基礎理工学機構とは

基礎理工学機構は、理工学部に必要不可欠な理工学の基礎(数学・自然科学)を重点的に教える機関として、2010年度に設置された機構です。数学や物理学がちょっと苦手と思っている人も各自の能力を最大限伸ばせるようにクラス分け等を行い、専門につながる土台を築いています。研究面では、微分幾何学、関数解析、新規エネルギー、物性物理学などの数学・自然科学に関する最先端の研究を行っています。
数学・物理学科目の教育方針
学生がそれぞれの専門領域において自律的・論理的に活動するための「基礎体力」となる数学及び物理学科目の体系的な教育を進めています。理工学部各学科と密接に連携し、各専門領域に応じた授業を実施しています。
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文系入学でも大丈夫!
習熟度に合わせた少人数クラス理工学部の専門基礎科目「微積分」では、習熟度別のクラス編成による少人数教育を実施しています。文系入試で入学した方や数学が苦手な方も安心して頂けるように、手厚い教育を実施しています。
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専門教育を見据えて、
各学部と緊密に連携した科目を提供専門科目の習得に必要不可欠な数学や物理学に関する専門基礎科目について、毎年、理工学部の各学科と打ち合わせを実施し、各学科と緊密に連携を図りながら専門教育の土台となる科目を重点的に教えています。
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わかりやすい
オリジナル教科書、実験教材摂南大学基礎理工学機構では昔から(このように改名する2010年以前からも)、多様な学力の学生に合わせて微積分や線形代数、物理学実験等主要科目に関してオリジナル教材を執筆してきました。これ等のいくつかは出版に漕ぎづけることが出来ています。
授業紹介
基礎理工学機構の現・旧教員が執筆したオリジナル教科書で授業を行っています。
基礎数学演習(理工学部科目)
「数学の基礎」は、大学での微積分の授業を受講する前に、関連する高校数学の内容を復習する「基礎数学演習」で用います。基礎数学演習では、ワークブックを併用して、問題の答を単に求めるだけではなく、答を求める過程を記述する練習も行います。
物理学実験(理工学部科目)
自然科学の基本である「物理学」を、実際の測定やデータ解析を通して理解し、物理現象をより深く認識する実験科目です。様々な装置を操作して、一連の基本的計測手段を学び、得られたデータからすじ道を立てて考える科学的な思考法を養います。
微積分 I・II(理工学部科目)
微積分はどこの大学でも専門科目を学ぶ基礎として重要な位置を占めます。摂南大学では、学生の学力に合わせて高校の数学IIの復習も交えて理工学部の学生に必要な微積分法を講義し、特に重要な微積分Iでは全学科で定期試験を統一問題で実施しています。
数学基礎 I・II(文系学部科目)
文系の学問を学ぶ上で、基礎的な数学は重要な素養です。摂南大学では理工学部に対する教科書とは別に、文系学部向けに高校の数学I,II,A,Bの重要事項を復習する教材を執筆し、文系の専門科目の学習に繋がるように配慮しています。
線形代数 I・II(理工学部科目)
線形代数は微積分と並んで、理工学部の学生にとって必要な数学の素養の重要な柱です。高校の指導要領から行列が削除されて久しいですが、摂南大学では行列や高校の数学Cのベクトルの概念について基礎から学べるように教科書の編纂と講義を行っています。
数学・教養数学(薬・看護・農学部科目)
「確率・統計のための数学基礎」は、この1冊で、微積分の基礎的な事項と確率・統計の初歩を学べるようになっています。巻末には演習問題の略解も付けていますので、授業の事前・事後の自習にも使えます。
科学技術教養 T(理工学部科目)
科学技術の成果の恩恵を活かすためには専門分野以外にも幅広い教養を身に着ける必要があります。この要請に答えるため摂南大学では2012年度より科学技術教養を開講し、科学技術教養Tでは数学や物理の発展の歴史について講義しています。
研究領域
数学と物理学の基礎研究を幅広く行っています。数学教室では、幾何学などの純粋数学から、可積分系、流体の非線形現象などを扱う応用数学まで研究しています。また、理論物理学と数学が交叉する分野として、数理物理学や素粒子論、弦理論などの研究も行われています。物理教室では、イオンの流れ、光(電磁波)と電子の相互作用、強く相互作用する多数の電子の状態など、様々な物性(物質が持つ物理的性質)について、実験を通して研究しています。
