それなりの性能の「多数」が協力し、複雑な問題を解決。
近年、高性能な人工知能が話題を集めています。その開発には、高性能なコンピュータと大量のデータ、大きな予算が必要となります。また、このような独立した「個」として賢いものは、その「個」が故障してしまえばもう機能しません。
しかし、「個」としてはそれなりの性能のものでも、「多数」を組み合わせることでより複雑な問題を解決できるシステムができるとしたらどうでしょう? 「多数」のロボットや人工知能など(エージェント)が、共通の目的のもとで協力しながら、それぞれ自分で考えて行動を選択する。これなら「多数」のうちのひとつが故障したとしても、全体としては機能し続け、故障したものの代わりを用意することも簡単です。私はこのような「マルチエージェントシステム」と呼ばれるシステムを研究しています。
例えば、多数のドローンやロボットが分担・分散して災害現場の探索・監視などを行う場合、「個」の司令塔を持たないマルチエージェントシステムでは、各エージェントが自身の周辺の情報のみをもとに行動を決定しなければなりません。被災者を探索中のドローンが、その最中に不審者を発見したら自動追跡に切り替えるといったように、「探索」「監視」「追跡」などの複数の仕事を、各エージェントが自動的に分担することが重要です。
私は、各エージェントが「どのような状況で、どのような基準に基づいてタスクを選択するか」という自律分散システムの設計方法について研究しています。異なる性能のエージェントが混在していても、人間が個別に細かい指示を出すことなく自身の役割を決定でき、結果として全体がうまくいくような、できるだけシンプルなルールの構築をめざしています。

人間社会にも応用可能なマルチエージェントシステム。
マルチエージェントシステムでは、自分で考えて行動するものであれば、「人間」もエージェントとみなして考えることができます。例えば、実際の社会でも路上駐車によって渋滞が起こる問題がありますが、これに対して罰金(税の一種)を課すことで、各エージェント(この場合は人間)が自身の利益とは別に共通のルールに沿って行動を変えるように促すことが可能です。さらに、補助金はその反対の利益誘導として機能し、エージェントの行動を望ましい方向に変えることができます。
こうした社会システムにおける税や補助金の配分を数学的に設計することで、エージェントの行動を間接的にコントロールできるのも、マルチエージェントシステムのユニークな点です。
今では、ほとんどあらゆるものにコンピュータが組み込まれ、あらゆるところで情報系の技術が用いられています。マルチエージェントシステムにも情報工学が用いられていますが、これからの社会で技術者として生きていくためには、情報系の基礎知識が欠かせません。「若いときに学ぶことに無駄な知識はない」とは、私の恩師の言葉です。学生のみなさんには、電気・情報・電子・通信工学について、幅広く興味を持って学んでもらえたらと思っています。
(取材内容は2024年9月時点のものです)
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