理系・文系の垣根を超えて、総合的な視点から未来の住環境デザインを考える。
インテリア、建築設計、住宅管理、建築・都市環境工学、地域計画、景観、空間情報など、住環境づくりにかかわる幅広い研究領域をカバーする研究室を配置。実社会をフィールドとして、各専門領域から持続可能な住環境のあり方について研究しています。
建築・環境デザイン研究室
准教授稲地 秀介
この研究室では、建築や地域空間のデザイン、仕組みや情報のデザインを活用し、地域社会が直面する課題の解決方法を研究しています。近年、人口減少や災害対策などの地域課題に対しては、行政だけでなく住民の主体的な関与が求められています。私たちは、こうした活動を調査とデザインの観点から支援する研究を進めています。さまざまな視点から調査を行い、その結果を基にデザインを検討し提案しています。また、提案したデザインの効果などの検証も行っています。主な研究テーマとして、1) 南海トラフを想定した漁村の災害復興デザイン、2) タイの農村部の住まい方の変化に合わせた住居デザイン、3) 超人口減少社会の都市や農山漁村の空間デザインの3つを掲げ、国内外の地域課題に取り組んでいます。
建築環境・設備計画研究室
教授大橋 巧
人間を取り巻く環境は、身近な空間の順に、建築環境<都市環境<自然環境、さらには宇宙環境へと広がりますが、現代人は生活の大半の時間を建築環境や都市環境の中で過ごし、快適なくらしを得るには、建築・都市環境の魅力向上が欠かせません。
一方で「エネルギー」を考えるとき、太陽エネルギーが地球上でエクセルギー率を減少させていく過程の流れをうまく利用し、地球環境全体の複雑なバランスを保ち続けることが持続可能な社会の実現に必要であり、近年その重要度は増すばかりです。
建築環境・設備計画研究室ではサステナブルな建築・都市の実現を目指し、「建築環境・都市環境・建築設備」と「エネルギー」の関係を幅広く研究しています。
インテリア・建築デザイン史研究室
教授川上 比奈子
「空間デザイン」と「光合成建築」に取り組む研究室です。学生たちは、古今のインテリア・建築を実際に体験し、歴史を紐解き、未来のデザインを図面・模型・CGで社会に提案します。「光合成建築」は、生命科学科の松尾研究室と共に進めています。伐採される樹々や廃棄される植物から抽出した葉緑体の溶液を透過パネル性に注入し、屋根、壁、窓に組み込んだもので、太陽光があたると建築が光合成をして水素と酸素を生成します。水素は発電に利用され、酸素は自然に還されることを目指したSDGsに先駆ける提案です。「超異分野学会2024」で、「カリフォルニア集合住宅コンペ」の模型写真ポスターや酸素とエネルギーを生成する実物パネルを展示した結果、とても多くの方々がブースを訪れてくださり、様々な企業から問い合わせと仕事の依頼が相次いでいます。
光合成×建築空間情報デザイン研究室
准教授榊 愛
デジタル技術は、私たちの暮らしに欠かせない存在です。住環境デザインの分野でも、デジタル技術の進化により、一人ひとりのニーズを丁寧に把握し、実現することが可能になってきました。
空間情報デザイン研究室では、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)GIS(地理情報システム)、AI(人工知能)などのデジタル技術を駆使して、多様な人が心地よく暮らせる住環境のデザインに取り組んでいます。
特に、自然と共に長く暮らすための減災デザインや、誰もが行きたい場所に行ける・知りたいことを知れるためのアクセシビリティに関する研究など、未解決の課題に対するデジタル技術の応用を通じて、地域社会に貢献することを目指して研究しています。
地球共生デザイン研究室(Geosymbiosis and Design Lab)
准教授白鳥 武
【Geosymbiosis(英名:ジオシンビオシス)/地球共生(和名)】を「地球上の全生命体との調和的共生」として新しく意味づけし、それを具現化するためのデザインを考える研究室です。世界中の異なる民族と豊かに・平和に暮らしたい、また地球上のあらゆる動植物や目には見えない微生物なども含めてバランス良く共に生きるためには、共生観を中心に持ったありとあらゆるデザインが必要なのです。ヒト優先ではなく、ヒト以外のみんなとも一緒に生きていくこと優先で、建築・家具・プロダクトなどの「有形」デザインだけでなく、人々の意識など形のない「無形」な事柄をもデザインしています。地球共生ワークショップを世界で展開中。
居住環境計画研究室
教授樋口 祥明
従来の建築環境工学では、建物で暮らす人にとって必要な温熱・光・音・空気の環境性能を維持するために、大多数の人が不満でない環境を提供するための研究を行なってきました。近年では、SDGsへの意識が高まる中、多種多様な人に対して、より積極的な快適性や健康のために必要な環境が望まれています。「ひと」はいろいろな空間で様々なことをして暮らしています。活動内容や個人の好き嫌い等により必要な空間や環境は異なりますが、それを踏まえて空間環境設計を行うための知見は十分ではありません。
居住環境計画研究室では、多種多様な「ひと」の活動を支える建物やまちの居住環境の計画について、「ひと」を中心に考える研究を行ないます。
建築意匠・設計研究室
教授久冨 敏明
建築意匠・設計研究室では、地球温暖化にともなう気候変動と社会の変化に対して、新しい住環境デザインの方法を探求しています。
設計手法の知見を習得するために、建築空間の構成および要素の調査分析を行っています。また、建築意匠の研究として自然エネルギーを活用するパッシブデザインと産業革命以前の建築のつくり方に着目しています。そこには、地球環境と共生するための生活の知恵と建築をつくる技術があると考えています。
活動の一例として、廃棄物にひと手間かけてつくりだすアップサイクルのデザイン提案に取り組んでいます。設計手法の分析と意匠研究から得た知見から、未来の住環境デザインを考案しましょう。
住環境マネジメント研究室
講師山根 聡子
日本の住宅は欧米諸国と比較して寿命が短く、良好な住宅ストックの形成が重要な課題となっています。当研究室では、持続可能な住環境の実現を目指し、社会調査を通じて空間管理システムのあり方を探求しています。
主な研究テーマとして、集合住宅の共用空間の利用実態やルールの分析、シェアハウスなど住空間や生活資源を共有する住まいの研究、高齢者向け住宅の供給実態や行政施策の評価、集合住宅や建築物の緑化推進、地方自治体のマンション管理施策、マンション管理の専門職能に関する調査、さらには空き家の再生や遊休地の利活用推進に向けた空き家ファンドの研究などを行っています。
これらの研究を通じて、より良い住宅ストックの形成と住環境の向上を目指し、実践的な提案を行っています。
景域デザイン研究室
教授坂本 淳二
景観は地域の実態が映し出される“鏡”であり、当研究室では、景観と地域の密接な関係を強調して,地域を「景域」と称しています。農山漁村、都市、住宅地、自然的地域など多岐にわたる景域の空間・環境・社会・経済の諸問題を調査・分析し、持続可能な解決策をデザインすることを目指しています。
研究では、フィールドワークを基本として、現地を歩き、観察、記録を行い景域の実態を把握します。加えてヒアリング・アンケート調査、様々な統計データを用いた多変量解析、地理情報システム(GIS)などを活用して分析を行います。
主な研究キーワードとして、棚田の持続的保全、地型密着型観光、人間と野生生物との共生、都市近郊村落のコミュニティ再生、商店街の再活性化、“○○らしさ”の景観・ランドマークの評価、スプロール地域のウォーカビリティ、などが上げられます。