数学教室
微分幾何学
小林 俊公微分幾何学では、多様体と呼ばれる幾何学的対象を、微分積分を利用して調べます。針金で作った枠を石鹸液につけると枠に石鹸液の膜が出来ますが、そのような膜は極小曲面と呼ばれる、身近な多様体の例です。ですが微分幾何では最近、頂点と辺からなるグラフのような、微分を直接用いることが出来ないものも興味の対象になっています。私自身も、離散幾何学と呼ばれる、グラフに関する幾何を研究対象の1つとしています。
数理物理学
中津 了勇マクロな世界を記述するニュートン力学や熱力学、ミクロな世界を記述する量子力学など、様々な普遍的構造が私たちの世界に存在します。その密接な相互関係を数理的レベルで明らかにすることを目指しています。
可積分系
大久保 勇輔可積分という言葉に明確な定義はありませんが、厳密に解くことができる系のことを可積分系と呼びます。その中でも特に、素粒子物理学等で必要とされる共形場理論、またそれに付随する代数の表現論、1次元多体模型から得られるJack多項式・Macdonald多項式などが主な研究のテーマです。
応用数学
友枝 恭子「流れ」を数学の立場から理解するために、対象となる現象は基礎方程式と呼ばれる微分方程式の系によって定式化されます。基礎方程式は複雑であるため、そのまま扱うことには困難さが伴います。そこで、比較的扱いやすい縮約方程式を基礎方程式から導出し、縮約方程式の解を調べることで、現象の理解に努めます。現象に対応した縮約方程式を導出すること、縮約方程式の解を調べるための数学手法の構築が主な研究内容です。
素粒子論
東 武大超弦理論は自然界の力の統一理論の有力な候補であり、近年では行列模型による定式化が有力視されています。超弦理論では理論の整合性から時空の次元が時間1次元と空間9次元の10次元と定められます。私は主に(スーパー)コンピューターによる行列模型の数値シミュレーションを通して、物質の相互作用の仕組み及び私たちの住む時間1次元と空間3次元の4次元時空がどのように力学的に生じるかを研究しています。
弦理論・素粒子論
関 穣慶「素粒子とその間にはたらく4つの力を1つの枠組みで表すための統一理論(万物の理論、Theory of Everything)は何か?」「素粒子でできている私たちの宇宙(時空間)とは何か?」これらは古来より自然科学(あるいは自然哲学)の究極の目標と言えるでしょう。私は、この統一理論の候補の1つである弦理論を研究しています。弦理論は数学と物理学における豊富な内容を含んでおり、これに関連して量子もつれの研究も行っています。
物理教室
光物性,テラヘルツ波工学
長島 健「電磁波による分析と加工」に関する研究をしています。「分析」に関する研究では「テラヘルツ波」という種類の電磁波を利用しています。これまでにテラヘルツ波偏光解析法と呼ばれる新材料評価法を開発しました。近年注目を集めているワイドギャップ半導体をはじめとする新規材料の性質を調べるのに有力な手法になっています。「加工」に関しては、レーザーによる超微細加工技術開発につながる物理現象の解明や多機能光学デバイスの提案・開発に関する研究を進めています。
原子振動と乱れの科学
神嶋 修風力発電、太陽光発電など自然エネルギーを利用した発電システムは、電気をたくさん発電する時もあれば、全く発電出来ない時もあるため、毎日の安定した電気の供給に適していません。水の安定供給のために、「ダム」や「ため池」が発展したように、電気もまた大規模に蓄えることが出来る電気の池=「電池」の研究・開発が急ピッチで進められています。次世代の燃料電池やLiイオン電池への発展につなげるため、電池内を流れるイオン(電荷をもった原子)の集団運動を分光学的手法などを用いて研究しています。
固体電子物性
東谷 篤志物質の性質(物性)は主に物質内の電子の状態により特徴づけられます。物質の科学的な興味だけでなく、工業的な応用を行うためにも、物質の電子状態に関する情報を得る必要があります。物質の電子状態を知る実験手法の代表的なものとしてアインシュタインが発見した光電効果の原理を応用した光電子分光測定手法があります。本研究では、温度差を電気に変換することのできる熱電材料系物質に対し、大型放射光施設の高輝度硬X線領域の光を用いた光電子分光測定により電子状態の解明を行っています。