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お知らせ

NEWS RELEASE【No.52】

【本研究のポイント】
 ・神経細胞(ニューロン)特異的にTDP-43*1をノックアウト*2したマウスの脳において軸索*3の髄鞘化*4が抑制されていることを発見
 ・ニューロンのTDP-43がニューレキシン1*5発現の制御を介して軸索の髄鞘化を促進していることを解明

ニューロンのTDP-43はニューレキシン1のメッセンジャーRNA(mRNA) *6の安定化を介して軸索の髄鞘化を誘導する。

【研究概要】

 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学の李佳益 研究員(筆頭著者)、井口洋平 講師、勝野雅央 教授、同分子細胞学の和氣弘明 教授(生理学研究所 教授/クロスアポイントメント)らの研究グループは神経細胞(ニューロン)のTDP-43がニューレキシン1発現の調節を介して軸索の髄鞘(ずいしょう)化を制御していることを解明しました。
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭葉変性症(FTLD)はニューロンが細胞死を来すことで筋肉が萎縮し、認知機能が低下する進行性の神経変性疾患です。ALSでは最終的には呼吸や嚥下をつかさどる筋肉を含む全身の筋肉が動かせなくなります。ALSの9割以上を占める孤発性ALSの発症原因は未だ不明で、進行を十分に抑制できる治療法は存在しません。ALS/FTLD病態では、TDP-43が変性ニューロンの核から脱出して細胞質に凝集体として過剰に蓄積することがわかっていて、「TDP-43の機能喪失」がニューロン死の主要因の一つと考えられています。また、ALS/FTLDではニューロンの軸索を取り囲む髄鞘が減少していることも知られていましたが、その病態については十分に解明されていませんでした。本研究グループは、ニューロンのTDP-43がニューレキシン1の発現調節を介して軸索の髄鞘化を制御していることを解明しました。
 本研究ではニューロン特異的にTDP-43の発現を消失(ノックアウト)させたマウス(TDP-43cKOマウス)の脳を詳細に観察したところ、軸索の髄鞘化が著しく低下していることを発見しました。低髄鞘化の原因を探索したところニューロンのTDP-43がニューレキシン1の発現を調節していること、またそのニューレキシン1が軸索の髄鞘化を制御していることを解明しました。さらに、TDP-43cKOマウスでは短期記憶障害を認めましたが両側の海馬*7のニューロンにニューレキシン1を補充したマウスでは記憶障害の改善がみられました。また、ALS患者剖検脳や脊髄を観察したところ、変性ニューロン内ではニューレキシン1の発現が低下していることも確認しました。本研究で見出された「TDP-43機能喪失状態におけるニューレキシン1発現低下と低髄鞘化」は、ALS/FTLDの病態解明と病態抑止療法へ応用が期待されます。
 なお、本研究は生理学研究所、摂南大学、愛知医科大学、自治医科大学との共同研究により行われました。本研究成果は、2026年2月23日(米国東部時間)の週に、米国科学誌『Proceedings of the National Academy of Sciences』にオンライン掲載予定です。

1. 背景
 ALS患者の多くは中高年以降に特別な誘因や前兆もなく発症します。病初期は限られた領域の筋力低下に留まりますが、徐々に全身の筋力が低下し、平均3〜5年で呼吸筋麻痺のために自力での呼吸ができなくなります。現在使用可能なALS治療薬は進行を遅らせる効果はありますが病態抑止効果は十分とは言えません。ALS患者の9割以上は血縁者に同様の患者がいない孤発性であり、発症原因が特定されていません。しかし亡くなったALS患者さんの脳や脊髄の病理学的・生化学的解析から、ALSの運動ニューロンでは本来核に存在するTDP-43というタンパク質が核から脱出し細胞質に凝集体を形成することがわかってきました(図1)。また、認知症の一つである前頭側頭葉変性症(FTLD)の約半数では、ALS同様のTDP-43病理を変性ニューロンに認め、ALSとFTLDが合併する症例も一定程度みられます。ALS病態では、TDP-43の「機能喪失」と「凝集体毒性」がニューロン死の主要因と考えられています。ALSにおけるTDP-43異常を正常化できれば良いわけですがTDP-43がこのような異常を来す原因が特定できていないため、現状では「TDP-43の機能を補う」ことと、「凝集体を減らす」ことが現実的な治療戦略となります。
 本研究は「TDP-43の機能を補う」ことを目的とする新たな治療戦略を提唱するものです。

プレスリリース全文は以下PDFよりご覧ください

この記事に関する問い合わせ先

■内容に関するお問い合わせ先
 摂南大学農学部 応用生物科学科
 准教授 芳本 玲(よしもと れい)
 TEL:072-896-5471
 E-mail: rei.yoshimoto[at]setsunan.ac.jp
 ※メールアドレスの[at]は@に変換してください。
■本件発信部署・取材のお申し込み先
 摂南大学(学校法人常翔学園 広報室 担当:石村、木下)
 TEL:06-6954-4026
 E-mail:Koho[at]josho.ac.jp
 ※メールアドレスの[at]は@に変換してください。
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