西口 純矢准教授ニシグチ ジュンヤ
所属
理工学部 基礎理工学機構
専門分野
遅延微分方程式、力学系、応用数学
キーワード
遅延、時間遅れ、タイムラグ、ダイナミクス
関連リンク
プロフィール
出身 | 三重県 |
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好きな映画 | スター・ウォーズ |
好きな言葉 | フォースとともに在らんことを (May the Force be with you!) |
時間とともに変化する現象を数学的に解析する
時間とは何であるか?
「時間とは何であるか?」というのは難しい問いですが,私たちが生きていく上で時間は必要不可欠な概念です.「物事の変化」は時間の経過とともにあり,物事が変化するからこそ私たちが時間という概念を認識できるとも言えます.自然科学や社会科学において私たちが観測するのは時間とともに変化する現象であって,さまざまな現象を詳しく調べることで「未来がどのようになっていくか」という知見を得ることが重要です.
時間とともに変化する現象を調べるには?
自然科学や社会科学といった異なる研究領域における異なる現象に対して,「実はその背後には共通の法則がある」ことがあります.このようなことを見出すのに数学が役に立ちます.具体的には,時間とともに変化する現象を微分方程式という数学の道具を用いて記述・表現することで,「異なる研究領域の現象ではあるが同じ方程式で書ける」ということがわかったりします.すると,その微分方程式を数学的に調べることで,異なる研究領域における異なる現象に対する知見を一挙に得ることができます.このようなことが,数学を学ぶ魅力の一つであると言えます.
どのような数学が必要なの?
前述の微分方程式は,未知の量の時間や空間に対する微小変化の関係性を記述することで得られる方程式です.この「微小変化」という考え方は,ニュートンやライプニッツを始めとする偉大な先人たちによって微分積分学という数学の学問として確立されました.微分積分学に加えて,連立方程式の研究を端とする数学の学問である線形代数学もまた,線形微分方程式といった特別なタイプの微分方程式を理解するために必要となります.これらの大学の数学における基礎科目の他には,フーリエ級数・フーリエ変換,ラプラス変換といった道具や,複素数を独立変数・従属変数とする関数である複素関数,関数を独立変数とする汎関数を調べるための関数解析などの解析学の知識が必要になります.力学系は時間とともに変化する現象を数学的に扱う研究領域で,解析学の知識に加えて幾何学や代数学の知識も必要となります.微分方程式の研究では数学の外の世界に目を向けることも重要です.自然現象や社会現象をモチベーションとする応用数学という数学分野と関わりを持つことが大切です.
研究紹介
「遅延,時間遅れ,タイムラグ」とは?
通常の微分方程式では,未知関数の時間微分が未知関数の現在の時刻における値に依存すると仮定されます.たとえば,古典力学(ニュートン力学)における運動方程式は,物体である質点の位置の時間に関する2階微分が質点の現在の位置と速度に依存するものとして表現されます.その一方で,「未知関数の時間微分の未知関数への依存関係」を記述する上で,情報の伝播速度の有限性を考慮しなければならない場合があります.このような場合には,未知関数の時間微分は未知関数の過去の値への依存関係として表現されることになります.
遅延微分方程式
上で述べたように,未知関数の時間微分が未知関数の過去の情報にも依存するような微分方程式を遅延微分方程式と呼びます.このことを,「考えている微分方程式は遅延(時間遅れあるいはタイムラグとも呼ぶ)を持つ」と表現します.遅延微分方程式の面白いところは,微分方程式としては一見すると簡単な形であっても,その解の振る舞い(これをダイナミクスと呼びます)として多種多様な複雑なものが可能であることです.このことの背後には,「遅延微分方程式は,未知関数の過去の情報を格納した履歴の時間発展として無限次元力学系を定める」という数学的な事実があります.
研究の今後の展望
遅延微分方程式は自然科学や社会科学のさまざまな現象に顔を出し,それらの現象の真の理解のために不可欠な数学的道具である可能性があります.その一方で,遅延微分方程式は偏微分方程式と比べると世界的にも知名度が高くないというのが現状です.遅延微分方程式は「現在だけでなく,過去まで含めて見ないことには将来の真の姿を見ることができない」という教訓を与えてくれるものです.この考え方は,これまでの人類の活動を起因とする気候変動などの人類的課題の解決に欠かせないものであり,遅延微分方程式研究が資するものは大きいと考えています.私自身も,これまでの研究に加えて,遅延微分方程式という観点でのより広い視点での数理科学研究を邁進していきたいと考えています.