水道の現場で、浄水場と協力して冬場のかび臭対策に取り組む。
私は長年、オゾンを用いた浄水処理技術、下廃水処理技術の研究を行ってきました。前者の浄水オゾン処理技術は、かび臭や有害物質の除去に効果的であり、特に日本では主に夏場に発生するかび臭問題を解決するための技術として発展してきたものです。このことを通じて、おいしい水の供給に寄与してきました。ただ、最近では冬場でもかび臭の発生が確認されつつあります。現時点ではまだ大きな問題になるレベルではないのですが、状況が悪化した場合に備えて、あらかじめ対策を準備しておく必要があると考えています。そこで、現場である浄水場と協力して、処理の観点から、水温が低い冬場であってもオゾンがうまく機能してくれるかどうかについて検証を行っています。既存設備の限界性能の評価と言っても良いかもしれません。もちろん、新技術の提案も視野に入れた大局的な研究をめざしています。
この浄水処理技術は、いわば皆さんの家庭に届く水道水をキレイにするための技術ですが、もうひとつの研究領域である下廃水処理技術は、家庭や工場などから排出される「汚水や、雨水と合わさった下水」を海や川に放流する前に処理する技術です。現在は、JST(科学技術振興機構)が推進する「未来社会創造事業」のプロジェクト「健全な社会と人を支える安全安心な水循環系の実現」に参加し、ウイルスや(薬剤耐性)細菌、化学物質などを安全に除去する下水処理システムの開発に取り組んでいます。下水を河川に放流した際、下流での川遊びや海水浴などで人が触れることもあり得ます。その際に何かしらの健康被害が発生するケースも考えられます。飲み水のみならず、こうした親水利用における安全性を確保するためにも、オゾンの技術は有望であると考えています。社会における健康リスクを低減し、皆さんに受け入れてもらえる費用で提供できる、そんな新しく魅力的な技術の開発に取り組んでいます。

学際的プロジェクトで求められる総合力と広い視野。
また、社会実装を考えるうえではオゾン発生機の効率化・低コスト化も重要ですので、メーカーの三菱電機や他大学と共同で取り組んでいます。プロジェクト全般は、京都大学、北海道大学、東京大学など多くの大学や企業と連携し、多角的なアプローチで進められています。このような学際的なプロジェクトでは、自らの専門分野だけではなく、異なる分野への理解やコミュニケーション能力も求められます。「他の分野の人がどういうことをしているのか」「自分では対処できない課題は誰が得意としているのか」など、広い視野が求められます。そこには、文系知識も必要でしょう。もちろん、すべて満点である必要はありません。個人的には、環境衛生工学では、こういった総合力を求められることも、この分野のおもしろさだと考えています。
学生の皆さんには、失敗を恐れず、さまざまなことに積極的に取り組んでほしいと思います。卒業時に「多くのことを学んだけど、ほとんど理解できなかった」と感じるほうが、むしろ成功だと私は考えています。必要とされる知識・技術がまだまだたくさんあるということに気づくことができるほど、その分野についてしっかり学んだという証拠ですから。

(取材内容は2024年9月時点のものです)
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