本文へ移動

1㎜の線虫から男性不妊のメカニズムを追究

  • # 研究

島田 幸拡 特任助教

  • 学部:理工学部 生命科学科
  • 専門分野:生殖生物学、分子生物学

理科教師から「発見」の魅力を求めて研究者の道へ。

 私は摂南大学で生物学を学びました。2年生の時に受けた西村仁教授の「タンパク機能学」の授業で、非常に緻密な分子メカニズムで生命現象が成り立っている生命科学の不思議さや面白さを知り、その後、西村教授のゼミで卒業研究に取り組みました。卒業後は「理科の教師になりたい」という元々の夢をかなえて、2年間私立の中高一貫校で理科の常勤講師として働きましたが、新たな発見に携われる研究の魅力が忘れられず母校の大学院に戻り、研究者の道を目指しました。

 私の専門は生殖生物学です。近年、「不妊治療」という言葉を耳にする機会が多いと思いますが、不妊に悩むカップルのうち、約半数では男性側にも原因があると言われています。「精巣が高温にさらされると不妊につながる」ということは一般的にも知られていますが、そのメカニズムはよく分かっていません。そこで私はその分子メカニズムを明らかにすることを目指しています。

 研究のモデル生物として主に体長1㎜ほどの線虫を使います。線虫には、<安価で飼育しやすい>、<世代時間が短く、短期間で多くの実験を行える>、<遺伝子操作が容易で、特定の遺伝子の機能を調べやすい>など、多くの利点があり、世界中の研究機関で使われています。線虫は一見すると哺乳類とは大きく異なる生物に思われますが、線虫で見られる生命現象の多くには、哺乳類と共通する部分があることが分かっています。

高温による精子リモデリング異常の仕組みの一端を解明。

 精子は作られる過程で形や性質を変化させて受精できる状態になります。この変化は「精子リモデリング」と呼ばれます。私たちの研究グループは、この過程に注目し、線虫の精子リモデリングを引き起こす新たな化合物DDI-4を発見しました。更に、高温で飼育した線虫では、DDI-4による精子リモデリングが正常に進まなくなること、そしてその過程に、「NSUN-2」「SPHK-1」というタンパク質が重要な役割を果たしていることを明らかにしました。更に、マウスにも「NSUN-2」や「SPHK-1」に対応するタンパク質が存在することから、このメカニズムの一部が哺乳類と共通している可能性があります。

 この成果で「線虫研究の未来を創る会」という研究会において、今年8月に若手研究者を対象にした「ネクストリーダー賞」を受賞することができました。今後、精子リモデリングに関与する別のタンパク質や遺伝子を探り、この研究を掘り下げたいです。また、将来的には男性不妊症の理解や治療法の開発につながる研究に発展させたいとも考えています。更に近年の地球温暖化による環境変化が生殖機能に与える影響を理解することで、少子化を考える上でも役立つ知見につなげたいです。
 いずれは自分の研究室を持ち、線虫をモデルとして生命現象の基本的な仕組みを明らかにし、そこで得られた知見を哺乳類へと展開することで、ヒトを含む生物に共通する生命現象を理解する研究スタイルを確立したいと考えています。

 学生には、与えられたことをただこなすのではなく「今、自分は何をしているのか」、「なぜ、これをするのか」を考えながら取り組んでほしいと思っています。例えば実習では、手順書に沿って操作するだけでなく、今、試験管内でどのような現象が起こっているのか、得られた結果から何が分かるのかをその場で理解しながら実験することで、同じ実習でも見え方が大きく変わると思います。
 私にとって研究の面白さは、自分が得た結果が、世界で初めての知見となる可能性があるところです。100年後、200年後にも自分の名前が論文に残り続けることにもロマンを感じます。そのため、卒業研究の学生にも「研究の面白いところは、まだ誰も知らないことを世界で初めて発見できる可能性を秘めているところだ」と伝えています。学生の皆さんには、地道な作業も多いですが、研究にしっかりと向き合うことを通して、自ら考え、積極的に問題解決に取り組む力を身につけてほしいと思っています。

(取材内容は2026年8月時点のものです)

摂南タイムズ一覧へ戻る

この記事に関連する学部をチェック

学科紹介

理工学部