で確認することで、少しずつその重要性を認識していただけているように思います。

その他にも、法面と呼ばれる斜面の点検を自動化する技術や、大学スポーツの試合を自動撮影するシステムの開発など、多岐にわたる研究を行ってきました。AIの進化は、スマートフォンが登場したとき以上のインパクトを社会に与える可能性を秘めています。これからも、AIやその他の技術をフル活用し、新たな社会の姿を提案していきたいと考えています。

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(取材内容は2024年11月時点のものです)

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